馬太傳福音書(マタイによる福音書(明治元訳新約聖書(1904年版)))

2018年11月23日

馬太傳福音書(マタイによる福音書(明治元訳新約聖書(1904年版))

第一章

  1. アブラハムのなるダビデのイエス・キリストの系圖けいづ
  2. アブラハム、イサクをうみイサク、ヤコブをうみヤコブ、ユダとその兄弟きやうだいうめ
  3. ユダ、タマルによりてパレスとザラとをうみパレス、エスロンをうみエスロン、アラムをうみ
  4. アラム、アミナダブをうみアミナダブ、ナアソンをうみナアソン、サルモンをうみ
  5. サルモン、ラハブによりてボアズをうみボアズ、ルツによりてオベデをうみオベデ、エツサイをうみ
  6. エツサイ、ダビデわううみダビデわうウリヤのつまよりてソロモンをうみ
  7. ソロモン、レハベアムをうみレハベアム、アビアをうみアビア、アサをうみ
  8. アサ、ヨサパテをうみヨサパテ、ヨラムをうみヨラム、ウツズヤをうみ
  9. ウツズヤ、ヨタムをうみヨタム、アカズをうみアカズ、ヘゼキヤをうみ
  10. ヘゼキヤ、マナセをうみマナセ、アモンをうみアモン、ヨシアをうめ
  11. バビロンにうつさるるときヨシア、エホヤキンとその兄弟きやうだいうみ
  12. バビロンにうつされたるのちエホヤキン、シアテルをうみシアテル、ゼルバベルをうみ
  13. ゼルバベル、アビウデをうみアビウデ、エリアキンをうみエリアキン、アゾルをうみ
  14. アゾル、ザドクをうみザドク、アキムをうみアキム、エリウデをうみ
  15. エリウデ、エリアザルをうみエリアザル、マツタンをうみマツタン、ヤコブをうみ
  16. ヤコブ、マリアのをつとヨセフをうめこのマリアよりキリストととなふるイエスうまたまひき
  17. その世系よつぎかぞふればアブラハムよりダビデにいたるまで十四代じふよだいダビデよりバビロンにうつさるるときまで十四代じふよだいバビロンにうつされしよりキリストまで十四代じふよだいなり
  18. それイエス・キリストのうまたまへることごとそのははマリアはヨセフと聘定いひなづけなせるのみにていまともにならざりしときせいれいかんじてはらみしがそのはらみたることあらはれければ
  19. をつとヨセフただしきひとなるゆゑこれはづかしむることをこのまひそか離緣りえんせんとおもへり
  20. かくこのことおもひめぐらせるをりしゆ使者つかひかれがゆめあらはれていひけるはダビデのヨセフよなんぢつまマリアをめとることをおそるるなかれそのはらめところものせいれいよるなり
  21. かれうまそのをイエスとなづくべしそはそのたみつみよりすくはんとすればなり
  22. すべこのこと預言者よげんしやよりしゆいひたまひしことば
  23. 處女をとめはらみてうまそのをインマヌエルととなふべしとあるかなはせんためなりそのとけかみわれらとともをるとのこころなり
  24. ヨセフねむりよりおきしゆ使者つかひめいぜしことしたがそのつまめとりたれど
  25. 冢子うひごうまるるまでとこともにせざりきそのうまれしをイエスとなづけたり

第二章

  1. それイエスはヘロデわうときユダヤのベテレヘムにうまたまひしがそのとき博士はかせたちひがしかたよりエルサレムにきた
  2. いひけるはユダヤびとわうとてうまたまへもの何處いづこいまわれらひがしかたにてそのほしたればかれはいせんためきたれり
  3.  ヘロデわうこれをききいたまたエルサレムのたみもみなしか
  4.  すべて祭司さいしをさたみ學者がくしやとをあつめてヘロデとひけるはキリストのうまるべきところ何所いづこなる
  5.  こたへけるはユダヤのベテレヘムなりそは預言者よげんしやしるされたることば
  6.  ユダヤのベテレヘムよなんぢはユダヤの郡中ぐんちうにていとちひさきものにあらわがイスラエルのたみやしなふべききみそのうちよりいでんといへばなり
  7.  ここおいてヘロデひそか博士はかせたちよびほしあらはれしときこまかとひ
  8.  彼等かれらをベテレヘムにつかはさんとしていひけるはゆき嬰兒をさなごことつぶさたづねこれにあはわれつげわれまたゆきてはいすべし
  9.  かれらわうおほせききゆけさきひがしかたにてたりしほしかれらにさきだちて嬰兒をさなごをるところにいたりそのうへとどまりぬ
  10.  彼等かれらこのほしいたよろこ
  11.  すでいへいりければ嬰兒をさなごそのははマリアとともをるひれふして嬰兒をさなごはいたからはこひらき黄金わうごん乳香にうかう沒藥もつやくなど禮物れいもつささげたり
  12.  博士はかせゆめにヘロデへかへなかれとの默示つげかうむりてほかみちよりそのくにかへれり
  13.  彼等かれらされるのちしゆ使者つかひヨセフのゆめあらはれていひけるはヘロデ嬰兒をさなごもとめころさんとするゆゑおき嬰兒をさなごそのははとをたづさへエジプトにのがれまたわがなんぢしめさんときまで彼處かしことどま
  14.  ヨセフおきよる嬰兒をさなごそのははとをたづさへエジプトにゆき
  15.  ヘロデのしぬるまで其所そことどまれりこれしゆ預言者よげんしやよりわれわがをエジプトよりよびいだせりといひたまひしにかなはせんためなり
  16.  ここおいてヘロデ博士はかせあざむかれたるをしりおほいにいかりひとつかはして博士はかせくはしとひたるときはかりベテレヘムとそのさかひうちなるさい以下した嬰兒をさなごことごところせり
  17.  すなは預言者よげんしやヱレミヤのことば
  18.  なげかなしいたうれふこゑラマにきこゆラケルその兒子こどもなげその兒子こどもなきによりてなぐさめずといひしにかなへり
  19.  かくてヘロデしにしかばしゆ使者つかひヨセフのゆめにエジプトにてあらはいひけるは
  20.  おき嬰兒をさなごとそのははとをたづさへイスラエルのにゆけ嬰兒をさなご生命いのちもとむものすでしね
  21.  かれおきて嬰兒をさなごそのははとをたづさへてイスラエルのいたりしが
  22.  アケラヲちちヘロデにかはりてユダヤのわうたりとききければ彼處かしこゆくことをおそまたゆめつげかうむりてガリラヤのうちさけ
  23.  ナザレといへむらいたりてをれかれはナザレびとよばれんと預言者よげんしやよりいはれたることばかなはせんためなり

第三章

  1.  當時そのころバプテスマのヨハネきたりてユダヤののべつたへて
  2.  いひけるは天國てんこくちかづけりくいあらためよ
  3.  しゆみちそなへその路線みちすぢなほくせよとよべひとこゑありと預言者よげんしやイザヤがいひひとなり
  4.  このヨハネは駱駝らくだ毛衣けごろもをきこしかはおびをつかね蝗蟲いなご野蜜のみつ食物しよくもつとせり
  5.  このときエルサレムおよびユダヤをこぞりまたヨルダンの四方しはうより人々ひとびといでてヨハネにつき
  6.  おのつみくいあらはしヨルダンにてかれよりバプテスマをさづけられたり
  7. バプテスマをうけんとてパリサイおよびサドカイの人々ひとびとおほきたれるを彼等かれらいひけるはまむしすゑたがなんぢらにきたらんとするいかりさくべきことをつげしや
  8.  されくいあらためかなむすべよ
  9.  爾曹なんぢらわれらが先祖せんぞにアブラハムありいふことをおもなかわれ爾曹なんぢらつげかみよくこのいしをもアブラハムのならしめたまふなり
  10.  いまをのおかゆゑすべよきむすばざるきられてなげいれらるべし
  11. われ爾曹なんぢらくいあらためさせんとてみづ爾曹なんぢらにバプテスマをさづわれよりのちくるものわれまさり能力ちからありわれそのくつとるにもたらかれ聖靈せいれいをもて爾曹なんぢらにバプテスマをさづけ
  12.  にはもちその禾場うちばきよむぎあつめそのくらにいれからきえざるにてやくべし
  13.  このときイエス、ヨハネにバプテスマをうけんとてガリラヤよりヨルダンにきたたま
  14.  ヨハネいなみいひけるはわれなんぢよりバプテスマをうくべきものなるになんぢかへつわれきた
  15.  イエスこたへけるはしばらゆる如此かくすべてのただしこと我儕われらつくべきなりここおいてヨハネかれゆるせり
  16.  イエス、バプテスマをうけみづよりあがれるときてんたちまこれためにひらけかみみたま鴿はとごとくだりそのうへきたるを
  17.  またてんよりこゑありてわがこころかなふわが愛子あいしなりといへ

第四章

  1.  さてイエス聖靈せいれいみちびかれ惡魔あくまこころみられんためゆけ
  2.  じふにちじふくらことをせずのちうゑたり
  3.  こころむるものかれにきたりていひけるはなんぢもしかみならばめいじてこのいしをパンと
  4.  イエスこたへけるはひとはパンのみにていくるものにあらただかみくちよりいづすべてことばよるしるされたり
  5.  ここおい惡魔あくまかれをきよきみやこたづさへゆき殿みや頂上いただきたたせていひけるは
  6.  なんぢもしかみならばおのしたなげそはなんぢがためかみその使つかひたちめいぜん彼等かれらにてささなんぢあしいしふれざるやうすべしとしるされたり
  7.  イエスかれいひけるはしゆたるなんぢかみこころむべからずとまたしるせり
  8.  惡魔あくままたかれいとたかやまたづさへゆき世界せかい諸國くにぐにとその榮華えいぐわとをせて
  9.  なんぢもしひれふしわれはいせば此等これらみななんぢにあたふべしといふ
  10.  イエスかれいひけるはサタンよ退しりぞしゆたるなんぢかみはいただこれにのみつかふべしとしるされたり
  11.  つひ惡魔あくまかれをはな天使てんのつかひたちきたつか
  12.  イエス、ヨハネのとらはれしことききてガリラヤにゆき
  13.  ナザレをさりゼブルンとナフタリのさかひなる海邊うみべのカペナウンにいたりここをれ
  14.  これ預言者よげんしやイザヤのことば
  15.  ゼブルンの、ナフタリのうみ沿そひたるヨルダンのむかふ異邦人いはうじんのガリラヤ
  16.  此等これら幽暗くらきにをるたみおほいなるひかりをみしのしのかげするものうへひかりいでたりといひしにかなはせんためなり
  17.  このときよりイエスはじめみちのべつた天國てんこくちかづけりくいあらためよといひたまへり
  18.  イエス、ガリラヤの海邊うみべあゆみて、ペテロといふシモンその兄弟きやうだいアンデレと二人ふたりにてうみあみうてるをたり彼等かれら漁者すなどりびとなり
  19.  これいひけるはわれしたがわれ爾曹なんぢらひとすなどものなさ
  20.  彼等かれらやがてあみすててイエスにしたが
  21.  ここよりすすみけるにまたほか兄弟きやうだい二人ふたりすなはちゼベダイのヤコブとその兄弟きやうだいヨハネちちゼベダイとともふねにてあみつくろへるをこれよびしに
  22.  彼等かれらやがふねちちとをおきてイエスにしたがへり
  23.  イエス、ガリラヤをあまねめぐその會堂くわいだうにてをしへをなし天國てんこく福音ふくいんのべつたへかつたみうちなるもろもろやまひもろもろのわづらひいやしぬ
  24.  その聲名きこえあまねくスリヤにひろがりしかば人々ひとびとすべてのわづらへるもの萬殊さまざまやまひまたいたみなやめるものあるひはおにつかれたるもの癲癇てんかん癱瘋ちゆうぶやまひかかれるものかれつれきたりければこれいやせり
  25.  ガリラヤとデカポリス、エルサレム、ユダヤ、ヨルダンのむかふよりおほく人々ひとびときたりしたが

第五章

  1.  イエス許多おほくひとやまのぼたまひければ弟子でしたちそのもときたれり
  2.  イエスくちひらき彼等かれらをしいひけるは
  3. こころまづしきものさいはひなり天國てんこくすなはそのひとものなればなり
  4.  かなしものさいはひなりそのひと安慰なぐさめべければなり
  5. 柔和にうわなるものさいはひなりそのひとつぐことをべければなり
  6.  うゑかわくごとくしたふものさいはひなりそのひとあくことをべければなり
  7.  矜恤あはれみあるものさいはひなりそのひと矜恤あはれみべければなり
  8.  こころきよものさいはひなりそのひとかみみることをべければなり
  9.  和平やはらぎもとむものさいはひなりそのひとかみとなへらるべければなり
  10.  ただしきことのためせめらるるものさいはひなり天國てんこくすなはそのひとものなればなり
  11.  わがためにひとなんぢらを詬誶ののしりまた迫害せめいつはりて各樣さまざまあしきことをいはんそのとき爾曹なんぢらさいはひなり
  12. よろこたのしてんおい爾曹なんぢら報賞むくいおほければなりそは爾曹なんぢらよりさき預言者よげんしやをも如此かくせめたりき
  13.  爾曹なんぢらしほなりしほもしそのあぢうしなはばなにもてもとあぢかへさんのちようなしそとすてられてひとふまるる而已のみ
  14.  爾曹なんぢらひかりなりやまうへたてられたるしろかくるることを
  15. ともしびともしてますしたにおくものなし燭臺しよくだいおきいへあるすべてのものてらさん
  16.  かくごと人々ひとびとまへ爾曹なんぢらひかり耀かがやかせれば人々ひとびとなんぢらのよきおこなひてんいま爾曹なんぢらちちあがむべし
  17.  われ律法おきて預言者よげんしやすつためきたれりとおもなかれわれきたりこれすつるにあら成就じやうじゆせんためなり
  18.  われまこと爾曹なんぢらつげ天地てんちつきざるうち律法おきて一點いつてん一畫いつくわくとげつくさずしてすたることなし
  19.  このゆゑひともしいましめいとちひさひとつやぶまたそのごとひとをしへなば天國てんこくおいいとちひさものいはれんおほよこれおこなかつひとをしふもの天國てんこくおいおほいなるものいはるべし
  20.  われなんぢらにつげ學者がくしやとパリサイのひとただしきよりも爾曹なんぢらただしきことすぐれずばかなら天國てんこくいることあたは
  21.  いにしへへのひとつげころすことなかころもの審判さばきあづからんといへることある爾曹なんぢらききところなり
  22.  されわれなんぢらにつげすべゆゑなくしてその兄弟きやうだいいかもの審判さばきあづからんまたその兄弟きやうだい愚者おろかものよといふもの集議しふぎあづからんまた狂妄しれものよといふもの地獄ぢごくあづかるべし
  23.  ゆゑなんぢもし禮物そなへものたづさへてだんゆきたるときかしこにて兄弟きやうだいうらまるることあるをおもひいださば
  24.  その供物そなへものだんまへおきまづゆきなんぢ兄弟きやうだいやはらのちきたりてなんぢ禮物そなへものささげ
  25.  なんぢうつたふるものとも途間みちにあるときはやくやはらげよおそらくはうつたふるものなんぢを審官しらべやくわた審官しらべやくまたなんぢ下吏したやくわたつひなんぢひとやいれられん
  26.  われまことになんぢつげ分釐ぶんりまでもつくのはざればかなら其所そこいづることあたはざる
  27.  いにしへひとつげ姦淫かんいんすることなかれいへることあるは爾曹なんぢらききところなり
  28.  されわれなんぢらにつげおほよをんな色情しきじやうおこもの中心こころのうちすでに姦淫かんいんしたるなり
  29.  もしみぎなんぢをつみおとさばぬきいだしてこれすてそは五體ごたいひとつうしなふは全身ぜんしん地獄ぢごくなげいれらるるよりはまされり
  30. もしみぎなんぢをつみおとさばこれきりすてそは五體ごたいひとつうしなふは全身ぜんしん地獄ぢごく投入なげいれらるるよりはまされり
  31.  またいへることありおほよひとそのつまいださんとせばこれ離縁状りえんじやうあたふべしと
  32.  されわれ爾曹なんぢらつげ姦淫かんいんゆゑならでそのつまいだものこれ姦淫かんいんなさしむるなりまたいだされたるをんなめともの姦淫かんいんおこなふなり
  33.  またいにしへひとつげいつはりちかひたつることなかれなんぢちかところかならしゆとぐべしといへることある爾曹なんぢらききところなり
  34.  されわれなんぢらにつげさらちかふことなかてんさしちかなかこれかみ座位みくらゐなればなり
  35.  さしちかふことなかれこれかみ足凳あしだいなればなりエルサレムをさしちかふことなかれこれ大王おほきみ京城みやこなればなり
  36.  なんぢかしらさしちかなかれそはひとすぢのだにしろくくろくすることあたはざればなり
  37.  爾曹なんぢらただ是々しかりしかり否々いないなといへこれよりすぐるはあくよりいづるなり
  38.  にてつくのにてつくのへといへることある爾曹なんぢらききところなり
  39.  されわれなんぢらにつげあくてきすることなかひとなんぢのみぎほほうたまたほかのほほをもめぐらしてこれむけ
  40.  なんぢうつたへ裏衣したぎとらんとするものには外服うはぎをもまたとらせよ
  41. ひとなんぢに一里いちり公役こうえきしひなばこれとも二里にりゆけ
  42.  なんぢもとむものにはあたからんとするものしりぞくるなか
  43. なんぢとなりいつくしみてそのあだうらむべしといへることある爾曹なんぢらききところなり
  44.  されどわれなんぢらにつげ爾曹なんぢらあだいつくし爾曹なんぢらのろものしゆく爾曹なんぢらにくもの善視よく虐遇なやめ迫害せむるもののため祈禱きたうせよ
  45.  如此かくするはてんいま爾曹なんぢらちちとならんためなりそれてんちちそのよきものにもあしきものにもてらあめただしものにもただしからざるものにもふらたまへり
  46.  爾曹なんぢらおのれをあいするものあいするはなに報賞むくいかあらん税吏みつぎとりしかせざらん
  47.  安否あんぴ兄弟きやうだいにのみとふひとよりなにすぐれたることかあらん税吏みつぎとりしかせざらん
  48.  このゆゑてんいま爾曹なんぢらちち完全まつたきごと爾曹なんぢら完全まつたくすべし

第六章

  1.  なんぢらひとせんためにそのただしきひとまへなすことをつつしめもししからずばてんいま爾曹なんぢらちちより報賞むくひ
  2.  このゆゑ施濟ほどこしなすときひとあがめため會堂くわいだう街衢ちまたにて僞善者ぎぜんしやごとらつぱおのまへふかしむるなかわれまことに爾曹なんぢらつげ彼等かれらすでにその報賞むくいたり
  3.  なんぢ施濟ほどこしをするときみぎなすことをひだりしらするなか
  4.  如此かくするはその施濟ほどこしかくれんがためなりさらかくれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし
  5.  なんぢいのとき僞善者ぎぜんしやごとくするなか彼等かれらひとられんがため會堂くわいだう街衢ちまたすみたちいのることをこのむわれまこと爾曹なんぢらつげ彼等かれらすでにその報賞むくいたり
  6.  なんぢいのるときは嚴密ひそかなるへやにいりとぢ隱微かくれたるにいまなんぢちちいのさら隱微かくれれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし
  7.  爾曹なんぢらいのとき異邦人いはうじんごと重複くりかへしごといふなかれ彼等かれらことばおほきをきかれんとおもへり
  8.  このゆゑ彼等かれらならふことなか爾曹なんぢらちちねがはざるさきその需要なくてならぬものしりたまへばなり
  9.  され爾曹なんぢらかくいのるべしてんまします我儕われらちちねがはくは爾名みな尊崇あがめさせたま
  10.  爾國みくにきたらせたま爾旨みこころてんなるごとくにもなさたま
  11.  我儕われら日用にちようかて今日けふあたへたまへ
  12.  我儕われら負債おひめあるもの我儕われらがゆるすごと我儕われら負債おひめをもゆるたま
  13.  我儕われららを試探こころみあはせずあくよりすくひいだたまくにちからさかえかぎりなくなんぢものなればなりアメン
  14.  爾曹なんぢらもしひとつみゆるさばてんまします爾曹なんぢらちちまたなんぢらをゆるたまはん
  15.  されどもしひとつみゆるさずば爾曹なんぢらちち爾曹なんぢらつみゆるたまはざるべし
  16. なんぢら斷食だんじきするとき僞善者ぎぜんしやごとうきさまをするなか彼等かれら斷食だんじきひとみせため顏色かほいろそこなわれまことに爾曹なんぢらつげ彼等かれらすでその報賞むくいたり
  17. なんぢ斷食だんじきするときかしらあぶらをぬりかほあら
  18.  如此かくするはなんぢ斷食だんじきひとみえずして隱微かくれたるにいまなんぢちちあらはれんがためなりされ隱微かくれたるにたまふなんぢちち明顯あらはむくいたまふべし
  19.  しみくひさびくさりぬすびとうがちてぬすところたからたくはふることなか
  20.  しみくひさびくさりぬすびと穿うがちぬすまざるところてんたからたくはふべし
  21.  そはなんぢらのたからあるところにこころまたあるべければなり
  22.  ひかりなりもしなんぢのあきらかならば全身ぜんしんまたあきらかなるべし
  23.  もしなんぢのあしからば全身ぜんしんくらかるべしこのゆゑなんぢうちひかりもしくらからばそのくらきこと如何いかおほいならず
  24.  ひと二人ふたりしゆつかふることあたはそはこれをにくみかれをいつくしこれしたしかれうとむべければなりなんぢらかみたからかねつかふることあたはず
  25.  このゆゑわれなんぢらにつげ生命いのちためなにくらなにのみまた身體からだためなにんとおもひわづらふことなか生命いのちかてよりまさ身體からだころもよりもまされるものならず
  26.  なんぢら天空そらとりまくことなくかることをくらたくはふることなししかるに爾曹なんぢらてんちちこれやしなたまへり爾曹なんぢらこれよりもおほひすぐるるものならず
  27.  爾曹なんぢらのうちたれよくおもひわづらひてその生命いのち寸陰すんいんのべんや
  28.  また何故なにゆゑころものことをおもひわづらふや百合花ゆり如何いかにしてそだつかをおもつとめつむがざるなり
  29.  われ爾曹なんぢらつげんソロモンの榮華えいぐわきはみときだにもそのよそほひこのはなひとつしかざりき
  30.  かみ今日けふあり明日あすなげいれらるるくさをも如此かくよそはせたまへばまし爾曹なんぢらをや嗚呼ああ信仰しんかううすきもの
  31.  されなにくらなにのみなにをんとておもひわづらふなか
  32.  これみな異邦人いはうじんもとむものなり爾曹なんぢらてんちちすべ此等これらのものの必需なくてならぬことをしりたまへり
  33.  爾曹なんぢらまづかみくにそのただしきとをもとめさら此等これらのものはみななんぢらにくはへらるべし
  34.  このゆゑ明日あすことおもひわづらふなかれ明日あす明日あすことおもひわづらへ一日いちにち苦勞くらう一日いちにちにてたれ

第七章

  1.  ひとすることなかおそらくは爾曹なんぢらもまたせられん
  2. 爾曹なんぢらひとするごとおのれせらるべし爾曹なんぢらひとはかるごとくおのれはからるべし
  3. なんぢ兄弟きやうだいにある物屑ちりおのにある梁木うつばりしらざるはなんぞや
  4. おのれ梁木うつばりのあるに如何いか兄弟きやうだいにむかひてなんぢにある物屑ちりわれとらせよといふことをんや
  5.  僞善者ぎぜんしやまづおのれのより梁木うつばりをとれさら兄弟きやうだいより物屑ちりとりるやうあきらかにみゆべし
  6.  いぬきよきものあたふるなかれまたぶたまへ爾曹なんぢら眞珠しんじゆなげあたふなかおそらくはあしにてこれふみふりかへりて爾曹なんぢらかみやぶらん
  7.  もとめよさらあたへられたづねさらばあひもんたたけさらひらかるることを
  8.  そはすべてもとむものはえたづぬものはあひもんたたものひらかるべければなり
  9. 爾曹なんぢらのうちたれそのパンをもとめんにいしあたへんや
  10.  またうをもとめんにへびあたへんや
  11.  さら爾曹なんぢらあしものながらよきたまものそのあたふるをしるましててんいま爾曹なんぢらちちもとむものよきものあたへざらん
  12. このゆゑすべひとられんとおもふことは爾曹なんぢらまたひとにもそのごとくこれ律法おきて預言者よげんしやなるなり
  13.  せまもんよりいれ沈淪ほろびいたみちひろくそのもんおほいなりこれよりいるものおほ
  14. いのちいたみちせまくそのもんちひさそのみちうるものまれなり
  15. いつはり預言者よげんしやつつしめよ彼等かれら綿羊めんやう姿すがたにて爾曹なんぢらきたれどもうちあらきおほかみなり
  16. これそのよりしるべしたれ荊棘いばらより葡萄ぶだうをとり蒺藜あざみより無花果いちじくとることをせん
  17.  すべよきよきむすあしきあしきむすべり
  18.  よきあしきむすばずあしきよきむすぶことあたはざるなり
  19.  おほよよきむすばざるきられてなげいれらる
  20.  このゆゑそのよりこれしるべし
  21.  われよびしゆしゆよといふものことごと天國てんこくいるあらただこれにいるものわがてんいまちちむねしたがもののみなり
  22.  そのわれにかたりしゆしゆしゆよりてをしへしゆよりおにをおひしゆよりおほことなるわざなししにあらずやといふものおほからん
  23.  そのときかれらにつげわれかつ爾曹なんぢらしらあくをなすものわれはなれされいは
  24.  このゆゑすべわがこのことばききおこなものいはうへいへたてたるかしこきひとたとへ
  25.  あめふり大水おほみづいでかぜふきてそのいへうてどもたふるることなしこれいは基礎いしずゑなしたればなり
  26. すべわがこのことばききおこなはざるものすなうへいへたてたるおろかなるひとたとへ
  27. あめふり大水おほみづいでかぜふきてそのいへうてつひにはたふれてその傾覆たふれおほいなり
  28.  イエス此等これらことばかたりはてたまへるときあつまりたる人々ひとびとそのをしへおどろきあへり
  29.  そは學者がくしやごとくならず權威けんゐもてものごとをしへたまへばなり

第八章

  1.  イエスやまくだりしときおほく人々ひとびとこれにしたがへり
  2. 癩病らいびやうものきたりはいしていひけるはしゆもしこころかなふときはわれきよくなしべし
  3.  イエスのべかれにつけわがこころかなへりきよくなれといひければ癩病らいびやうただちにきよまれり
  4.  イエスかれいひけるはつつしみひとつぐなかただゆきておのれ祭司さいしかつモーセがめいぜし禮物そなへものささげ彼等かれら證據しようこをせよ
  5.  イエス、カペナウンにいりしとき百夫ひやくにんかしらきたりねがふいひけるは
  6.  しゆわがしもべ癱瘋ちゆうぶをやみいへふしゐてはなはなやめり
  7.  イエスいひけるはわれゆきてこれいやすべし
  8.  百夫ひやくにんかしらこたへけるはしゆわれなんぢをやねのしたいれまつるはおそおほただ一言ひとこといだたまはばわがしもべいえ
  9.  そはわれひと權威ちからしたにあるものなるにわがしたまた兵卒へいそつありてこれゆけいへばゆきかれきたれといへきたわがしもべこれなせいへすなはなすゆゑなり
  10.  イエスこれをききあやししたがへる人々ひとびといひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげんイスラエルのうちにだにいまかかあつきしんあはざるなり
  11.  われ爾曹なんぢらつげおほく人々ひとびとひがしより西にしよりきたりてアブラハム、イサク、ヤコブととも天國てんこく
  12.  くに諸子こどもそと幽暗くらきおひいだされ其處そこにて哀哭かなしみ切齒はがみすることあら
  13.  イエス百夫ひやくにんかしらゆけなんぢが信仰しんかうごとなんぢなるべしといひたまへるそのときしもべいえたり
  14.  イエス、ペテロのいへいりその岳母しうとめねつわづらふしゐたるを
  15.  そのさはりければすなはねつされりをんなおきて彼等かれらつか
  16.  くれたるとき人々ひとびとおにつかれたるものおほつれきたりければイエスことばにておにおひいだやまひあるものことごといやせり
  17.  預言者よげんしやイザヤによりみづか我儕われらわづらひうけわれらのやまひおふいひたまひしにかなはせんがためなり
  18.  さてイエスおほく人々ひとびとおのれめぐれるを弟子でしめいむかふきしゆかんとしたまひしに
  19.  ある學者がくしやきたりていひけるは何處いづこゆきたまふともわれしたがはん
  20.  イエスこれいひけるはきつねあなあり天空そらとりありされひとまくらするところなし
  21.  また弟子でし一人ひとりいひけるはしゆまづゆきてちちはうむることをわれゆる
  22.  イエスいひけるはわれしたがしにたるものそのしにものはうむらせよ
  23.  イエスふねのりければ弟子でしたちこれしたが
  24.  このときおほいなる颶風はやておこりてふねおほふばかりなるなみたちしにイエスはいねたり
  25.  弟子でしたちこれにちかづきておこいひけるはしゆすくひたまへ我儕われらほろびんとす
  26.  イエス彼等かれらいひけるは信仰しんかううすきものなんおそるるやつひおきかぜうみとをいましめければおほい平息おだやかになりぬ
  27. 人々ひとびとあやしみていひけるは如何いかなるひとかぜうみこれしたがひたり
  28. イエスむかふきしなるガダラびといたれるときおにつかれたる二人ふたりのものはかよりいでかれむかたけきことはなはだしくしてそのみちひとすぐることあたはざりしほどなり
  29. かれら呼叫さけびいひけるはかみイエスよ我儕われらなんぢとなにかかはりあらんいまだときいたらざるに我儕われらせめんとて此處ここきたるか
  30. はるかはなれてぶたおほくのむれしよくければ
  31.  おにイエスにねがひいひけるはもしわれらをおひいださんとならばぶたむれいることをゆる
  32. 彼等かれらゆけいひければおにいでてぶたむれいりしにすべてのむれ山坡さかよりかけうみにいりみづしにたり
  33.  かふものどもむらにげゆきこのことおにつかれたりしものことつげければ
  34. イエスにあはんとてむらものこぞりいできたりかれこのさかひいでんことをねがへり

第九章

  1.  イエスふねのりわたりて故邑ふるさといたりければ
  2.  癱瘋ちゆうぶにてとこふしたるもの人々ひとびとかききたれりイエス彼等かれらしんずるを癱瘋ちゆうぶものいひけるはこころやすかれなんぢつみゆるされたり
  3. ある學者がくしやたちこころうちいひけるはこのひと褻涜けがすこといへ
  4.  イエスそのおもひしりいひけるは爾曹なんぢらいかなればこころあくおもふや
  5.  なくぢつみゆるされたりといふおきあゆめといふいづれやす
  6.  それひとにてつみゆるすのちからあることを爾曹なんぢらしらせんとてつひ癱瘋ちゆうぶものおきとこをとりいへかへれといひければ
  7.  おきそのいへかへりぬ
  8.  人々ひとびとこれをあやしかくごとちからひとたまひかみあがめたり
  9.  イエスここよりすすみゆきマタイとなづくるひと税關やくしよけるをわれしたがへといひければたちしたがへり
  10.  イエスかれいへしよくするとき税吏みつぎとりつみあるひとおほくきたりてイエスおよびその弟子でしともしければ
  11.  パリサイのひとこれをその弟子でしいひけるは爾曹なんぢら何故なにゆゑ税吏みつぎとりつみあるひとともしよくする
  12.  イエスきき彼等かれらいひけるは康強すこやかなるもの醫者いしやたすけもとめただやまひあるものこれをもとむ
  13.  われ矜恤あはれみこのみ祭祀まつりこのまずといふ如何いかなるこころゆきまなぶべしそれわがきたるはただしきひとまねくためにあらつみあるひとまねきてくいあらためさせんがためなり
  14.  そのときヨハネの弟子でしイエスにきたりいひけるは我儕われらとパリサイのひとはしばしば斷食だんじきするに弟子でし斷食だんじきせざるは何故なにゆゑ
  15.  イエス彼等かれらいひけるは新郎はなむこともだちその新郎はなむこともをるうちはかなしむことをんや將來のち新郎はなむこをひきとらるるきたらんそのときには斷食だんじきすべきなり
  16.  あたらしぬのふるころもつくろものはあらじそはつくろふところのものかへつこれやぶりそのほころもつとはなはだしからん
  17.  またあたらしさけふる革嚢かはぶくろいるものはあらじもししかせばふくろはりさけさけもれいでてそのふくろまたすたらんあたらしきふくろあたらしきさけいれなばふたつながらたもつべし
  18.  イエス彼等かれらこのこといへときあるつかさきたりはいしていひけるはわがむすめいますでしねきたりかれつけたまはばいくべし
  19.  イエスたちかれしたがその弟子でしともゆく
  20.  十二じふにねん血漏ちろうわづらへるをんなうしろにきたりそのころもすそさはれり
  21.  そはもしころもだにもさはらばいえんとおもへばなり
  22.  イエスふりかへりをんないひけるはむすめこころやすかれなんぢ信仰しんかうなんぢをいやせりすなはをんなこのときよりいゆ
  23.  イエスつかさいへいりりしにふえふくものおよびおほくひとなきさわぐ
  24.  これいひけるは退しりぞむすめしぬるにあらずただいねたるのみ人々ひとびひとイエスを哂笑あざわら
  25.  彼等かれらいだししのちいりてそのとりしにむすめおきたり
  26.  この(きこえあまねくそのひろがりぬ
  27.  イエスここさるとき二人ふたり瞽者めしひしたがひてよびいひけるはダビデの我儕われらあはれたま
  28.  イエスいへいりしに瞽者めしひきたりければ彼等かれらいひたまひけるはわれこのことなしるとしんずるやこたへけるはしゆしか
  29.  イエス彼等かれらつけ爾曹なんぢらしんずるごと爾曹なんぢらなるべしといひければ
  30.  そのひらけたりイエスきびしいましめこれいひけるはつつしみひとしらするなか
  31.  されども彼等かれらいでてあまねそのにイエスのひろめたり
  32.  瞽者めしひいづるとき人々ひとびとおにつかれたる暗唖おふしをイエスにつれきたりしに
  33.  おにおひいだされて暗唖おふしものいへり衆人ひとびとあやしみいひけるはイスラエルのうちにもいまかかことみえざりき
  34.  パリサイのひといひけるはかれおにかしらよりおにおひいだせるなり
  35.  イエスあまね郷邑むらざとめぐりその會堂くわいだうにてをしへをなし天國てんこく福音ふくいんのべつたたみうちなるすべてやまひすべてのわづらひいやせり
  36.  牧者かふものなきひつじごと衆人ひとびとなやみまた流離ちりぢりになりしゆゑこれあはれみたまふ
  37.  そのとき弟子でしたちいひたまひけるは收稼かりいれものおほ工人はたらくものすくな
  38.  ゆゑその稼主もちぬし工人はたらくもの收稼場かりいればおくらんことをねがふべし

第十章

  1.  さてイエスその十二じふに弟子でしをよび彼等かれらけがれたるおにおひいだしまたすべてのやまひすべてのわづらひをいやちからたまへり
  2.  その十二じふに使徒しととしはじめにはペテロとなづたまひしシモンその兄弟きやうだいアンデレ、ゼベダイのヤコブその兄弟きやうだいヨハネ
  3.  ピリポ、バルトロマイ、トマス税吏みつぎとりマタイ、アルパイのなるヤコブ、タツダイとなづくるレツバイ
  4.  カナンのシモン、イスカリオテのユダこれすなはちイエスをわたししものなり
  5.  イエスこの十二じふにつかはさんとしてめいいひけるは異邦いはうみちゆくなかれまたサマリアびとむらにもいるなかれ
  6.  ただイスラエルのいへまよへるひつじゆけ
  7.  ゆき天國てんこくちかきありのべつたへ
  8.  やまひものいや癩病らいびやうきよくしにたるものよみがへらせおにおひいだすことをせよ爾曹なんぢらあたひなしにうけたればまたあたひなしにほどこすべし
  9.  爾曹なんぢらきんまたはぎんまたはぜにたくはおぶなか
  10.  行嚢たびぶくろふたつ裏衣したぎくつつゑまたしかりそは工人はたらくものその食物しよくもつうるうべなり
  11.  おほよ郷邑むらざといたらばそのうち好人よきものたづねいづるまでは其處そことどま
  12.  ひといへにいらばその平安やすきとへ
  13.  そのいへもし平安やすきべきものならば爾曹なんぢらねが平安やすきそのいへいたらん平安やすきうくべからざるものならば爾曹なんぢらねが平安やすき爾曹なんぢらかへるべし
  14.  もし爾曹なんぢらうけ爾曹なんぢらことばきかざるものあらばそのいへまたはそのむらさるときあしちりはら
  15.  われまこと爾曹なんぢらつげ審判さばきいたらばソドムとゴモラのこのむらよりもかへつやすからん
  16.  われ爾曹なんぢらつかはすはひつじおほかみなかいるるがごとゆゑへびごとさと鴿はとごと馴良おとなしかれ
  17.  つつしみてひと戒心こころせよそはひとなんぢらを集議所しふぎしよわたまたその會堂くわいだうにてむちうつべければなり
  18.  またわが縁故ゆゑより侯伯つかさおよびわうまへひかるべしこれかれらと異邦人いはうじんあかしをなさんがためなり
  19.  ひとなんぢらをわたさば如何いかになにをいはんとおもわづらふなかそのときいふべきこと爾曹なんぢらたまはるべし
  20.  これなんぢらみづかいふあら爾曹なんぢらちちみたまそのうちありいふなり
  21.  兄弟きやうだい兄弟きやうだいわたちちわた兩親ふたおやうつたかつこれをころさしむべし
  22.  またなんぢらわがためすべてひとにくまれんされをはりまでしのものすくはるべし
  23.  このむらにてひとなんぢらをせめなばほかむらのがれよわれまことに爾曹なんぢらつげ爾曹なんぢらイスラエルの諸邑むらむらめぐりつくさざるうちひときたるべし
  24.  弟子でしよりまさらずしもべあるじよりまさらざるなり
  25.  弟子でしそのごとしもべそのあるじごとくならばたりぬべしひとあるじよびてベルゼブルといはましそのいへものをや
  26.  このゆゑ彼等かれらおそるることなかれそはおほはれてあらはれざるものなくかくれしられざるものなければなり
  27.  われ幽暗くらきおい爾曹なんぢらつげしことを光明あかるきのべみみをつけてききしことをやのうへいひひろめよ
  28.  ころしてたましひころすことをあたはざるものおそるるなかただなんぢらたましひからだとを地獄ぢごくほろぼものおそれよ
  29.  すずめいつせんにてうるあらずやしかるに爾曹なんぢらちちゆるしなくばそのいちおつることあら
  30.  爾曹なんぢらかしらまたみなかぞへらる
  31.  ゆゑおそるるなか爾曹なんぢらおほくすずめよりもまされり
  32.  されおほよひとまへわれしるいはものわれまたてんいまわがちちまへこれしるいは
  33.  ひとまへわれしらずといはものわれまたてんいまわがちちまへこれしらずといふべし
  34.  泰平おだやかいださためわれきたれりとおもふなかれ泰平おだやかいださんとにあらやいばいださんためきたれり
  35.  それわがきたるはひとそのちちそむかせむすめそのははそむかせよめそのしうとめそむかせんがためなり
  36.  ひとあだそのいへものなるべし
  37.  われよりも父母ちちははいつくしものわれかなはざるものなりわれよりも子女むすこむすめいつくしものわれかなはざるものなり
  38.  その十字架じふじかとりわれしたがはざるものわれかなはざるものなり
  39.  その生命いのちものこれうしなわがために生命いのちうしなものこれべし
  40.  爾曹なんぢらうくものわれうくなりまたわれうくものわれつかはししものうくるなり
  41.  預言者よげんしやなるをもてその預言者よげんしやうくもの預言者よげんしや報賞むくいをうけただしきひとなるをもてそのただしきひとうくものただしきひと報賞むくいうく
  42.  わが弟子でしなるをもてちひさ一人ひとりものひややかなるみづ一杯いつぱいにてものまするものまこと爾曹なんぢらつげかならその報賞むくいうしなはじ

第十一章

  1.  イエスその十二じふに弟子でししめしをはりしとき此處ここをさりみちをしひろめんがため彼等かれら諸邑むらむらゆけ
  2.  さてヨハネひとやにてキリストのなしわざききその弟子でし二人ふたりかれつかはして
  3.  いはせけるはきたるべきものなんぢなるかまたわれらほかまつべき
  4.  イエス彼等かれらこたへいひけるは爾曹なんぢらきくところみるところのことをヨハネにゆきつげ
  5.  瞽者めしひはみ跛者あしなへはあゆみ癩病人らいびやうにんきよまり聾者つんぼはききしにたるもの復活いきかへされまづしきもの福音ふくいんきかせらる
  6.  おほよわがためにつまづかざるものさいはひなり
  7.  彼等かれらかへれるのちイエス、ヨハネのこと人々ひとびといひけるは爾曹なんぢらなにんとていでしやかぜうごかさるるあしなる
  8.  さら爾曹なんぢらなにんとていでしややはらかきころもたるひとなるかやはらかきころもたるものわうのいへあり
  9.  さらなにんとていでしや預言者よげんしやなるかしかりわれ爾曹なんぢらつげかれ預言者よげんしやよりも卓越すぐれたるものなり
  10.  それなんぢにさきだちてみちそなふ使者つかひわれなんぢのまへおくらんとしるされたるはすなはこれなり
  11.  まこと爾曹なんぢらつげをんなうみたるものうちいまだバプテスマのヨハネよりおほいなるものおこらざりきされ天國てんこくいとちひさものかれよりはおほいなるなり
  12.  バプテスマのヨハネのときよりいまいたるまで人々ひとびとはげみ天國てんこくとらんとすはげみたるものこれとれ
  13.  それすべて預言者よげんしや律法おきて預言よげんしたるはヨハネのときまでなればなり
  14.  もしなんぢらわがことばうくることをこのまばきたるべきエリヤはこれなり
  15.  みみありてきこゆるものきくべし
  16.  われこのなにたとへんや童子わらべちまたそのともよび
  17.  われらふえふけども爾曹なんぢらをどらずかなしみをすれども爾曹なんぢらむねうたずといふたり
  18.  そはヨハネきたりくらふことのむことをざればおにつかれたるものなりと人々ひとびといへ
  19.  ひときたりてくらふことをしのむことをればまたしよくたしさけこのひと税吏みつぎとりつみあるものともなりといふされども智慧ちゑ智慧ちゑただしらるるなり
  20.  そのときイエスおほくことなるわざなしたまひたる諸邑むらむらくいあらためざるによりいましめいひけるは
  21.  ああわざはひなるかなコラジンよああわざはひなるかなベテサイダよ爾曹なんぢらうちなしことなるわざもしツロとシドンになししならば彼等かれらはやあさをきはひかむりてくいあらためしなるべし
  22.  われ爾曹なんぢらつげ審判さばきにはツロとシドンの刑罰けいばつ爾曹なんぢらよりもかへつやすからん
  23.  すでてんにまであげられしカペナウンよまた陰府よみおとさるべしそはなんぢになしことなるわざもしソドムになししならば今日けふまでもなほ保存たもちしならん
  24.  われなんぢらにつげ審判さばきにソドムのなんぢよりもかへつやすかるべし
  25.  そのときイエスこたへいひけるは天地てんちしゆなるちちこのことかしこきものさときものかくして赤子をさなごあらはしたまふをしや
  26.  ちちしかりそれかくごとき聖旨みこころかなへるなり
  27.  ちちわれ萬物ばんもつあたへたまへりちちほかしるものなくまたおよびあらはところものほかちちしるものなし
  28.  すべつかれたるものまたおもきおへものわれきたわれなんぢらをやすません
  29.  われこころ柔和にうわにして謙遜へりくだるものなればわがくびきおひわれならへなんぢらこころ平安やすきべし
  30.  そはわがくびきやすくわがかろければなり

第十二章

  1.  當時そのころイエス安息日あんそくにちむぎはたけすぎしがその弟子でしたちうゑつみくひはじめたり
  2.  パリサイのひとこれをてイエスにいひけるはなんぢ弟子でし安息日あんそくにちまじきことなせ
  3.  これこたへけるはダビデおよびともありものうゑしときなしこといまよまざる
  4.  すなはかみ殿みやいり祭司さいしほかおのれおよびともにをるものくらふまじきそなへのパンをくらへり
  5.  また安息日あんそくにち祭司さいし殿みやうちにて安息日あんそくにちをかせどもつみなきこと律法おきておいよまざる
  6.  われ爾曹なんぢらつげ殿みやよりおほいなるものここあり
  7.  われ矜恤あはれみこのみ祭祀まつりこのまずとは如何いかなることかこれしらつみなきものつみせざるべし
  8.  それひと安息日あんそくにちしゆたるなり
  9.  ここさり彼等かれら會堂くわいだういりしに
  10.  一手かたてなへたるひとありければ彼等かれらイエスをうつたへんとてこれとひけるは安息日あんそくにちにはいやすことをなすべき
  11.  彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらうちひとつひつじもてものあらんにもしそのひつじ安息日あんそくにちあなおちいらばこれ挈上とりあげざる
  12.  ひとひつじよりすぐるること幾何いかばかりぞやされ安息日あんそくにちぜんなすよし
  13.  つひにそのひとなんぢのべよといひければのばせりすなはほかごといゆ
  14.  パリサイのひといでてイエスをころさんとはかれり
  15. イエスこれしりここさりしにおほく人々ひとびとこれにしたがすべ疾病やまひあるものをみないや
  16.  われひとあらはすことなかれといましめたり
  17.  これ預言者よげんしやイザヤのいひことば
  18.  えらびわがしもべすなはちわがこころかなひたるいつくしものわれこれわがみたまあたへかれ異邦人いはうじん審判さばきしめすべし
  19.  かれきそふことなくさけぶことなしひとちまたおいそのこゑきくことなし
  20.  審判さばきをしてかちとげしむるまではいためあしをることなくけぶれるあさけすことなし
  21.  異邦人いはうじんまたそのよるべしとあるかなはせんためなり
  22.  ここおにつかれたるめくらおふしなるものをイエスのところつれきたりければこのめくらおふしいやしてものいみゆるやうになせ
  23.  衆人ひとびとみなあやしみていひけるははダビデのあらざる
  24.  パリサイのひとききていひけるはこのひとおにかしらベルゼブルをつかふにあらざればおにおひいだすことなし
  25.  イエスそのこころしり彼等かれらいひけるはすべあひあらそくにほろすべあひあらそむらいへたつべからず
  26.  サタンもしサタンをおひいださばみづかあひあらそふなりさらそのくにいかでたたんや
  27.  もしわれベルゼブルにより惡鬼あくきおひいださば爾曹なんぢら子弟こどもたれよりこれおひいだすやそれかれらは爾曹なんぢら裁判人さいばんにんとなるべし
  28.  もしわれかみみたまよりおにおひいだししならばかみくにはもはや爾曹なんぢらいたれり
  29.  また勇士つよきものをまづしばらざれば如何いかそのいへいりその家具かぐうばふことをんやしばりのちそのいへうばふべし
  30.  われともならざるものわれそむわれともあつめざるものちらすなり
  31.  このゆゑ爾曹なんぢらつげ人々ひとびとすべをかところつみかみけがすことはゆるされんされ人々ひとびと聖靈せいれいけがすことはゆるさるべからず
  32.  ことばひとそむものゆるさるべしされことばをもて聖靈せいれいそむもの今世このよおいてもまた來世のちのよおいてもゆるさるべからず
  33.  あるひをもよしとしそのをもよしとせよあるひをもあししとしそのをもあししとせよそれそのよりしらるるなり
  34.  ああまむしすゑ爾曹なんぢらあくにしていかぜんいふことをんやそれこころみつるよりくちいはるるものなればなり
  35.  よきひとこころよきくらよりよきものをいだあしきひとはそのあしきくらよりあしきものをいだせり
  36.  われ爾曹なんぢらつげすべひとのいふところむなしきことば審判さばきこれうつたへざるを
  37.  それなんぢそのいふところのことばよりとせられまたそのいふことばよりつみありとせらるるなり
  38.  このときある學者がくしやとパリサイのひとこたへいひけるは休徴しるしをなして我儕われらせんことをなんぢねが
  39.  こたへ彼等かれらいひけるは奸惡かんあくなる休徴しるしもとむされど預言者よげんしやヨナの休徴しるしほかこれ休徴しるしあたへられじ
  40.  それヨナが三日みつかうをはらなかありごとひと三日みつかなかあるべし
  41.  ニネベのひと審判さばきともたちいまつみさだめん彼等かれらはヨナのをしへよりくいあらためたりそれヨナよりおほいなるものここにあり
  42.  みなみ女王によわうさばきのともたちいまつみさだめんかれはてよりソロモンの智慧ちゑきかんとてきたれりそれソロモンよりおほいなるものここにあり
  43.  惡鬼あくきひとよりいでかわきたるところめぐ安息やすきもとむれどもずしていひけるは
  44.  いでいへかへらんすできたりしに空虚くうきよにしてはききよまかざれるを
  45.  つひゆきおのれよりもあしななつ惡鬼あくきたづさともいりここすまへばそのひとのち患状ありさままへよりもさらあしかるべしこのあしきもまたかくごとくならん
  46.  イエス人々ひとびとかたりをるときそのはは兄弟きやうだいかれにものいはんとてそとたちければ
  47.  あるひとイエスにいひけるはなんぢはは兄弟きやうだいなんぢにものいはんとしてひとたて
  48.  イエスつげものこたへいひけるはわがははたれわが兄弟きやうだいたれぞや
  49.  のべその弟子でしさしいひけるはこれわがははわが兄弟きやうだいなり
  50.  そはすべててんいまちちむねおこなものこれわが兄弟きやうだいわが姉妹しまいわがははなればなり

第十三章

  1.  當日このひイエスいへいで海邊うみべせしに
  2.  おほく人々ひとびとかれあつまきたりければイエスはふねのりすべて人々ひとびときしたて
  3.  イエスたとへ多端さまざまこと人々ひとびとかたりたねまくものまきいでしが
  4.  まけるときみちほとりおちたねあり空中そらとりきたりてついばつくせり
  5.  またつちうすき磽地いしぢおちたねありただち萌出はえいでたれど
  6.  いでしときやかれしかばなきがゆゑかれたり
  7.  またいばらなかおちたねありいばらそだちてこれふさげり
  8.  また沃壤よきちおちたねありむすべることあるひひやくばいあるひは六十ろくじふばいあるひは三十さんじふばいせり
  9.  みみありてきこゆるものきくべし
  10.  弟子でしたちきたりてかれいひけるは何故なにゆゑたとへをもて彼等かれらかたたまふや
  11.  こたへいひけるは爾曹なんぢらには天國てんこく奧義おくぎしることをあたへたまへど彼等かれらにはあたたまはざればなり
  12.  それもてものあたへられてなほあまりあり無有もたぬものはそのもてものをもとらるるなり
  13.  彼等かれらてもききてもきかさとらざるがゆゑわれたとへ彼等かれらかたれり
  14.  イザヤの預言よげん爾曹なんぢらきけどもさとらずみれども
  15.  そはこのたみにてみみにてききこころにてさとあらためめてわれいやされんことをおそれそのこころにぶくみみおほとぢたりといひしにかなへり
  16.  され爾曹なんぢら爾曹なんぢらみみきくゆゑさいはひなり
  17.  われまこと爾曹なんぢらつげおほく預言者よげんしや義人ただしきひと爾曹なんぢらみるところをんとしたりしがみることを爾曹なんぢらきくところをきかんとしたりしがきくことをざりき
  18.  ゆゑ爾曹なんぢら播種たねまきたとへきけ
  19.  天國てんこくをしへききさとらざれば惡鬼あしきものきたりてそのこころまかれたるたねうばこれみちほとりまきたるたねなり
  20.  磽地いしぢまかれたるたねこれをしへききすみやかによろこうくれども
  21.  おのれなければ暫時しばしのみをしへため患難くわんなんあるひはせめらるることおこときたちまみちつまづものなり
  22.  またいばらなかまかれたるたねこれをしへきけどもこの思慮こころづかひ貨財たからまどひをしへふさがれてみのらざるものなり
  23.  沃壤よきちまかれたるたねこれをしへききさとむすぶことあるひひやくばいあるひは六十ろくじふばいあるひは三十さんじふばいするものなり
  24.  またたとへ彼等かれらしめしていひけるは天國てんこくひとはたけよきたねまくたり
  25.  人々ひとびといねたるうちそのあだきたりむぎなか稗子からすむぎまきされ
  26.  なへはえいでみのりたるとき稗子からすむぎあらはれたり
  27.  主人あるじしもべきたりていひけるはしゆはたけにはよきたねまかざりしか如何いかにして稗子からすむぎある
  28.  しもべいひけるは敵人あだびとこれをなせしもべ主人あるじいひけるはしからば我儕われらゆきてこれぬきあつむるはよき
  29.  いなおそらくは爾曹なんぢら稗子からすむぎぬきあつめんとてむぎをもともぬくべし
  30.  收穫かりいれまでふたつながらそだておけわれかりいれのときまづ稗子からすむぎぬきあつめ(※4)てやかためこれつかむぎをばわがくらをさめよとかるものいは
  31.  またたとへ彼等かれらしめいひけるは天國てんこく芥種からしだねごとひとこれをとりはたけまけ
  32.  よろづたねよりはちひさけれどもそだちてはほかくさよりおほいにして天空そらとりきたりそのえだ宿やどるほどのとなるなり
  33.  またたとへ彼等かれらかたりけるは天國てんこくぱんだねごとをんなこれをとりさんなかかくせばことごと脹發ふくれいだすなり
  34.  イエスたとへをもてすべ此等これらこと衆人ひとびとかたりたまへりたとへにあらざればかたたまはず
  35.  これ預言者よげんしやよりわれたとへまうけくちひらはじめよりかくれたることいひいださんといはれたるにかなはせんためなり
  36.  つひにイエス衆人ひとびとかへしていへいれその弟子でしきたりていひけるははたけ稗子からすむぎたとへ我儕われらときたまへ
  37.  これこたへいひけるはよきたねまくものひとなり
  38.  はたけはこの世界せかいなりよきたねこれ天國てんこく諸子こどもなり稗子からすむぎ惡魔あくま子類こどもらなり
  39.  これをまくあだ惡魔あくまなり收穫かりいれをはりなりかるものてん使つかひたちなり
  40.  稗子からすむぎあつめやかるごとこのをはりおいてもかくごとくなるべし
  41. ひとその使者つかひたちをつかはしてそのくにうちよりすべ躓礙つまづきとなるものまたあくをなすひとあつめ
  42.  これなげいるべし其處そこにて哀哭かなしみ切齒はがみすることあら
  43.  このときただしきひとそのちちくにおいごとかがやかんみみありてきこゆるものきくべし
  44.  また天國てんこくはたけかくれたるたからごとひとみいださばこれかくよろこかへその所有もちものことごとうりてそのはたけかふなり
  45.  また天國てんこくよき眞珠しんじゆもとめんとする商人あきびとごと
  46.  ひとつあたひたかき眞珠しんじゆ見出みいださばその所有もちものことごとうりこれかふなり
  47.  また天國てんこくうみうち各樣さまざまうををとるあみごと
  48.  すでみつればきしひきあげすわりよきものをうつはにいれあしきものをすつるなり
  49.  をはりおいてもかくごとくならんてん使つかひたちいでてただしきものうちよりあしきものとりわけ
  50.  これなげいるべし其處そこにて哀哭かなしみ切齒はがみすることあら
  51.  イエス彼等かれらいひけるはこのことみなさとりしやかれいひけるはしゆしかり
  52.  イエス彼等かれらいひけるはさら天國てんこくについてをしへられたる學者がくしやあたらしものふるものとをそのくらよりいだいへあるじごと
  53.  イエスこのたとへいひをはりここさり
  54.  その故土ふるさとにいたり會堂くわいだうにてをしへしに人々ひとびとあやしいひけるはこのひと智慧ちゑふしぎなるわざ何處いづこよりきたるや
  55.  これ木匠たくみあらずやそのはははマリアその兄弟きやうだいはヤコブ、ヨセ、シモン、ユダにあらずや
  56.  そのいもうとたちみな我儕われらともあるあらずやしかるにこのひとすべ此等これらこと何處いづこよりきたりしや
  57.  つひいとふこれすつイエス彼等かれらいひけるは預言者よげんしやその故土ふるさとそのいへほかおいたふとまれざることなし
  58.  彼等かれらしんずることなきによりおほくふしぎなるわざここなしたまはざりき

第十四章

  1.  そのころ分封わけもちきみヘロデ、イエスの聲名うはさきき
  2.  そのしもべいひけるはこれバプテスマのヨハネなりかれよりよみがへりたりゆゑふしぎなるわざおこなふなり
  3.  さきにヘロデその兄弟きやうだいピリポのつまヘロデヤのことよりてヨハネをとらしばりひとやいれたり
  4.  はヨハネ、ヘロデにこのをんなめとるはよろしからずといひしによる
  5.  かれヨハネをころさんとおもへたみこれを預言者よげんしやとするにより彼等かれらおそれたりしが
  6.  ヘロデ誕生たんじやういはへるときヘロデヤのむすめその座上ざじやうにてまひをなしヘロデをよろこばせければ
  7.  いかなるものにてももとめまかせあたへんとヘロデこれちかひたり
  8.  むすめそのははすすめありしによりバプテスマのヨハネのくびぼんのせここたまはれといふ
  9.  わううれへけれどもすでちかひたるとせきつらなれるものためあたふることをめい
  10.  すなはひとつかはひとやおいてヨハネのくびきら
  11.  そのくびぼんのせむすめあたへければむすめこれそのははささげたり
  12.  ヨハネの弟子でしたちきたりてしかばねとりてこれをはうむゆきてイエスにつぐ
  13.  イエスこれをききひとをさけふねのり其處そこさりさびしきところゆきたまひしが衆人ひとびとききて歩行かちにてかれしたがへり
  14.  イエスいでおほくひとこれあはれそのやめものいやせり
  15.  くるるときその弟子でしきたりていひけるはここ寂寞さびしきところにしてときもはやおそ諸邑むらむらゆきみづかしよくもとめさせんため人々ひとびとさらしめよ
  16.  イエス彼等かれらいひけるは人々ひとびとゆかずともよし爾曹なんぢらこれしよくあたへ
  17.  こたへけるは我儕われらここにただいつつのパンとふたつうをあるのみ
  18.  イエスいひけるはそれここもちきた
  19.  つひ衆人ひとびとめいじてくさうへすわらしめいつつのパンとふたつうををとりてんあふぎしやしパンをわり弟子でしにあたふ弟子でしこれ衆人ひとびとあたへ
  20.  みなくらひあきそのあまりたるくづひろひしに十二じふにかごみちたり
  21.  くらひものをんな幼童こどもほかおほよせんにんなりき
  22.  やがてイエス衆人ひとびとかへさんとしてその弟子でししひふねにのせむかふきしさきわたらしむ
  23.  かく衆人ひとびとかへしければ祈禱いのりせんとてひそかやまのぼくれひとりそこにいませり
  24.  ふね海中わだなかあり逆風ぎやくふうためなみただよはさる
  25.  ごろイエスうみうへあゆみこれいたりしに
  26.  弟子でしそのうみうへあゆめるをおどろ變化へんげものならんといひおそさけびたり
  27.  イエスやが彼等かれらいひけるはこころやすかれわれなりおそるるなか
  28.  ペテロこたへいひけるはしゆなんぢならばわれめいみづふみなんぢもといたらしめよ
  29.  きたれいひたまひければペテロふねよりおりてイエスのもといたらんとてなみうへあゆみたれど
  30.  かぜはげきをおそれしづみかかりければしゆわれたすけたまへといふ
  31.  イエスやがのべこれとらへいひけるは信仰しんかううすきものなんうたがふや
  32.  ともふねのりければかぜしづまりぬ
  33.  ふねをりものちかよりてかれはいいひけるはまことなんぢかみなり
  34.  つひわたりてゲネサレのいたりしかば
  35.  そのところ人々ひとびとイエスをしりあまね四方しはうひとつかはすべやまひものたづさきたらしむ
  36.  ただそのころもすそさはらんことをイエスにねがへりさはりものすなはちみないやされたり

第十五章

  1.  ときにエルサレムの學者がくしやとパリサイのひとイエスにきたりいひけるは
  2.  なんぢ弟子でしいにしへひと遺傳つたへをかす何故なにゆゑそはしよくするときそのあらはざればなり
  3.  こたへ彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらまたなんぢらの遺傳つたへによりてかみいましめをかす何故なにゆゑ
  4.  それかみいましめてなんぢ父母ちちははうやままた父母ちちははののしものころさるべしと宣給のたまへり
  5.  しかるに爾曹なんぢらいひすべひと父母ちちははむかひなんぢをやしなべきものは禮物そなへものなりといは
  6.  その父母ちちははうやまはずともよしとすかく爾曹なんぢら遺傳つたへによりかみいましめむなしくせり
  7.  僞善者ぎぜんしやよイザヤはよくなんぢらについ預言よげん
  8.  このたみくちにてわれちかづくちびるにてわれうやまへどもそのこころわれとほざかり
  9.  ひといましめをしへとなしていたづらにわれはいすといへ
  10.  イエス人々ひとびとよび彼等かれらいひけるはききさと
  11.  くちいるものはひとけがさずくちよりいづるものはこれひとけがすなり
  12.  弟子でしきたりてイエスにいひけるはパリサイのひとこのことばききいとひすつるをなんぢしる
  13.  こたへいひけるはてんちちうゑざるものはみなぬかるべし
  14.  彼等かれらすておけ瞽者めしひてびきする瞽者めしひなりもしめしひのもの瞽者めしひてびきせば二人ふたりともみぞおつべし
  15.  ペテロ、イエスにこたへいひけるはこのたとへ我儕われらときたまへ
  16.  イエスいひけるは爾曹なんぢらいまさとらざる
  17.  すべくちいるものははらとほりかはやおつるをいましらざるか
  18.  くちよりいづるものはこころよりいづこれひとけがすものなり
  19.  そはこころよりいづところ惡念あくねん凶殺きやうさつ姦淫かんいん苟口こふがう盜竊とうせつ妄證ばうしよう謗讟はうとく
  20.  此等これらひとけがすものなりされどもあらはずしてくらふはひとけがさず
  21.  イエスここさりてツロとシドンのゆきけるに
  22.  そのすめるカナンのをんないでてよばはりいひけるはしゆよダビデのわれあはれたまわがむすめおにつかれていたくるしめり
  23.  イエス一言ひとことかれこたへざりしかばその弟子でしきたりこふいひけるは我儕われらあとよりよばはるがゆゑかれさらたま
  24.  こたへいひけるはイスラエルのいへまよへるひつじほかわれつかはされず
  25.  をんなきたりはいしていひけるはしゆわれたすけたまへ
  26.  こたへけるは兒女こどものパンをとりいぬなげあたふるはよろしからず
  27.  をんないひけるはしゆしかりされどいぬもその主人しゆじんぜんよりおつくづくらふなり
  28.  つひにイエスこたへいひけるはをんななんぢ信仰しんかうおほいなりねがひごとなんぢなるべしこのときよりそのむすめいえたり
  29.  イエスここさりガリラヤの海邊うみべにゆきやまのぼりてせり
  30.  おほく人々ひとびと跛者あしなへ瞽者めしひ瘖者おふし殘缺者かたはおよび各樣さまざま疾病やまひあるものともなひきたりイエスの足下あしもとおきければすなはこれいやしぬ
  31.  ここおい瘖者おふしはものいひ殘缺かたははいえ跛者あしなへはあゆみ瞽者めしひたるを人々ひとびとあやしみイスラエルのかみあがめたり
  32.  イエスその弟子でしよびいひけるはわれこの衆人ひとびとあはれ彼等かれらわれとともをること三日みつかにしてくらふものなしうゑさせてさらしむることをこのまおそらくは途間みちにてなやま
  33.  その弟子でしかれにいひけるはにてこのおほくのひとあかするほどのパンを何處いづこよりんや
  34.  イエス彼等かれらいひけるはパン幾何いくつあるやこたへけるはななつ些少すこしうをあり
  35.  イエス人々ひとびとめいじてすわらしめ
  36.  ななつのパンとうをとりしやこれわりその弟子でしあたへしかば弟子でしこれを人々ひとびとあた
  37.  くらふてみなあきたりあまりくづひろひしにななつかごみて
  38.  これくらへるものをんな孩子こどもほかせんにんありき
  39.  イエス人々ひとびとさらしめふねのりてマグダラのさかひいたれり

第十六章

  1.  パリサイとサドカイのひときたりてイエスをこころみんとててん休徴しるし我儕われらせよといひければ
  2.  彼等かれらこたへけるは爾曹なんぢらゆふべには夕紅ゆふやけよりはれならんといひ
  3.  あしたには朝紅あさやけまたくもりより今日けふあめならんといふ僞善者ぎぜんしやそら景色けしきわかつことをしりとき休徴しるしわかあたはざる
  4.  姦惡かんあくなる休徴しるしもとむるとも預言者よげんしやヨナの休徴しるしのほか休徴しるしあたへられじつひ彼等かれらはなれてさり
  5.  その弟子でしむかふのきしいたりしにパンをたづさふることをわすれたり
  6. イエス彼等かれらいひけるは戒心こころしてパリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつつしめよ
  7. 弟子でしたがひにろんじていひけるはこれパンをたづさへざりしゆゑならん
  8.  イエスこれをしりいひけるは信仰しんかううすきものなんたがひにパンをたづへざりしことをろんずる
  9.  いまさとらざるかせんにんいつつのパンをあたへしときいくかごひろひし
  10.  またせんにんななつのパンをあたへしときいくかごひろひしや爾曹なんぢらこれをおぼえざるか
  11.  パリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつつしめとはパンにつきていへるにあらざるをなんさとらざる
  12.  ここおい弟子でしその麪酵ぱんだねにはあらでパリサイとサドカイのひとをしへつつしめといへるなるをさとれり
  13.  イエス、カイザリヤ、ピリピのかたいたりしときその弟子でしとふいひけるは人々ひとびとひとたれいふ
  14.  彼等かれらいひけるはあるひとはバプテスマのヨハネあるひとはエリヤあるひとはエレミヤまた預言者よげんしや一人ひとりなりといへ
  15.  彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらわれいひたれとする
  16.  シモン、ペテロこたへけるはなんぢはキリストいけるかみなり
  17.  イエスこたへかれいひけるはヨナのシモンなんぢさいはひなりそは血肉けつにくなんぢにしめせるにあらてんいまわがちちなり
  18.  われまたなんぢつげなんぢはペテロなり教會けうくわいをこのいはうへたつべし陰府よみもんこれかつべからず
  19.  またわれ天國てんこくかぎなんぢあたへんなんぢおいつなぐことはてんおいてもつなぎなんぢがおいとくことはてんおいてもとくべし
  20.  つひその弟子でしいましめけるはわれをキリストとひとつぐることなか
  21.  このときよりイエスその弟子でしおのれのエルサレムにゆき長老としより祭司さいしをさ學者がくしやたちよりおほくくるしみをうけかつころされ第三日みつかめよみがへなどなすべきことしめはじ
  22.  ペテロ、イエスをひきとめてしゆよからずこのことなんぢきたるまじといひければ
  23.  イエス反顧ふりかへりてペテロにいひたまひけるはサタンよわがうしろ退しりぞなんぢわれつまづものなりそれなんぢかみことおもはずひとことおもへり
  24.  このときイエスその弟子でしいひけるはもしわれしたがはんとおもものおのれすてその十字架じふじかおひわれしたが
  25.  そは生命いのち保全まつたうせんとするものこれうしなわがためにその生命いのちうしなものこれべければなり
  26.  もしひと全世界せかいぢううるともその生命いのちうしなはばなんえきあらんまたひとなにをその生命いのちかへんや
  27.  それひとちち榮光えいくわうその使つかひたちともきたらんそのときおのおののおこなひよりむくゆべし
  28.  まこと爾曹なんぢらつげひとそのくにきたるをみるまではここたつもののなかしなざるものあるべし

第十七章

  1. 六日むいかのちイエス、ペテロ、ヤコブその兄弟きやうだいヨハネをともなひとさけたかきやまのぼたまひしが
  2.  彼等かれらまへにてその容貌すがたかはりそのかほごとかがやそのころもしろひかれり
  3.  モーセとエリヤあらはれてイエスとともかたり
  4. ペテロこたへてイエスにいひけるはしゆ我儕われらここにをるよしもし尊旨みこころかなはば我儕われらみついほりつくらせたまへひとつしゆのためひとつはモーセのためひとつはエリヤのためにせん
  5.  如此かくいへるときかがやけるくもかれらをおほこゑくもよりいでいひけるはわがこころかなふわが愛子あいしなり爾曹なんぢらこれにきくべし
  6.  弟子でしこれをききおほいにおそれたふふしたり
  7. イエスきたりて彼等かれらつけおきよおそるるなかれといひければ
  8.  そのあげしにただイエスのほか一人ひとりをもざりき
  9.  やまくだときにイエス彼等かれらめいじてひとよりよみがへるまでは爾曹なんぢらことひとつぐべからずといへ
  10.  その弟子でしとふていひけるはさらばエリヤはさききたるべしと學者がくしやいへるはなんぞや
  11.  イエスこたへいひけるはにエリヤはきたり萬事ばんじあらたむべし
  12.  されわれなんぢらにつげんエリヤはすできたりしにひとこれをしらずただこころままかれあしらへりかくごとひともまた彼等かれらより苦難くるしみうくべし
  13.  ここおい弟子でしバプテスマのヨハネをさしいひたまへるをさとれり
  14.  彼等かれらおほくのひとをるところにきたりしにあるひとイエスのもとにきたりひざまづ
  15.  いひけるはしゆわがあはれみたまへ癲癇てんかんにて屡々しばしばたふみづたふはなはくるしめり
  16.  これなんぢ弟子でしつれゆきたれどいやすことをざりき
  17.  イエスこたへいひけるはああしんなきまがれるなるかなわれ何時いつまで爾曹なんぢらともをらんやわれいつまで爾曹なんぢらしのばんやかれわがもとにつれきた
  18.  つひにイエスおにいましたまへばおにいでてそのこのときよりいえたり
  19.  そのとき弟子でしひそかにイエスにきたいひけるは我儕われらこれをおひいだすことあたはざりしは何故なにゆゑ
  20.  イエス彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらしんなきがゆゑなりわれまことに爾曹なんぢらつげんもし芥種からしだねごとしんあらばこのやま此處ここより彼處かしこうつれといふともかならうつらんまたなんぢらにあたはざることなかるべし
  21.  されこのたぐひ祈禱いのり斷食だんじきあらざればいづることなし
  22.  ガリラヤを周流めぐれるときイエス彼等かれらいひけるはひとひとわたされ
  23.  かつころされて第三日みつかめよみがへるべし弟子でしこれをききはなはかなしめり
  24.  彼等かれらカペナウンにきたれるとき納金をさめきんあつむものどもペテロにきたりいひけるは爾曹なんぢら納金をさめきんいださざる
  25.  しからずといひてペテロいへいりしときイエスまづかれいひけるはシモンなんぢ如何いかにおもふや世界せかいわうたちはぜいおよびみつぎたれよりとるおのれよりかほかものよりか
  26. ペテロかれいひけるはほかひとよりとるなりイエスかれいひけるはさらかかはることなし
  27. され彼等かれらつまづかせざるためなんぢうみゆきつりたれはじめにつるうをとりてそのくちひらかばきんひとつべしそれとりわれなんぢため彼等かれらをさめ

第十八章

  1. そのとき弟子でしイエスにきたりいひけるは天國てんこくおいおほいなるものたれぞや
  2.  イエス嬰兒をさなごよびかれらのなかたて
  3. いひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげんもしあらたまりて嬰兒をさなごごとくならずば天國てんこくいるることを
  4. されおほよそこの嬰兒をさなごごとみづかへりくだものはこれ天國てんこくおいおほいなるものなり
  5. またわがためかくごと一人ひとり嬰兒をさなごうくものわれうくるなり
  6. されわれしんずるこの小子ちひさきもの一人ひとりつまづかするもの磨石ひきうすをそのくびかけられてうみふかみしづめられんかたなほえきなるべし
  7. このわざはひなるかなそはつまづかすることをすればなりつまづことかならきたらんされつまづききたらすものわざはひなるかな
  8. なんぢなんぢのあしおのれをつまづかさばきりこれすて兩手りやうて兩足りやうあしありてつきざるなげいれられんよりはあしなへまたは殘缺かたはにていのちいるよきなり
  9. なんぢおのれをつまづかさばぬきいだしてこれすて兩眼りやうめありて地獄ぢごくなげいれれられんよりは一眼かためにていのちいるよきなり
  10. 爾曹なんぢらこの小子ちひさきもの一人ひとりをもつつしみて輕視あなどるなかれわれなんぢらにつげ彼等かれらてん使者つかひてんにありててんいまわがちちかほつねみればなり
  11.  それひとほろびたるものすくはんためきたれり
    爾曹なんぢらいかにおもふやひともし百匹ひやくぴきひつじあらんにその一匹いつぴきまよはばじふやまおきゆきてまよひひとつたづねざる
  12. もしたづねてこれあはわれまことに爾曹なんぢらつげまよはざるじふものよりもなほそのひとつよろこば
  13. かくごとくこの小子ちひさきもの一人ひとりほろぶるはてんいま爾曹なんぢらちち尊旨みこころあら
  14.  もし兄弟きやうだいなんぢにつみをかさばそのひとりあるときゆきいさめよもしなんぢことばきかばその兄弟きやうだいべし
  15.  もしきかずばりやう三人さんにんくちよりあかしをなしすべてことばさだめんがため一人ひとり二人ふたりともなゆけ
  16.  もし彼等かれらにもきかずば教會けうくわいつげよもし教會けうくわいきかずばこれ異邦人いはうじんかつ税吏みつぎとりのごときものとすべし
  17. われまことに爾曹なんぢらつげおほよ爾曹なんぢらおいつなぐことはてんおいてもつなぎ爾曹なんぢらおいとくことはてんおいてとくべし
  18. われまた爾曹なんぢらつげんもし爾曹なんぢらのうち二人ふたりのものおいこころあは何事なにごとにてももとめてんいまわがちち彼等かれらためこれなしたまふべし
  19. そはわがため三人さんにんあつまれるところにはわれそのうちあればなり
  20. そのときペテロ、イエスにきたりていひけるはしゆ幾次いくたびまでわが兄弟きやうだいわれつみをかすゆるすべきかななたびまで
  21.  イエスかれいひけるはなんぢななたびとはいはななたびしちじふばいせよ
  22. このゆゑ天國てんこくわうそのけらい會計くわいけい調しらべんとするがごと
  23. 調しらはじめしとき千萬せんまんきん負債ひきおひしたるものわうひききたりしに
  24. つくのかたなかりければこれめいじてそのその妻孥つまことあらゆる所有もちものをみなうりつくのへといへ
  25.  そのけらいひれふしてはいいひけるはこふわれをゆるくたまはばみなつくのふべし
  26. ここおいてそのけらいしゆあはれみてこれときその負債ひきおひゆるしたり
  27. そのけらいいでておのれよりぎん一百いつぴやく負債ひきおひしたるともあひければこれとらのんどをとり負債ひきおひかへせといふ
  28.  そのとも足下あしもと俯伏ひれふしねがひいひけるはわれゆるくたまはばみなつくのふべし
  29. しかるにこれうけがはずしてゆきその負債ひきおひつくのふまでかれひとやいれ
  30. ほかともそのなせことはなはかなしゆきこのことみなそのしゆつげしかば
  31. しゆかれをよびいひけるはあしけらいなんぢわれにねがひしによりわれその負債ひきおひことごとゆるしたり
  32. われなんぢをあはれみしごとなんぢまたともあはれむべきにあらずや
  33.  そのしゆいかりて負債ひきおひをみなつくのふまでかれ獄吏ひとやつかさわたせり
  34. もしおのおのそのこころより兄弟きやうだいゆるさずばてんちちまたなんぢらにかくごとなしたまふべし

第十九章

  1.  イエス此等これらこといひをはりしときガリラヤをさりてヨルダンのむかふユダヤのさかひいたりけるに
  2. おほく人々ひとびとしたがひしかばこのところにて彼等かれらいやたまへり
  3.  パリサイのひときたりてイエスをこころいひけるはひとなにのゆゑかかはらずそのつまいだすはよき
  4. こたへ彼等かれらいひけるは元始はじめひとつくたまひしものこれ男女なんによつくれり
  5. このゆゑひと父母ちちはははなれてそのつまあひ二人ふたりのもの一體いつたいなるなりといへるをいまよまざるか
  6. さればはやふたつにはあら一體いつたいなりかみあはたまへるものひとこれをはなすべからず
  7.  イエスにいひけるはされ離縁状りえんじやうあたへつまいだせとモーセがめいぜしはなんぞや
  8. 彼等かれらいひけるはモーセは爾曹なんぢらこころ不情つれなきよりつまいだすことをゆるしたるなりされど元始はじめ如此かくあらざりき
  9. われなんぢらにつげんもし姦淫かんいんゆゑならでそのつまいだほかをんなめともの姦淫かんいんおこなふなりまたいだされる婦人をんなめともの姦淫かんいんおこなふなり
  10. 弟子でしたちイエスにいひけるはひとつまおいかくごとくばめとららざるにしか
  11. 彼等かれらいひけるはこのことばひとみなうけいるることあたはずたださづけられたるもののみこれなしうべし
  12. それはははらより生來うまれつきたる寺人じじんありまたひとにせられたる寺人じじんありまた天國てんこくためみづからなれる寺人じじんありこれうけいるることをうるものはうけいるべし
  13. そのとき人々ひとびとイエスのつけいのらんことをねが嬰兒をさなごかれつれきたりければ弟子でしこれとどめたり
  14. イエスいひけるは嬰兒をさなごゆるわれきたることをいましむるなか天國てんこくにをるものかくごとものなり
  15. すなは彼等かれらつけここさり
  16. あるひときたりてかれいひけるはよきわれかぎりなきいのちんがためにはなによきことなすべきか
  17. かれいひけるは何故なにゆゑわれをよきいふ一人ひとりほかよきものはなしすなはかみなり生命いのちいらんとおもはばいましめまもるべし
  18. かれこたへけるはなにかイエスいひけるはころなか姦淫かんいんするなかぬすなかいつはりのあかしたつなか
  19. なんぢちちははうやままたおのれごとなんぢとなりあいすべし
  20. わかきものかれにいひけるはこれみなわれいとけなきよりまもれるものなりなにかけたるところわれにある
  21.  イエスかれいひけるはまつたからんことおもはばゆきなんぢ所有もちものうりまづしきものほどこさすればてんおいたからあらんしかしてきたわれしたが
  22. わかきものこのことばききうれさりかれ産業さんげふおほいなりければなり
  23.  イエスその弟子でしいひけるはまこと爾曹なんぢらつげとめるもの天國てんこくいることかた
  24.  また爾曹なんぢらつげとめるものかみくにいるよりは駱駝らくだはりあな穿とほるはかへつやす
  25. 弟子でしこれききいたおどろいひけるはさらたれすくひうくべき
  26.  イエス彼等かれらいひけるはこれひとにはあたはざるところなりされかみにはあたはざるところなし
  27. このときペテロこたへてイエスにいひけるは我儕われら一切いつさいすてなんぢしたがへりされなにべき
  28.  イエス彼等かれらいひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげわれしたがへる爾曹なんぢらあらたまりひと榮光えいくわうくらゐするときなんぢらも十二じふにくらゐしてイスラエルの十二じふに支派わかれさばくべし
  29. すべわがため家宅いへあるひは兄弟きやうだいあるひは姉妹しまいあるひはちちあるひはははあるひはつまあるひはあるひは田疇たはたすつものひやくばいうけかつかぎりなきいのちつが
  30. おほくさきなるものあとになりあとなるものさきになるべし

第二十章

  1.  それ天國てんこくあさはやくいで葡萄園ぶだうばたけ工人はたらくものやと主人あるじごと
  2. 工人はたらくものには一日いちにちぎんいちまい予へあたんと約束やくそくをなし彼等かれら葡萄園ぶだうばたけつかはせり
  3.  またごろいでちまたむなしたてもの
  4. 爾曹なんぢら葡萄園ぶだうばたけにゆけ相當さうたうあたひあたへんと彼等かれらいひければすなはゆけ
  5.  また十二じふにさんごろいでまへごとなせ
  6. ごろいでまたほかのたてものあひいひけるはなにゆゑ終日ひねもすここにむなしたつ
  7. これこたへいひけるは我儕われらやとものなきによりてなり彼等かれらいひけるは爾曹なんぢら葡萄園ぶだうばたけにゆけ相當さうたうあたひべし
  8. くるるとき葡萄園ぶだうばたけ主人あるじその家宰いへつかさいひけるは勞力はたらきたるものどもよびのちやとへるものはじめとしさきものにまであたひはらへよ
  9. ごろやとはれしものどもきたりてぎんいちまいづつをうけたり
  10. さきものどもきたりて我儕われらおほうくるならんとおもひしにまたぎんいちまいづつをうく
  11. これをうけ主人あるじうらみみつぶやきけるは
  12. この後至者のちのもの勞力はたらきたるはいちばかりなるに終日ひねもすくるしみをおひあつさにあへ我儕われらひとしくこれをなせり
  13. 主人あるじその一人ひとりこたへいひけるはともわれなんぢに不義ふぎをせずなんぢぎんいちまい約束やくそくをなしたるにあらずや
  14. なんぢのものをとりゆけわれまたこの後至者のちのものにもなんぢごとあたふべし
  15. わがものわがおもふごとなすよからずわがよきよりなんぢあしき
  16. かくごとあとものさきさきものあとになるべしそれよばるるものおほしといへどえらばるるものすくなし
  17.  イエス、エルサレムにのぼるとき途間みちにてひとはな十二じふに弟子でしともなひて彼等かれらいひけるは
  18. 我儕われらエルサレムにのぼひと祭司さいしをさ學者がくしやたちわたされん彼等かれらこれを死罪しざいさだ
  19.  また凌辱なぶりむちう十字架じふじかつけため異邦人いはうじんわたすべしまた第三日みつかめよみがへるべし
  20. そのときゼベダイのたちははそのともにイエスにきたはいしてかれもとむることありければ
  21. これいひけるはなにねがふかイエスにいひけるはこの二人ふたりわがなんぢくにおい一人ひとりなんぢみぎ一人ひとりなんぢひだりすわることをめいぜよ
  22.  イエスこたへいひけるは爾曹なんぢらねがふところをしら爾曹なんぢらのまんとするさかづきをのみまたわがうけんとするバプテスマをうけるや彼等かれらいひけるはよくすべし
  23.  イエス彼等かれらいひけるはまこと爾曹なんぢらさかづきのみまたわがうくるバプテスマをうくべしされ右左みぎひだりすわることはあたふべきにあらただわがちちそなへられたるものあたへらるべし
  24. 十人じふにん弟子でしこれをきき二人ふたり兄弟きやうだいいきどほれり
  25.  イエス彼等かれらよびいひけるは異邦いはう領主りやうしゆはそのたみつかさどり大人おほいなるものどもは彼等かれらうへけんとるこれ爾曹なんぢらしるところなり
  26. され爾曹なんぢらうちにてはしかすべからず爾曹なんぢらのうちおほいならんとおももの爾曹なんぢらつかはるるものとなるべし
  27.  また爾曹なんぢらのうちかしらたらんとおももの爾曹なんぢらしもべとなるべし
  28. かくごとひときたるもひとつかためにはあらかへつひとつかはれまたおほくのひとかはり生命いのちあたへそのあがなひとならんためなり
  29. 彼等かれらエリコをいでときおほくの人々ひとびとイエスにしたがへり
  30. 二人ふたり瞽者めしひみちかたはらすわりをりしがイエスのすぐるときき呼叫さけびいひけるはダビデのしゆ我儕われらあはれたま
  31. 衆人ひとびとこれにしづまれといましむれどもいよいよさけびいひけるはダビデのしゆ我儕われらあはれみたまへ
  32.  イエス立止たちどまりこれよびいひけるは爾曹なんぢらわれになにられんとねがふや
  33.  イエスにいひけるはしゆ我儕われらひらかんことをねが
  34.  イエスあはれみてそのつけければただちみることをイエスにしたがへり

第二十一章

  1.  かれら橄欖山かんらんざんのベテパゲにいたりエルサレムにちかづけるときイエス二人ふたり弟子でしつかはさんとして
  2. 彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらむかふのむらゆけやがてつなぎたる驢馬ろばそのともにあるにあはそれときわれひききたれ
  3. もしなんぢらになにとかいふものあらばしゆようなりといへさらばただちこれつかはすべし
  4. 預言者よげんしやことばなんぢわう柔和にうわにして驢馬ろばすなはち驢馬ろばのりなんぢにきたるとシヲンのむすめつげよと
  5. いへるにかなはせんため如此かくなせるなり
  6. 弟子でしゆきてイエスのめいぜしごとくなし
  7. 驢馬ろばそのひききたりおのれころもをそのうへおきければイエスこれにのれ
  8. 衆人ひとびとおほくはそのころもみちしきあるひは樹枝きのえだきりみちしき
  9. かつまへにゆきあとしたが人々ひとびとよびいひけるはダビデのホザナよしゆよりきたものさいはひなり至上いとたかきところにホザナよ
  10.  イエス、エルサレムにいたれるとき都城みやここぞりて竦動さわだちいひけるはこれたれぞや
  11. 衆人ひとびといひけるははガリラヤのナザレよりいでたる預言者よげんしやイエスなり
  12.  イエスかみ殿みやいりそのうちなるすべて賣買うりかひするものおひいだ兌銀者りやうがへするものだい鴿はとをうるもの椅子こしかけたふ
  13. 彼等かれらいひけるはわがいへ祈禱いのりいへとなへらるべしとしるさるしかるに爾曹なんぢらこれを盜賊ぬすびととなせり
  14. 瞽者めしひ跛者あしなへ人々ひとびと殿みやいりてイエスにきたりければこれいやしぬ
  15. 祭司さいしをさ學者がくしやたちそのなしたまへる奇事ふしぎなるわざまた兒童輩こどもら殿みやにてよばはりダビデのホザナよといふききいかりふくみ
  16. イエスにいひけるは彼等かれらいふことをきくやイエスこたへいひけるはしか嬰兒をさなご乳哺者ちのみごくち讚美さんびそなへたりとしるされしをいまよまざる
  17. つひ彼等かれらはな都城みやこいでてベタニヤにゆきそこに宿やどれり
  18. あくるあさ都城みやこかへるときうゑければ
  19. みちほとりにあるひとつ無花果いちじくそのところきたりしにほかなにみえざりしかばいまよりのち永久いつまでむすぶことをざれとこれいひたまひければ無花果いちじく立刻たちどころかれ
  20. 弟子でしこれをあやしいひけるは無花果いちじくかるることいかはやき
  21.  イエスこたへ彼等かれらいひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげんもし信仰しんかうありてうたがはずばこの無花果いちじくおけるがごときのみならずこのやまめいここよりうつされてうみいれよといふともまたなら
  22. かつなんぢらしんじていのらばねがところことごとくべし
  23.  イエス殿みやいりをしへたるとき祭司さいしをさおよびたみ長老としよりたちきたいひけるはなに權威けんゐこのことをなすやたがこの權威けんゐなんぢあたへしや
  24.  イエスこたへ彼等かれらいひけるはわれ一言ひとことなんぢらにとはわれにそのことつげなばわれなに權威けんゐをもてこれなすといふことを爾曹なんぢらいふべし
  25.  ヨハネのバプテスマは何處いづこよりぞてんよりかひとよりか彼等かれらたがひにろんいひけるはてんよりといはさらなにゆゑしんぜざるかといは
  26.  もしひとよりといは我儕われらたみおそそはみなヨハネを預言者よげんしやすればなり
  27. つひこたへしらずといふイエス彼等かれらいひけるはわれなに權威けんゐこれなす爾曹なんぢらかたらじ
  28. 爾曹なんぢらいかにおもふやあるひと二人ふたりありしが長子あにきたりていひけるは今日けふわが葡萄園ぶだうばたけゆきはたら
  29. こたへいないひしがのちくいゆきたり
  30.  また次子おとうとにもまへごといひけるにこたへきみわれゆくべしといひしがつひゆかざりき
  31. この二人ふたりのものいづれちちむねしたがひし彼等かれらいひけるは長子あになりイエス彼等かれらいひけるはまこと爾曹なんぢらつげ税吏みつぎとりおよび娼妓あそびめ爾曹なんぢらよりさきかみくにいるべし
  32. それヨハネただしきみちをもてきたりしに爾曹なんぢらこれをしんぜず税吏みつぎとり娼妓あそびめこれしんじたり爾曹なんぢらこれをてなほくいあらためずかれしんぜざりき
  33.  またひとつたとへきけあるいへ主人あるじ葡萄園ぶだうばたけつくまがきめぐらしそのなか酒榨さかぶねをほりものみをたて農夫のうふかしほかくにゆきしが
  34. 果期みのりどきちかづきければそのとらためしもべ農夫のうふのもとにつかはせり
  35. 農夫のうふどもそのしもべたちとら一人ひとりむちう一人ひとりころ一人ひとりいしにてうて
  36.  またほかしもべまへよりもおほつかはしけるにこれにもまへごとくなせり
  37. わがうやまふならんといひつひそのつかはししに
  38. 農夫のうふどもそのたがひいひけるは嗣子あとつぎなりいでこれをころしてその産業さんげふをもとるべしと
  39. すなはこれとら葡萄園ぶだうばたけよりおひいだしてころせり
  40. され葡萄園ぶだうばたけ主人あるじきたらんときにこの農夫のうふなになすべき
  41. 彼等かれらイエスにいひけるは此等これら惡人あしきものいたうちほろぼときおよびてそのをさむほか農夫のうふ葡萄園ぶだうばたけかしあたふべし
  42.  イエス彼等かれらいひけるは聖書せいしよ工匠いへつくりすてたるいしいへすみ首石をやいしとなれりこれしゆなしたまへることにして我儕われらあやしとするところなりとしるされしをいまよまざる
  43. このゆゑわれなんぢらにつげかみくに爾曹なんぢらよりうばひそのむすたみあたへらるべし
  44.  このいしうへおつるものはやぶれこのいしのうへおつればそのものくだかるべし
  45. 祭司さいしをさたちおよびパリサイの人かれのたとへききおのれらをさしいへるをしり
  46.  イエスをとらへんとおもはかりしかどただたみおそれたりそは人々ひとびとかれを預言者よげんしやとすればなり

第二十二章

  1.  イエス彼等かれらこたへてまたたとへかたりけるは
  2.  天國てんこくあるわうそのため婚筵こんえんまうくるがごと
  3.  婚筵こんえんまねきおけるものむかへためしもべたちをつかはししかど彼等かれらきたることをこのまず
  4.  またほかのしもべつかはさんとしていひけるはふるまひすでにそなはれりうしまたこえたるけものをもほふりてことごとそなはりたれば婚筵こんえんきたれとまねきたるものいへ
  5.  しかれども彼等かれらかへりみずしてさりその一人ひとりおのれはたけにゆき一人ひとりおのれ貿易あきなひゆけ
  6.  ほかものどもはそのしもべとらはづかしめてころせり
  7.  わうこれをききいか軍勢ぐんぜいつかはしてそのころせるものほろぼまたそのまちやきたり
  8.  ここおいてそのしもべどもいひけるは婚筵こんえんすでにそなはれどもまねきたるものきやくとなるにたへざるものなれば
  9.  ちまたゆきあふほどのもの婚筵こんえんまね
  10.  そのしもべみちいでよきものをもあしきものをもあふほどのものことごとあつめければ婚筵こんえんきやく充滿じゆうまん
  11.  わうきやくんとてきたりけるにここ一人ひとり禮服れいふくざるものあるを
  12.  これいひけるはとも如何いかなれば禮服れいふくずして此處ここきたかれ默然もくねんたり
  13.  つひわうしもべいひけるはかれ手足てあししばりてそと幽暗くらきなげいだせ其處そこにて哀哭かなしみまた切齒はがみすることあら
  14.  それよばるるものおほしといへどえらばるるものすくなし
  15.  このときパリサイのひといでて如何いかにしてかかれいひあやまらせんとあひはか
  16.  その弟子でしとヘロデのともがらつかはしていはせけるはなんぢまことなるものなりまことをもてかみみちをしふまたたれにもかたよらざることを我儕われらしるそはかたちよりひととらざればなり
  17.  されみつぎをカイザルにをさむるはよきあしきなんぢいかにおもふか我儕われらつげ
  18.  イエスそのあくしりいひけるは僞善者ぎぜんしやなんわれこころむるや
  19.  みつぎ銀錢かねわれせよ彼等かれらデナリひとつをイエスにもちきたりしに
  20.  これいひけるはこのかたしるしたれ
  21.  こたへてカイザルなりといふここおいてイエス彼等かれらいひけるはさらばカイザルのものはカイザルにかへしまたかみものかみかへすべし
  22.  彼等かれらこれをききとしてイエスをさりゆけり
  23.  復生よみがへりなしといひなせるサドカイのひとこのイエスにきたりとふ
  24.  いひけるはよモーセのいへるにひともしなくしてしな兄弟きやうだいそのつまめとりてをうみ兄弟きやうだいあとつがすべしと
  25.  ここ我儕われらうち兄弟きやうだい七人しちにんありしがあにめとりてしになきがゆゑそのつま次子おとうとおくれり
  26.  そのそのさんそのしちまでみなしか
  27.  のちつひにをんなもまたしにたり
  28.  よみがへるときはこのをんな七人しちにんのうちたれつまなるべきかこれみなかれめとりものなればなり
  29.  イエスこたへ彼等かれらいひけるは爾曹なんぢら聖書せいしよをもかみ能力ちからをもしらざるによりあやまれり
  30.  それよみがへるときはめとらずとつがてんにあるかみ使つかひたちごと
  31.  しにものよみがへることにつきては爾曹なんぢらかみつげたまひしことば
  32.  われはアブラハムのかみイサクのかみヤコブのかみなりとあるをいまよまざるそもそもかみしにものかみあらいけものかみなり
  33.  人々ひとびとこれをききそのをしへおどろけり
  34.  イエス、サドカイのひとをしてくちふさがしめたりをききてパリサイのひとひとつところあつまりけるが
  35.  そのうちなるひとりの教法師けうはふしイエスをこころみんためとふいひけるは
  36.  律法おきてのうちいづれいましめおほいなる
  37.  イエスこたへけるはなんぢこころつく精神せいしんつくこころばせつくしゆなるなんぢかみあいすべし
  38.  これ第一だいいちにしておほいなるいましめなり
  39.  第二だいにまたこれにおなおのれごとなんぢとなりあいすべし
  40.  すべて律法おきて預言者よげんしやこのふたついましめよれ
  41.  パリサイのひとあつまれるときイエス彼等かれらとひいひけるは
  42.  爾曹なんぢらキリストについて如何いかにおもふこれたれなるか彼等かれらイエスにいひけるはダビデのなり
  43.  彼等かれらいひけるはさらばダビデみたまかんじて何故なにゆゑこれをしゆとなへしダビデいふ
  44.  しゆわがしゆいひけるはわれなんぢのてきなんぢ足凳あしだいとなすまでわがみぎにすべしと
  45.  さればダビデすでこれしゆとなへたれば如何いかでそのならん
  46.  たれ一言ひとことこれにこたふることあたはずこのよりあへまたとふものなかりき

第二十三章

  1.  そのときイエス人々ひとびと弟子でしとにつげいひけるは
  2.  學者がくしやとパリサイのひとはモーセのくらゐ
  3.  ゆゑすべ彼等かれら爾曹なんぢらいふところをまもりおこなふべしされ彼等かれらおこなところなすことなかそはかれらはいふのみにしておこなはざればなり
  4.  また彼等かれらおもくかつおひがたきくくりひとかたおはおのれひとつゆびをもてこれうごかすことすらこのま
  5.  彼等かれらおこなひすべひとみられんがためにするなりその佩經ふだ幅闊はばひろくそのころもすそおほいにし
  6.  また筵席ふるまひ上座かみざ會堂くわいだう高座かうざ
  7.  市上まち問安あいさつ人々ひとびとよりラビ、ラビととなへられんことをこの
  8.  爾曹なんぢらはラビのとなへうくることなかそはなんぢらの一人ひとりすなはちキリストなり爾曹なんぢらはみな兄弟きやうだいなり
  9.  またにあるものちちとなふることなか爾曹なんぢらちち一人ひとりすなはちてんいまものなり
  10.  また導師だうしとなへうくることなかそはなんぢらの導師だうし一人ひとりすなはちキリストなり
  11.  爾曹なんぢらのうちおほいなるもの爾曹なんぢらしもべなるべし
  12.  おほよ自己みづからたかふするものひくくせられ自己みづからひくくするものたかくせられん
  13.  ああなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひとそはなんぢら天國てんこくひとまへとぢみづかいらかついらんとするものいるをもゆるさざればなり
  14.  ああなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひとそはなんぢら嫠婦やもめいへのみいつはりてながいのりをなすこれより爾曹なんぢらもつとおも審判さばきうくべければなり
  15.  ああわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひとそはなんぢらあまね水陸うみやまめぐ一人ひとりをもおの宗旨しうしひきいれんとすすでひきいるればこれ爾曹なんぢらよりもばいしたる地獄ぢごくなせ
  16.  ああなんぢらわざはひなるかな瞽者めしひなるてびき爾曹なんぢらはいふひともし殿みやさしちかはばことなし殿みやこがねさしちかはばそむくべからずと
  17.  おろかにしてめしひなるものこがねこがねきよからしむる殿みやとはいづれたふと
  18.  またいふひともしまつりりのだんさしちかはばことなしそのうへ禮物そなへものさしちかはばそむくべからずと
  19.  おろかにしてめしひなるもの禮物そなへもの禮物そなへものきよからしむるまつりだんいづれたふと
  20.  それまつりだんさしちかものまつりだんおよびそのうへすべてものさしちかふなり
  21.  また殿みやさしちかもの殿みやおよびそのうちいまものさしちかふなり
  22.  またてんさしちかものかみ寶座みくらゐおよびそのうへするものさしちかふなり
  23.  ああなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひとそはなんぢら薄荷はくか茴香ういきやう馬芹まきんじふぶんいちとりをさめ律法おきてもつとおもじんしんとを爾曹なんぢらすつこれおこなべきものなりかれもまたすつべからざるものなり
  24.  瞽者めしひなる相者てびき爾曹なんぢらぼうふりこしいだして駱駝らくだのむものなり
  25.  ああわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひと爾曹なんぢらさかづきさらそときよくしてうちには貪欲むさぼり淫欲いんよくとをみたせり
  26.  瞽者めしひなるパリサイのひと爾曹なんぢらまづさかづきさらうちきよくせよさらばそのそとまたきよまるべし
  27.  ああなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひと爾曹なんぢらしろぬりたるはかたりそとうるはしくみゆれどもうち骸骨がいこつさまざま汚穢けがれにてみつ
  28.  かくごと爾曹なんぢらもまたそとただしひとみゆれどもうち僞善ぎぜん不法ふはふにてみつ
  29.  ああなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしやとパリサイのひと爾曹なんぢら預言者よげんしやはかをたて義人ぎじんかざれり
  30.  またいふ我儕われらもし先祖せんぞときにあらば預言者よげんしやながすことにくみせざりしをと
  31.  され爾曹なんぢら預言者よげんしやころしものすゑなることをみづかあかし
  32.  なんぢら先祖せんぞますめみた
  33.  へびまむしたぐひ爾曹なんぢらいかで地獄ぢごく刑罪けいばつまぬかれんや
  34.  このゆゑわれ爾曹なんぢら預言者よげんしや智者ちしや學者がくしやつかはさんにあるひこれころまた十字架じふじかつけあるひその會堂くわいだうにてこれむちうあるひまちよりまちおひくるしめん
  35.  そはなるアベルのより殿みやまつりだんあひだにて爾曹なんぢらころししバラキアのザカリアのいたるまでながしたる義人ぎじんすべ爾曹なんぢらむくいきたらんがためなり
  36.  われまこと爾曹なんぢらつげこのことみなこのむくいきたるべし
  37.  ああエルサレムよエルサレムよ預言者よげんしやころなんぢつかはさるるものいしにてうつものよ母雞めんどりひなつばさしたあつむごとわれなんぢの赤子こどもあつめんとせしこといくたびぞやされ爾曹なんぢらこのまざりき
  38.  爾曹なんぢらいへ荒地あれちとなりてのこされん
  39.  われ爾曹なんぢらつげしゆよりきたものさいはひなりと爾曹なんぢらいはんときいたるまではいまよりわれざるべし

第二十四章

  1.  イエス殿みやよりいでければその弟子でしすすみて殿みや構造かまへかれせんとしたりしに
  2.  イエス彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらすべて此等これらざるかわれまことに爾曹なんぢらつげこのところひとついしいしうへくづされずしてはのこらじ
  3.  イエス橄欖山かんらんざんたまへるとき弟子でしひそかにきたりていひけるはいづれときこのことあるまたなんぢきたしるしをはりしるし如何いかなるぞや我儕われらつげたまへ
  4.  イエスこたへ彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらひとあざむかれざるやうつつしめ
  5.  そはおほくのひとわがをかしきたりわれはキリストなりといひおほくひとあざむくべし
  6.  またなんぢらいくさいくさ風聲うはさをきかんされつつしみおそるるなか此等これらことみなあるべきなりしかれども末期をはりいまいたらず
  7.  たみおこりてたみをせめくにくにをせめ饑饉ききん疫病えきびやう地震ぢしんところどころにあるならん
  8.  これみなわざはひはじめなり
  9.  そのときひとなんぢらを患難なやみわた爾曹なんぢらころすべしまたなんぢらわがため萬民ばんみんにくまれん
  10.  このとき許多おほくのものつまづきかつたがひわたたがひうらむべし
  11.  またにせ預言者よげんしやおほくおこりおほくひとあざむかん
  12.  また不法ふはふみつるによりおほくひと愛情あいじやうひややかになるべし
  13.  されをはりまでしのものすくはるることを
  14.  また天國てんこくこの福音ふくいん萬民ばんみんあかしせんためあまね天下てんかのべつたへられんしかるのち末期をはりいたるべし
  15.  このゆゑ預言者よげんしやダニエルによりいはれたるところ殘暴あらすにくむべきもの聖處せいしよたつば(讀者よむものよくおもふべし)
  16.  そのときユダヤにをるものやまのがれよ
  17.  屋上やのうへをるものはそのいへものとらんとておるなか
  18.  はたにをるものそのころもとらんとてかへなか
  19.  そのにははらめるものちちのまするをんなわざはひなるかな
  20.  爾曹なんぢらふゆまたは安息日あんそくにちにぐることをまぬかれんためいの
  21.  そのときおほいなる患難なやみありかくごと患難なやみはじめよりいまいたるまであらざりきまたのちにもあら
  22.  もしそのすくなくせられずば一人ひとりだにすくはるるものなからんされえらばれしものためそのすくなくせらるべし
  23.  そのときもしキリスト此處ここにあり彼處かしこにありと爾曹なんぢらにいふものあるともしんずるなか
  24.  そはにせキリストにせ預言者よげんしやたちおこりおほいなる休徴しるし異能ふしぎなるわざおこなえらばれたるものをもあざむくことをこれあざむべければなり
  25.  われあらかじめ爾曹なんぢらこれつぐ
  26.  もしキリストありといふものあるともいづなかへやありいふものあるともしんずるなか
  27.  そはいなづまひがしよりいで西にしにまでひらめくがごとひときたるべければなり
  28.  それしかばねのあるところにはわしあつまらん
  29.  此等これら患難なやみのちただちにくらつきひかりうしなほしそらよりおちてんいきほふるふべし
  30.  そのときひとしるしてんあらはるまた地上ちじやうにある諸族しよぞくなげきかなしかつひと權威けんゐおほいなる榮光えいくわうをもててんくものりきたるを
  31.  またその使つかひたちつかはらつぱおほいなるこゑいださしめててんこのはてよりかのはてまで四方しはうよりそのえらばれしものあつむべし
  32. それなんぢら無花果樹いちじくよりたとへまなそのえだすでにやはらかにしてめぐめばなつちかきをしる
  33.  かくごと爾曹なんぢらすべ此等これらことときちかく門口かどぐちいたるとしれ
  34.  われまこと爾曹なんぢらつげ此等これらことことごとくなるまでこのたみうせざるべし
  35.  天地てんちうせされわがことばうせ
  36. そのそのときしるものはただわがちちのみてん使者つかひたれもしるものなし
  37.  ノアのときごとひときたるもまたしからん
  38.  それ洪水こうずゐまへノア方舟はこぶねにいるまでは人々ひとびとのみくひとつぎめとりなどして
  39.  洪水こうずゐきたことごとこれほろぼすまでしらざりきかくごとひとまたきたらん
  40.  そのとき二人ふたりはたあらんに一人ひとりとら一人ひとりのこさるべし
  41.  二人ふたりをんなうすひきをらんに一人ひとりはとられ一人ひとりのこさるべし
  42.  このゆゑ爾曹なんぢらしゆいづれのとききたるかをしらざればおこたらずしてまも
  43.  爾曹なんぢらこれをしれもしいへ主人あるじぬすびといづれとききたるかをしらそのいへまもりやぶらすまじ
  44.  され爾曹なんぢらもまた預備そなへせよおもはざるときひときたらんとすればなり
  45.  ときおよびかて彼等かれらあたへさするため主人あるじがそのしもべどもうへたてたる忠義ちゆうぎにしてさときしもべたれなる
  46.  その主人あるじきたらんときかくのごとつとむるをみらるるしもべさいはひなり
  47.  われまことに爾曹なんぢらつげその所有もちものをみなかれつかさどらすべし
  48.  もしそのあしきしもべおのがこころ主人あるじきたるはおそからんとおも
  49.  その朋輩はうばいうちたたきてさけゑひたるものどもととも飮食のみくひはじめなば
  50.  そのしもべ主人あるじおもはざるのしらざるのとききたりて
  51.  これきりころそのむくい僞善者ぎぜんしやおなじうすべし其處そこにて哀哭かなしみ切齒はがみすることあら

第二十五章

  1.  そのとき天國てんこくともしびとり新郎はなむこむかへいづ十人じふにん童女むすめなぞらふべし
  2.  そのうち五人ごにんかしこ五人ごにんおろかなり
  3.  おろかかなるものそのともしびをとるにあぶらたづさへざりしが
  4.  かしこものそのともしびともあぶらうつはたづさへたり
  5.  新郎はなむこおそかりければみな假寐かりねしてねむれり
  6.  なかばにさけびて新郎はなむこきたりぬいでむかへよとよぶこゑありければ
  7.  この童女むすめどもみなおきてそのともしびととのへたるに
  8.  おろかかなるものかしこものいひけるは我儕われらともしびきえんとすねがはくは爾曹なんぢらあぶら我儕われらわけあたへ
  9.  かしこきものこたへいひけるは我儕われら爾曹なんぢらとにおそらくはたるまじ爾曹なんぢら賣者うるものゆきおのためかへ
  10.  かれらかはんとてゆきしとき新郎はなむこきたりければすでそなへたるものこれとも婚筵こんえんいりしかばもんとぢられたり
  11.  かくのちそのほか童女むすめきたりていひけるはしゆしゆ我儕われらためひらきたまへ
  12.  こたへわれまことに爾曹なんぢらつげわれ爾曹なんぢらしらずといへ
  13.  されおこたらずしてまも爾曹なんぢらそのそのときしらざればなり
  14.  また天國てんこくあるひと旅行たびだちせんとしてそのしもべをよび所有もちもの彼等かれらあづくるがごと
  15.  各人おのおの智慧ちゑしたがひてあるものにはぎん五千ごせんあるものには二千にせんあるものには一千いつせんあたへおきただち旅行たびだちせり
  16.  五千ごせんぎんうけものゆきこれ貿易はたらかほか五千ごせんたり
  17.  二千にせんうけものもまたほか二千にせんたり
  18.  しかるに一千いつせんうけものゆきほりそのしゆかねかくせり
  19.  歴久ほどへのちそのしもべたちしゆかへりて彼等かれら會計くわいけいせしに
  20.  五千ごせんぎんうけものそのほか五千ごせんぎんもちきたりてしゆわれ五千ごせんぎんあづけしがほか五千ごせんぎんまうけたりといひければ
  21.  しゆかれにいひけるはああぜんかつちゆうなるしもべなんぢわづかなることちゆうなりわれなんぢにおほきものをつかさどらせんなんぢ主人あるじ歡樂よろこびいれ
  22.  二千にせんぎんうけものきたりてしゆわれ二千にせんぎんあづけしがほか二千にせんぎんまうけたりといひければ
  23.  しゆかれにいひけるはああぜんかつちゆうなるしもべぞなんぢわづかなることちゆうなりわれなんぢにおほきものをつかさどらせんなんぢ主人あるじ歡樂よろこびいれ
  24.  また一千いつせんぎんうけものきたりていひけるはしゆなんぢきびしきひとにてまかざるところよりかりちらさざるところよりあつむることをわれしる
  25.  ゆゑわれおそれてゆきしゆ一千いつせんぎんかくおけいまなんぢなんぢものたり
  26.  そのしゆこたへていひけるはあしくかつおこたれるしもべなんぢわがまかざるところよりかりちらさざるところよりあつむることをしる
  27.  しからばかね兌換舖りやうがへやあづけおくべきなりさらかへりたるときもととをうくべし
  28.  このゆゑかれ一千いつせんぎんとりじふせんぎんあるものあたへ
  29.  それもてものあたへられてなほあまりあり無有もたぬものはそのもてものをもとらるるなり
  30. 無益むえきなるしもべそと幽暗くらきおひやれ其處そこにて哀哭かなしみ切齒はがみすることあら
  31.  ひとおのれの榮光えいくわうをもてもろもろきよき使つかひひきゐきたときはその榮光えいくわうくらゐ
  32.  萬國ばんこくたみをそのまへあつひつじ牧者かふもの綿羊めんやう山羊やぎとをわかつごと彼等かれらわか
  33.  綿羊めんやうをそのみぎ山羊やぎをそのひだりおくべし
  34.  かくわうそのみぎにをるものいはわがちちめぐまるるものきたりて創世よのはじめより以來このかたなんぢらのためそなへられたるくにつげ
  35.  そはなんぢらうゑときわれにくはかわきしときわれのまたびせしときわれを宿やどらせ
  36.  はだかなりしときわれにやみしときわれをみまひひとやありしときわれきたればなり
  37.  ここおいただしきものかれにこたへいはしゆ何時いつなんぢのうゑたるをくはせまたかわきたるにのましし
  38.  何時いつしゆたびしたるを宿やどらせまたはだかなるにきせしや
  39.  何時いつしゆやみまたひとやあるなんぢいたりし
  40.  わうこたへて彼等かれらいはわれまことに爾曹なんぢらつげすで爾曹なんぢらわがこの兄弟きやうだい最微者いとちひさきもの一人ひとりおこなへるはすなはわれおこなひしなり
  41.  つひにまたひだりにをるものいはつみせらるべきものわれはなれて惡魔あくまその使者つかひためそなへたるきえざるいれ
  42.  そはなんぢらうゑときわれにくはせずかわきしときわれのませず
  43.  たびせしときわれを宿やどらせずはだかなりしときわれにきせやみまたひとやありときわれをみまはざればなり
  44.  ここおい彼等かれらまたこたへいはしゆ何時いつなんぢのうゑまたかわきまたたびまたはだかまたやまひまたひとやあるしゆつかへざりし
  45.  そのときわうこたへて彼等かれらにいはんわれまことに爾曹なんぢらつげこの最微者いとちひさきもの一人ひとりおこなはざるはすなはわれおこなはざりしなり
  46.  此等これらものかぎりなき刑罰けいばつにいりただしきものかぎりなき生命いのちいるるべし

第二十六章

  1.  さてイエスこのもろもろことばいひをはりてその弟子でしいひけるは
  2.  二日ふつかののち逾越節すぎこしのいはひなるは爾曹なんぢらしるところなりそれひと十字架じふじかつけられんためわたさるべし
  3.  このとき祭司さいしをさおよびたみ長老としよりたちカヤパといへ祭司さいしをさやしきにはあつま
  4.  詭計たばかりをもてイエスをとらころさんと共々ともどもはかりいひけるは
  5.  まつりにはなすべからずおそらくはたみうちらんおこらん
  6.  イエス、ベタニヤの癩病らいびやうにんシモンのいへたまへるとき
  7.  あるをんな蝋石らふせき器物うつはものあたひたかき香膏にほひあぶらもりてイエスのしよくするもともちきたそのかうべそそぎしかば
  8.  弟子でしたちこれをいかりふくみいひけるはこの糜費つひえのことをなす何故なにゆゑぞや
  9.  もしこれをうらおほくきん貧者まづしきものほどこすことを
  10.  イエスしり彼等かれらいひけるはなんこのをんななやますやかれわれよきことおこなへるなり
  11.  貧者まづしきものつね爾曹なんぢらともにあれどわれつね爾曹なんぢらともあら
  12.  かれがこの香膏にほひあぶらわがそそぎしはわれはうむりためなせなり
  13.  われまこと爾曹なんぢらつげあめしたいづくにてもこの福音ふくいんのべつたへらるるところにはこのをんななしこともその紀念かたみためいひつたへらるべし
  14.  そのとき十二じふに弟子でし一人ひとりなるイスカリオテのユダといへるもの祭司さいしをさたちもとゆきいひけるは
  15.  われなんぢらにかれわたさば幾何なにほどあたふるかつひぎん三十さんじふにてやくしたり
  16.  このときよりイエスをわたさんとをりうかがひぬ
  17.  除酵節たねいれぬぱんのいはひはじめ弟子でしイエスにきたいひけるは我儕われらすぎこしのしよくなんぢため何處いづこそなふべき
  18.  イエスいひけるは京城みやこにいりそれがしいたりていへいふときちかづきければわれ弟子でしとも逾越すぎこし節筵いはひなんぢいへなすべしと
  19.  弟子でしイエスにめいぜられしごとくして逾越すぎこししよくそな
  20.  くるるときイエス十二じふに弟子でしともせきつき
  21. しよくするときいひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげ爾曹なんぢらのうち一人ひとりわれをわたすなり
  22.  彼等かれらいたくうれへおのおのイエスにいひいでけるはしゆわれなる
  23.  こたへいひけるはわれともさらつくものすなはわれわたものなり
  24. ひとおのれについてしるされたるごとゆかされひとわたものわざはひなるかなそのひとうまれざりしならばかへつさいはひなりしならん
  25.  かれわたすユダこたへいひけるはラビわれなるやこれいひけるはなんぢいへごと
  26.  かれらしよくするときイエス、パンをとりしゆくこれをさき弟子でしあたへいひけるはとりくらへこれはわがなり
  27.  またさかづきとりしや彼等かれらあたへいひけるは爾曹なんぢらみなこのさかづきよりのめ
  28.  これ新約しんやくわがにしてつみゆるさんとておほくひとのためにながすところのものなり
  29.  われ爾曹なんぢらつげいまよりのちなんぢらとともあたらしきものわがちちくにのままではふたたびこの葡萄ぶだうにてつくれるもののま
  30.  かれらうたうたひてのち橄欖山かんらんざんゆけ
  31.  そのときイエス彼等かれらいひけるは今夜こよひなんぢらみなわれについつまづかんそはわれ牧者かふものうたむれ綿羊めんやうちらんとしるされたればなり
  32.  されわれよみがへりてのちなんぢらにさきだちガリラヤにゆくべし
  33.  ペテロこたへてイエスにいひけるはみななんぢについつまづくともわれつひつまづかじ
  34.  イエスかれいひけるはわれまことになんぢつげ今夜こよひにはとりなかざるまへなんぢ三次みたびわれをしらずといは
  35.  ペテロかれいひけるはわれしゆともしぬるともなんぢしらずといは弟子でしみな如此かくいへり
  36.  そのときイエス彼等かれらともにゲツセマネといふところいたり弟子でしたちいひけるは爾曹なんぢらここにをれわれ彼處かしこゆきいのらん
  37.  ペテロおよびゼベダイの二人ふたりたづさうれかなしみをもよほ
  38.  彼等かれらいひけるはわがこころいたくうれへしぬるばかりなりここにまちわれともさましをれ
  39.  すこすすみゆきてひれふしいのりいひけるはわがちちもしかなはばこのさかづきわれよりはなたまされわがこころままなさんとするにあら聖旨みこころまかたま
  40.  しかし弟子でしきたそのいねたるをてペテロにいひけるは如此かく一時ひとときわれともさましをることあたはざる
  41.  まどひいらぬやうさましかついのれそのたましひにはねがふなれど肉體にくたいよわきなり
  42.  二次ふたたびゆきてまたいのりいひけるはわがちちもしわれにこのさかづきのまさではなつことあたはずば聖旨みこころまかたま
  43. きたりてまたかれらのいねたるをみるこれ彼等かれらつかれたるなり
  44.  彼等かれらはなれてまたゆき第三次みたびめおなじことばをもていのれり
  45.  つひその弟子でしきたりていひけるはいまいねやすときちかひと罪人つみびとわたされん
  46.  おき我儕われらゆくべしわれわたものちかづきたり
  47.  如此かくいへるとき十二じふに一人ひとりなるユダつるぎぼうとをもちたるおほく人々ひとびととも祭司さいしをさたみ長老としよりもとよりきた
  48.  イエスをわたものかれらにしるしをなしていひけるは接吻くちつけするものそれなりこれとらへよ
  49.  ただちにイエスにきたりラビやすきかといひかれ接吻くちつけ
  50.  イエスかれいひけるはともなにためきたるやつひ彼等かれらすすみきたをイエスにかけとらへぬ
  51. イエスとともありもの一人ひとりをのべつるぎぬき祭司さいしをさしもべうちそのみみそぎおとせり
  52. イエスかれいひけるはなんぢつるぎ故處もとをさめすべつるぎをとるものつるぎにてほろぶべし
  53.  われいま十二じふにぐん天使つかひわがちちこひうくることあたはずと爾曹なんぢらおもふ
  54. もししかせば如此かくあるべきことしるし聖書せいしよ如何いかかなはん
  55.  このときイエス人々ひとびといひけるはつるぎぼうとをもち盜賊ぬすびととらふるごとくしてわれとらへにきたるわれ日々ひび爾曹なんぢらとも殿みやしてをしへしに爾曹なんぢらわれをとらへざりし
  56.  されかくごとくなるはみな預言者よげんしやしるしたるところ應成かなはせんためなりつひ弟子でしたちみなイエスをはなれてにげさり
  57. イエスをとらへたるものこれをひき學者がくしや長老としよりあつまれるところ祭司さいしをさカヤパにつれゆく
  58. ペテロとほはなれてイエスにしたが祭司さいしをさにはにまでいたりその結局なりゆきんとてうちにいりしもべともせり
  59. 祭司さいしをさたちおよび長老としよりすべての議員ぎゐんともにイエスをころさんとして妄證いつはりのあかしもとむれども
  60. おほくのいつはりの證者あかしびときたれどもまたえずのちまたいつはりの證者あかしびと二人ふたりきたりていひけるは
  61. このひとさきいへることありわれよくかみ殿みやこぼちて三日みつかうちこれたてうべしと
  62. 祭司さいしをさたちてイエスにいひけるはなんぢこたふることなきこの人々ひとびとなんぢたつ證據しようこ如何いかに
  63. イエス默然もくねんたり祭司さいしをさこたへてかれいひけるはなんぢキリストかみなるかわれなんぢをいけるかみちかはせてこれつげしめん
  64. イエスかれいひけるはなんぢいへごとかつわれ爾曹なんぢらつげこののちひと大權ちからみぎてんくものりきたるを爾曹なんぢらみるべし
  65.  ここおい祭司さいしをさそのころもさきいひけるはこのひと褻涜けがすことをいへなんほか證據しようこもとめんや爾曹なんぢらいまその褻涜けがしたることをきく
  66.  なんぢら如何いかにおもふかれらこたへいひけるはかれあたれり
  67.  ここおい彼等かれらそのかほつばきかつこぶしにてうてりまたあるひとかれをたたきいひけるは
  68. キリストよなんぢ撃者うつものたれ我儕われら預言よげんせよ
  69. ペテロにはすわりゐけるにあるしもめきたりてなんぢもガリラヤのイエスとともなりといひければ
  70.  ペテロすべてひとまへこのことばうけがはずしてわれなんぢがいふところをしらずといへ
  71. いで門口かどぐちいたれるときまたほかしもめこれを其處そこにをるものいひけるはこのひともナザレのイエスとともあり
  72. ペテロまたうけがはずしてちかわれこのひとしらずと
  73.  しばらくありてかたはらにたちたるものすすみよりてペテロにいひけるはまことなんぢもそのともがら一人ひとりなりそはなんぢの方言くになまりなんぢをあらはせり
  74.  ここおいてペテロののしかつちかひわれそのひとしらずといひしがやがにはとりなき
  75.  ペテロ、イエスのにはとりなかざるまへなんぢ三次みたびわれをしらずといはんといひたまへること憶起おもひいだそといでかなしけり

第二十七章

  1.  平旦よあけになりてすべて祭司さいしをさたみ長老としよりともにはかりてイエスをころさんとし
  2.  すでかれしばりひきゆきて方伯つかさのポンテオ・ピラトにわたせり
  3.  ここおいてイエスをわたししユダかれさだめられしをくやみそのぎん三十さんじふ祭司さいしをさ長老としよりたちかへして
  4.  いひけるは無辜つみなきわたわれつみをかしぬ彼等かれらいひるは我儕われらおいなんあづからんやなんぢみづからあたるべし
  5.  ユダそのぎん殿みやなげすて其處そこさりゆきてみづかくびれたり
  6.  祭司さいしをさたちこのぎんとりいひけるはあたひなれば賽錢さいせんはこいるべからずとて
  7.  ともはかりこのぎんをもて旅客たびびとはうむため陶工やきものしはたけかへ
  8.  ゆゑそのはたけいまいたるまで血田ちのはたけなづけらる
  9.  ここおい預言者よげんしやエレミヤによりいはれたることばにイスラエルのたみねづもられねづもられしものあたひぎん三十さんじふとり
  10.  しゆわれめいぜしごと陶工やきものしはたけかひぬとあるかなへり
  11.  さてイエス方伯つかさまへにたつ方伯つかさイエスにとふいひけるはなんぢはユダヤびとわうなるかイエスこれいひけるはなんぢいへごと
  12.  祭司さいしをさ長老としよりたちかれうつたふれどもなにこたへもせず
  13.  ここおいてピラトかれいひけるはこの人々ひとびとなんぢにたつあかしのかくおほいなるをなんぢきかざる
  14.  方伯つかさいとあやしとするまでにイエス一言ひとことこたへざりき
  15.  このまつりには方伯つかさよりたみねがひまかせて一人ひとり囚人めしうどゆるすれいあり
  16. ときにバラバといへ一人ひとり名高なだか囚人めしうどありければ
  17.  ピラトたみあつまりしとき彼等かれらいひけるはバラバかまたはキリストととなふるイエスなるなんぢらたれゆるさんとおもふや
  18. これ媢嫉ねたみよりてイエスをわたしたりとしればなり
  19.  方伯つかさ審判さばきすわりたるときそのつまいひつかはしけるはこのただしきひとなんぢかかはることなかそはわれ今日けふゆめうちかれにつきておほうれへたり
  20.  祭司さいしをさ長老としよりたちバラバをゆるしイエスをころさんことをねがへたみすす
  21.  方伯つかさこたへて彼等かれらいひけるは二人ふたりのうちいづれわがなんぢらにゆるさんことをのぞむや彼等かれらバラバとこた
  22.  ピラトいひけるはさらばキリストととなふるイエスにわれなにをなすべきかみないふ十字架じふじかつけよと
  23.  方伯つかさいひけるはかれなにの惡事あくじなししや彼等かれらますます喊叫さけび十字架じふじかつけよといふ
  24.  ピラトそのことえきなくしてただらんおこらんとするをしりみづとり人々ひとびとまへをあらひいひけるはこのただしきものわれつみなし爾曹なんぢらみづからこれあた
  25.  たみみなこたへいひけるはその我儕われら我儕われら子孫すゑかかはるべし
  26. ここおいてバラバを彼等かれらゆるしイエスをむちうちてこれ十字架じふじかつけためわたしたり
  27.  方伯つかさ兵卒へいそつイエスをたづさ公廳やくしよいた全營くみぢゆうそのもとにあつ
  28.  かれころもはぎ絳色あかいろうはぎ
  29.  いばらにてかんむりあみそのかうべかむらしめまたよし右手みぎのてもたかつそのまへひざまづき嘲弄てうろうしていひけるはユダヤびとわうやすかれ
  30.  またかれつばきそのよしとりそのかうべうて
  31.  嘲弄てうろうをはりてそのうはぎをはぎもとのころもをきせ十字架じふじかつけんとてかれひきゆく
  32.  そのいでときクレネびとのシモンといふものあひければしひこれその十字架じふじかおはせたり
  33.  彼等かれらゴルゴダとけすなは髑髏されかうべいへところきた
  34.  あはせてイエスにのませんとたりしになめのむことをせざりき
  35.  かくてイエスを十字架じふじかつけしのちくじとりそのころもわかつこれ預言者よげんしやことば彼等かれらたがひころもわけわが裏衣したぎくじにすといひしにかなへり
  36.  兵卒へいそつここにしてイエスをまもれり
  37.  また罪標すてふだこれはユダヤびとわうイエスなりとしるしてそのかうべうへおけ
  38.  そのとき二人ふたり盜賊ぬすびとイエスととも一人ひとりそのみぎ一人ひとりそのひだり十字架じふじかつけらる
  39.  往來ゆききものイエスをののしかうべふりいひけるは
  40.  殿みやこぼちて三日みつかこれたつもの自己みづからすくなんぢもしかみならば十字架じふじかよりおり
  41.  祭司さいしをさ學者がくしや長老としよりたちまたおなじく嘲弄てうろうしていひけるは
  42.  ひとすくひおのすくひあたはずもしイスラエルのわうたらばいま十字架じふじかよりくだるべしさら我儕われらかれをしんぜん
  43.  かれかみよりたのめりかみもしかれいつくしまばいますくふべしそはかれわれかみなりといひなり
  44.  とも十字架じふじかつけられたる盜賊ぬすびとおなじくイエスをののしれり
  45.  ひる十二時じふにじより三時さんじいたるまでそのあまねく黒暗くらやみとなる
  46. 三時さんじごろイエス大聲おほごゑにエリ、エリ、ラマサバクタニとよばはりぬこれとけわがかみわがかみなんぞわれすてたまふいへなり
  47.  かたはらにたてたるもののうちあるひとこれをききかれはエリヤをよべるなりといふ
  48.  そのうち一人ひとりただちはしゆき海絨うみわたをとりふくまこれよしにつけてイエスにのましむ
  49.  餘人ほかのものいひけるはまてエリヤきたりてかれすくふやいなこころむべし
  50.  イエスまた大聲おほごゑよばはりて氣絶いきたえたり
  51.  殿みやまくうへよりしたまでさけふたつとなりまたふるひいはさけ
  52.  はかひらけてすでいねたる聖徒せいとおほくよみがへりイエスのよみがへれるのち
  53. はかいで聖城みやこいりおほくのひとあらはれたり
  54.  百夫ひやくにんかしらともにイエスをまもりたるもの地震ぢしんおよびそのありこといたおそまことかみなりといへ
  55.  このところはるかのぞみゐたるおほくをんなありし彼等かれらはガリラヤよりイエスにしたがつかへものどもなり
  56.  そのうちをりものはマグダラのマリアとヤコブ、ヨセのははなるマリアとゼベダイのたちははとなり
  57. くれてイエスの弟子でしなるヨセフといへるアリマタヤのとめるひときたりてピラトにゆきイエスのしかばねこひしかば
  58.  ピラトそのしかばねわたせとめい
  59. ヨセフしかばねとりきよ枲布ぬのつつ
  60.  これいはほりたるおのあたらしきはかにおきおほいなるいしはかもんまろばしてさる
  61. マグダラのマリアとほかのマリアとはかむかひ其處そこをれ
  62.  預備日そなへび翌日よくじつ祭司さいしをさとパリサイのひとたちピラトのところつどひきたいひけるは
  63.  しゆ我儕われら憶起おもひいだせり僞者いつはりものいきてありしとき三日みつかののちよみがへらんといひ
  64.  このゆゑめいじて三日みつかいたるまではか固守かためしめよおそらくはその弟子でしよるきたりてこれぬすよりよみがへりたりとたみいはしからのちまどひさきよりもいやまさるべし
  65.  ピラト彼等かれらいひけるは守兵まもるもの爾曹なんぢらにありゆきおもひのままに固守かためしめよ
  66.  ここおい彼等かれらゆきていし封印ふういん守兵まもるものをしてはか固守かためしめたり

第二十八章

  1.  安息日あんそくにちをはりてのち七日なぬかはじめ黎明あけがたにマグダラのマリアおよほかのマリアそのはかんとてきたりしに
  2.  おほいなる地震ぢしんありてしゆ使者ししやてんよりくだはかもんよりいしまろばそのうへ
  3.  その容貌かたち閃電いなびかりのごとくその衣服ころもゆきのごとくしろ
  4.  守兵まもるものかれをおそれをののしにたるものごとくなりぬ
  5.  天使つかひこたへてをんないひけるは爾曹なんぢらおそるるなかわれなんぢらが十字架じふじかつけられしイエスをたづぬることをしる
  6.  かれここあらそのいへごとよみがへりたり爾曹なんぢらきたりてしゆおかれしところ
  7.  かつゆきてその弟子でしつげかれよりよみがへ爾曹なんぢらさきだちてガリラヤにゆけ彼處かしこおい爾曹なんぢらかれをみるべしわれこれを爾曹なんぢらつぐ
  8.  をんなおそれながらもいたよろこびてとくはかをさりその弟子でしつげんとはしゆけ
  9.  弟子でしつげんとてゆくときイエス彼等かれらあひやすかれといひたまひければをんなすすみそのあしいだきはいしぬ
  10.  イエス彼等かれらいひけるはおそるるなかさり兄弟きやうだいにガリラヤにゆけつげ彼處かしこにてわれみるべし
  11.  をんなさりしのち守兵まもるもののうちあるものどもみやこいたすべありこと祭司さいしをさたちつげしかば
  12.  彼等かれら長老としよりあつまりてともはかりおほくの銀子かね兵卒へいそつあたへいひけるは
  13.  爾曹なんぢらいへ我儕われらいねたるときその弟子でしよるきたりてかれぬすめりと
  14.  このこともし方伯つかさきこゆるとも我儕われらかれにすすめ爾曹なんぢら憂慮うれひなからしめん
  15.  かれら銀子かねとりいひふくめられたるごとくしたりしここおいかくごとはなし今日こんにちいたるまでユダヤびとうち傳播いひひろめられたり
  16.  十一じふいち弟子でしガリラヤにゆきてイエスの彼等かれらめいたまところやまいた
  17.  イエスをはいせりされうたがへるものもありき
  18.  イエスすすみ彼等かれらかたりいひけるはてんのうちうへすべてけんわれたまはれり
  19.  このゆゑ爾曹なんぢらゆきて萬國ばんこくたみにバプテスマをほどここれちち聖靈せいれいいれ弟子でしとし
  20. かつわがすべ爾曹なんぢらめいぜしことまもれと彼等かれらをしへそれわれはをはりまでつね爾曹なんぢらともあるなりアメン