テトスへの手紙(新改訳新約聖書(1965年版))

テトスへの手紙

第1章

  1. 神のしもべ、また、イエス・キリストの使徒パウロ――私は、神に選ばれた人々の信仰と、敬虔にふさわしい真理の知識とのために使徒とされたのです。
  2. それは、偽ることのない神が、永遠の昔から約束してくださった永遠のいのちの望みに基づくことです。
  3. 神は、ご自分の定められた時に、このみことばを宣教によって明らかにされました。私は、この宣教を私たちの救い主なる神の命令によって、ゆだねられたのです。――このパウロから、
  4. 同じ信仰による真実のわが子テトスへ。父なる神および私たちの救い主なるキリスト・イエスから、恵みと平安がありますように。
  5. 私があなたをクレテに残したのは、あなたが残っている仕事の整理をし、また、私が指図したように、町ごとに長老たちを任命するためでした。
  6. それには、その人が、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、その子どもは不品行を責められたり、反抗的であったりしない信者であることが条件です。
  7. 監督は神の家の管理者として、非難されるところのない者であるべきです。わがままでなく、短気でなく、酒飲みでなく、けんか好きでなく、不正な利を求めず、
  8. かえって、旅人をよくもてなし、善を愛し、慎み深く、正しく、敬虔で、自制心があり、
  9. 教えにかなった信頼すべきみことばを、しっかりと守っていなければなりません。それは健全な教えをもって励ましたり、反対する人たちを正したりすることができるためです。
  10. 実は、反抗的な者、空論に走る者、人を惑わす者が多くいます。特に、割礼を受けた人々がそうです。
  11. 彼らの口を封じなければいけません。彼らは、不正な利を得るために、教えてはいけないことを教え、家々を破壊しています。
  12. 彼らと同国人であるひとりの預言者がこう言いました。「クレテ人は昔からのうそつき、悪いけだもの、なまけ者の食いしんぼう。」
  13. この証言はほんとうなのです。ですから、きびしく戒めて、人々の信仰を健全にし、
  14. ユダヤ人の空想話や、真理から離れた人々の戒めには心を寄せないようにさせなさい。
  15. きよい人々には、すべてのものがきよいのです。しかし、汚れた、不信仰な人々には、何一つきよいものはありません。それどころか、その知性と良心までも汚れています。
  16. 彼らは、神を知っていると口では言いますが、行ないでは否定しています。実に忌まわしく、不従順で、どんな良いわざにも不適格です。

第2章

  1. しかし、あなたは健全な教えにふさわしいことを話しなさい。
  2. 老人たちには、自制し、謹厳で、慎み深くし、信仰と愛と忍耐とにおいて健全であるように。
  3. 同じように、年をとった婦人たちには、神に仕えている者らしく敬虔にふるまい、悪口を言わず、大酒のとりこにならず、良いことを教える者であるように。
  4. そうすれば、彼女たちは、若い婦人たちに向かって、夫を愛し、子どもを愛し、
  5. 慎み深く、貞潔で、家事に励み、優しく、自分の夫に従順であるようにと、さとすことができるのです。それは、神のことばがそしられるようなことのないためです。
  6. 同じように、若い人々には、思慮深くあるように勧めなさい。
  7. また、すべての点で自分自身が良いわざの模範となり、教えにおいては純正で、威厳を保ち、
  8. 非難すべきところのない、健全なことばを用いなさい。そうすれば、敵対する者も、私たちについて、何も悪いことが言えなくなって、恥じ入ることになるでしょう。
  9. 奴隷には、すべての点で自分の主人に従って、満足を与え、口答えせず、
  10. 盗みをせず、努めて真実を表わすように勧めなさい。それは、彼らがあらゆることで、私たちの救い主である神の教えを飾るようになるためです。
  11. というのは、すべての人を救う神の恵みが現われ、
  12. 私たちに、不敬虔とこの世の欲とを捨て、この時代にあって、慎み深く、正しく、敬虔に生活し、
  13. 祝福された望み、すなわち、大いなる神であり私たちの救い主であるキリスト・イエスの栄光ある現われを待ち望むようにと教えさとしたからです。
  14. キリストが私たちのためにご自身をささげられたのは、私たちをすべての不法から贖い出し、良いわざに熱心なご自分の民を、ご自分のためにきよめるためでした。
  15. あなたは、これらのことを十分な権威をもって話し、勧め、また、責めなさい。だれにも軽んじられてはいけません。

第3章

  1. あなたは彼らに注意を与えて、支配者たちと権威者たちに服従し、従順で、すべての良いわざを進んでする者とならせなさい。
  2. また、だれをもそしらず、争わず、柔和で、すべての人に優しい態度を示す者とならせなさい。
  3. 私たちも以前は、愚かな者であり、不従順で、迷った者であり、いろいろな欲情と快楽の奴隷になり、悪意とねたみの中に生活し、憎まれ者であり、互いに憎み合う者でした。
  4. しかし、私たちの救い主なる神のいつくしみと人への愛とが現われたとき、
  5. 神は、私たちが行なった義のわざによってではなく、ご自分のあわれみのゆえに、聖霊による、新生と更新との洗いをもって私たちを救ってくださいました。
  6. 神は、この聖霊を、私たちの救い主なるイエス・キリストによって、私たちに豊かに注いでくださったのです。
  7. それは、私たちがキリストの恵みによって義と認められ、永遠のいのちの望みによって、相続人となるためです。
  8. これは信頼できることばですから、私は、あなたがこれらのことについて、確信をもって話すように願っています。それは、神を信じている人々が、良いわざに励むことを心がけるようになるためです。これらのことは良いことであって、人々に有益なことです。
  9. しかし、愚かな議論、系図、口論、律法についての論争などを避けなさい。それらは無益で、むだなものです。
  10. 分派を起こす者は、一、二度戒めてから、除名しなさい。
  11. このような人は、あなたも知っているとおり、堕落しており、自分で悪いと知りながら罪を犯しているのです。
  12. 私がアルテマスかテキコをあなたのもとに送ったら、あなたは、何としてでも、ニコポリにいる私のところに来てください。私はそこで冬を過ごすことに決めています。
  13. ぜひとも、律法学者ゼナスとアポロとが旅に出られるようにし、彼らが不自由しないように世話をしてあげなさい。
  14. 私たち一同も、なくてならないもののために、正しい仕事に励むように教えられなければなりません。それは、実を結ばない者にならないためです。
  15. 私といっしょにいる者たち一同が、あなたによろしくと言っています。私たちの信仰の友である人々に、よろしく言ってください。恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。