ヨブ記(口語訳旧約聖書(1955年版))
- 1. ヨブ記
- 1.1. 第1章
- 1.2. 第2章
- 1.3. 第3章
- 1.4. 第4章
- 1.5. 第5章
- 1.6. 第6章
- 1.7. 第7章
- 1.8. 第8章
- 1.9. 第9章
- 1.10. 第10章
- 1.11. 第11章
- 1.12. 第12章
- 1.13. 第13章
- 1.14. 第14章
- 1.15. 第15章
- 1.16. 第16章
- 1.17. 第17章
- 1.18. 第18章
- 1.19. 第19章
- 1.20. 第20章
- 1.21. 第21章
- 1.22. 第22章
- 1.23. 第23章
- 1.24. 第24章
- 1.25. 第25章
- 1.26. 第26章
- 1.27. 第27章
- 1.28. 第28章
- 1.29. 第29章
- 1.30. 第30章
- 1.31. 第31章
- 1.32. 第32章
- 1.33. 第33章
- 1.34. 第34章
- 1.35. 第35章
- 1.36. 第36章
- 1.37. 第37章
- 1.38. 第38章
- 1.39. 第39章
- 1.40. 第40章
- 1.41. 第41章
- 1.42. 第42章
ヨブ記
第1章
1:20このときヨブは起き上がり、上着を裂き、頭をそり、地に伏して拝し、 1:21そして言った、
また裸でかしこに帰ろう。
主が与え、主が取られたのだ。
主のみ名はほむべきかな」。
第2章
第3章
3:1この後、ヨブは口を開いて、自分の生れた日をのろった。 3:2すなわちヨブは言った、
『男の子が、胎にやどった』と言った夜も
そのようになれ。
3:4その日は暗くなるように。
神が上からこれを顧みられないように。
光がこれを照さないように。
3:5やみと暗黒がこれを取りもどすように。
雲が、その上にとどまるように。
日を暗くする者が、これを脅かすように。
3:6その夜は、暗やみが、これを捕えるように。
年の日のうちに加わらないように。
月の数にもはいらないように。
3:7また、その夜は、はらむことのないように。
喜びの声がそのうちに聞かれないように。
3:8日をのろう者が、これをのろうように。
レビヤタンを奮い起すに巧みな者が、
これをのろうように。
3:9その明けの星は暗くなるように。
光を望んでも、得られないように。
また、あけぼののまぶたを見ることのないように。
3:10これは、わたしの母の胎の戸を閉じず、
また悩みをわたしの目に隠さなかったからである。
腹から出たとき息が絶えなかったのか。
3:12なにゆえ、ひざが、わたしを受けたのか。
なにゆえ、乳ぶさがあって、
わたしはそれを吸ったのか。
3:13そうしなかったならば、
わたしは伏して休み、眠ったであろう。
そうすればわたしは安んじており、
3:14自分のために荒れ跡を築き直した
地の王たち、参議たち、
3:15あるいは、こがねを持ち、
しろがねを家に満たした
君たちと一緒にいたであろう。
3:16なにゆえ、わたしは人知れずおりる胎児のごとく、
光を見ないみどりごのようでなかったのか。
3:17かしこでは悪人も、あばれることをやめ、
うみ疲れた者も、休みを得、
3:18捕われ人も共に安らかにおり、
追い使う者の声を聞かない。
3:19小さい者も大きい者もそこにおり、
奴隷も、その主人から解き放される。
心の苦しむ者に命を賜わったのか。
3:21このような人は死を望んでも来ない、
これを求めることは隠れた宝を
掘るよりも、はなはだしい。
3:22彼らは墓を見いだすとき、非常に喜び楽しむのだ。
3:23なにゆえ、その道の隠された人に、
神が、まがきをめぐらされた人に、光を賜わるのか。
3:24わたしの嘆きはわが食物に代って来り、
わたしのうめきは水のように流れ出る。
3:25わたしの恐れるものが、わたしに臨み、
わたしの恐れおののくものが、わが身に及ぶ。
3:26わたしは安らかでなく、またおだやかでない。
わたしは休みを得ない、ただ悩みのみが来る」。
第4章
4:1その時、テマンびとエリパズが答えて言った、
あなたは腹を立てるでしょうか。
しかしだれが黙っておれましょう。
4:3見よ、あなたは多くの人を教えさとし、
衰えた手を強くした。
4:4あなたの言葉はつまずく者をたすけ起し、
かよわいひざを強くした。
4:5ところが今、この事があなたに臨むと、
あなたは耐え得ない。
この事があなたに触れると、あなたはおじ惑う。
4:6あなたが神を恐れていることは、
あなたのよりどころではないか。
あなたの道の全きことは、あなたの望みではないか。
4:7考えてみよ、だれが罪のないのに、
滅ぼされた者があるか。
どこに正しい者で、断ち滅ぼされた者があるか。
4:8わたしの見た所によれば、不義を耕し、
害悪をまく者は、それを刈り取っている。
4:9彼らは神のいぶきによって滅び、
その怒りの息によって消えうせる。
4:10ししのほえる声、たけきししの声はともにやみ、
若きししのきばは折られ、
4:11雄じしは獲物を得ずに滅び、
雌じしの子は散らされる。
わたしの耳はそのささやきを聞いた。
4:13すなわち人の熟睡するころ、
夜の幻によって思い乱れている時、
4:14恐れがわたしに臨んだので、おののき、
わたしの骨はことごとく震えた。
4:15時に、霊があって、わたしの顔の前を過ぎたので、
わたしの身の毛はよだった。
4:16そのものは立ちどまったが、
わたしはその姿を見わけることができなかった。
一つのかたちが、わたしの目の前にあった。
わたしは静かな声を聞いた、
4:17『人は神の前に正しくありえようか。
人はその造り主の前に清くありえようか。
4:18見よ、彼はそのしもべをさえ頼みとせず、
その天使をも誤れる者とみなされる。
4:19まして、泥の家に住む者、
ちりをその基とする者、
しみのようにつぶされる者。
4:20彼らは朝から夕までの間に打ち砕かれ、
顧みる者もなく、永遠に滅びる。
4:21もしその天幕の綱が
彼らのうちに取り去られるなら、
ついに悟ることもなく、死にうせるではないか』。
第5章
だれかあなたに答える者があるか。
どの聖者にあなたは頼もうとするのか。
5:2確かに、憤りは愚かな者を殺し、
ねたみはあさはかな者を死なせる。
5:3わたしは愚かな者の根を張るのを見た、
しかしわたしは、にわかにそのすみかをのろった。
5:4その子らは安きを得ず、
町の門でしえたげられても、これを救う者がない。
5:5その収穫は飢えた人が食べ、
いばらの中からさえ、これを奪う。
また、かわいた者はその財産をあえぎ求める。
5:6苦しみは、ちりから起るものでなく、
悩みは土から生じるものでない。
5:7人が生れて悩みを受けるのは、
火の子が上に飛ぶにひとしい。
神に、わたしの事をまかせる。
5:9彼は大いなる事をされるかたで、測り知れない、
その不思議なみわざは数えがたい。
5:10彼は地に雨を降らせ、野に水を送られる。
5:11彼は低い者を高くあげ、
悲しむ者を引き上げて、安全にされる。
5:12彼は悪賢い者の計りごとを敗られる。
それで何事もその手になし遂げることはできない。
5:13彼は賢い者を、彼ら自身の悪巧みによって捕え、
曲った者の計りごとをくつがえされる。
5:14彼らは昼も、やみに会い、
真昼にも、夜のように手探りする。
5:15彼は貧しい者を彼らの口のつるぎから救い、
また強い者の手から救われる。
5:16それゆえ乏しい者に望みがあり、
不義はその口を閉じる。
それゆえ全能者の懲しめを軽んじてはならない。
5:18彼は傷つけ、また包み、
撃ち、またその手をもっていやされる。
5:19彼はあなたを六つの悩みから救い、
七つのうちでも、災はあなたに触れることがない。
5:20ききんの時には、あなたをあがなって、
死を免れさせ、
いくさの時には、つるぎの力を免れさせられる。
5:21あなたは舌をもってむち打たれる時にも、
おおい隠され、
滅びが来る時でも、恐れることはない。
5:22あなたは滅びと、ききんとを笑い、
地の獣をも恐れることはない。
5:23あなたは野の石と契約を結び、
野の獣はあなたと和らぐからである。
5:24あなたは自分の天幕の安全なことを知り、
自分の家畜のおりを見回っても、欠けた物がなく、
5:25また、あなたの子孫の多くなり、
そのすえが地の草のようになるのを知るであろう。
5:26あなたは高齢に達して墓に入る、
あたかも麦束をその季節になって
打ち場に運びあげるようになるであろう。
5:27見よ、われわれの尋ねきわめた所はこのとおりだ。
あなたはこれを聞いて、みずから知るがよい」。
第6章
6:1ヨブは答えて言った、
同時にわたしの災も、はかりにかけられるように。
6:3そうすれば、これは海の砂よりも重いに相違ない。
それゆえ、わたしの言葉が軽率であったのだ。
6:4全能者の矢が、わたしのうちにあり、
わたしの霊はその毒を飲み、
神の恐るべき軍勢が、わたしを襲い攻めている。
6:5野ろばは、青草のあるのに鳴くであろうか。
牛は飼葉の上でうなるであろうか。
6:6味のない物は塩がなくて食べられようか。
すべりひゆのしるは味があろうか。
6:7わたしの食欲はこれに触れることを拒む。
これは、わたしのきらう食物のようだ。
どうか神がわたしの望むものをくださるように。
6:9どうか神がわたしを打ち滅ぼすことをよしとし、
み手を伸べてわたしを断たれるように。
6:10そうすれば、わたしはなお慰めを得、
激しい苦しみの中にあっても喜ぶであろう。
わたしは聖なる者の言葉を
否んだことがないからだ。
6:11わたしにどんな力があって、
なお待たねばならないのか。
わたしにどんな終りがあるので、
なお耐え忍ばねばならないのか。
6:12わたしの力は石の力のようであるのか。
わたしの肉は青銅のようであるのか。
6:13まことに、わたしのうちに助けはなく、
救われる望みは、わたしから追いやられた。
全能者を恐れることをすてる。
6:15わが兄弟たちは谷川のように、
過ぎ去る出水のように欺く。
6:16これは氷のために黒くなり、
そのうちに雪が隠れる。
6:17これは暖かになると消え去り、
暑くなるとその所からなくなる。
6:18隊商はその道を転じ、
むなしい所へ行って滅びる。
6:19テマの隊商はこれを望み、
シバの旅びとはこれを慕う。
6:20彼らはこれにたよったために失望し、
そこに来てみて、あわてる。
6:21あなたがたは今わたしにはこのような者となった。
あなたがたはわたしの災難を見て恐れた。
6:22わたしは言ったことがあるか、『わたしに与えよ』と、
あるいは『あなたがたの財産のうちから
わたしのために、まいないを贈れ』と、
6:23あるいは『あだの手からわたしを救い出せ』と、
あるいは『しえたげる者の手から
わたしをあがなえ』と。
わたしの誤っている所をわたしに悟らせよ。
6:25正しい言葉はいかに力のあるものか。
しかしあなたがたの戒めは何を戒めるのか。
6:26あなたがたは言葉を戒めうると思うのか。
望みの絶えた者の語ることは風のようなものだ。
6:27あなたがたは、みなしごのためにくじをひき、
あなたがたの友をさえ売り買いするであろう。
わたしはあなたがたの顔に向かって偽らない。
6:29どうぞ、思いなおせ、まちがってはならない。
さらに思いなおせ、
わたしの義は、なおわたしのうちにある。
6:30わたしの舌に不義があるか。
わたしの口は災を
わきまえることができぬであろうか。
第7章
激しい労務があるではないか。
またその日は雇人の日のようではないか。
7:2奴隷が夕暮を慕うように、
雇人がその賃銀を望むように、
7:3わたしは、むなしい月を持たせられ、
悩みの夜を与えられる。
7:4わたしは寝るときに言う、『いつ起きるだろうか』と。
しかし夜は長く、暁までころびまわる。
7:5わたしの肉はうじと土くれとをまとい、
わたしの皮は固まっては、またくずれる。
7:6わたしの日は機のひよりも速く、
望みをもたずに消え去る。
わたしの目は再び幸を見ることがない。
7:8わたしを見る者の目は、
かさねてわたしを見ることがなく、
あなたがわたしに目を向けられても、
わたしはいない。
7:9雲が消えて、なくなるように、
陰府に下る者は上がって来ることがない。
7:10彼は再びその家に帰らず、
彼の所も、もはや彼を認めない。
わたしの霊のもだえによって語り、
わたしの魂の苦しさによって嘆く。
7:12わたしは海であるのか、龍であるのか、
あなたはわたしの上に見張りを置かれる。
7:13『わたしの床はわたしを慰め、
わたしの寝床はわが嘆きを軽くする』と
わたしが言うとき、
7:14あなたは夢をもってわたしを驚かし、
幻をもってわたしを恐れさせられる。
7:15それゆえ、わたしは息の止まることを願い、
わが骨よりもむしろ死を選ぶ。
7:16わたしは命をいとう。
わたしは長く生きることを望まない。
わたしに構わないでください。
わたしの日は息にすぎないのだから。
7:17人は何者なので、あなたはこれを大きなものとし、
これにみ心をとめ、
7:18朝ごとに、これを尋ね、
絶え間なく、これを試みられるのか。
7:19いつまで、あなたはわたしに目を離さず、
つばをのむまも、わたしを捨てておかれないのか。
7:20人を監視される者よ、わたしが罪を犯したとて、
あなたに何をなしえようか。
なにゆえ、わたしをあなたの的とし、
わたしをあなたの重荷とされるのか。
7:21なにゆえ、わたしのとがをゆるさず、
わたしの不義を除かれないのか。
わたしはいま土の中に横たわる。
あなたがわたしを尋ねられても、
わたしはいないでしょう」。
第8章
8:1時にシュヒびとビルダデが答えて言った、
あなたの口の言葉は荒い風ではないか。
8:3神は公義を曲げられるであろうか。
全能者は正義を曲げられるであろうか。
8:4あなたの子たちが彼に罪を犯したので、
彼らをそのとがの手に渡されたのだ。
8:5あなたがもし神に求め、全能者に祈るならば、
8:6あなたがもし清く、正しくあるならば、
彼は必ずあなたのために立って、
あなたの正しいすみかを栄えさせられる。
8:7あなたの初めは小さくあっても、
あなたの終りは非常に大きくなるであろう。
先祖たちの尋ねきわめた事を学べ。
8:9われわれはただ、きのうからあった者で、
何も知らない、
われわれの世にある日は、影のようなものである。
8:10彼らはあなたに教え、あなたに語り、
その悟りから言葉を出さないであろうか。
葦は水のない所におい茂ることができようか。
8:12これはなお青くて、まだ刈られないのに、
すべての草に先だって枯れる。
8:13すべて神を忘れる者の道はこのとおりだ。
神を信じない者の望みは滅びる。
8:14その頼むところは断たれ、
その寄るところは、くもの巣のようだ。
8:15その家によりかかろうとすれば、家は立たず、
それにすがろうとしても、それは耐えない。
8:16彼は日の前に青々と茂り、
その若枝を園にはびこらせ、
8:17その根を石塚にからませ、
岩の間に生きていても、
8:18もしその所から取り除かれれば、
その所は彼を拒んで言うであろう、
『わたしはあなたを見たことがない』と。
8:19見よ、これこそ彼の道の喜びである、
そしてほかの者が地から生じるであろう。
また悪を行う者の手を支持されない。
8:21彼は笑いをもってあなたの口を満たし、
喜びの声をもってあなたのくちびるを満たされる。
8:22あなたを憎む者は恥を着せられ、
悪しき者の天幕はなくなる」。
第9章
9:1ヨブは答えて言った、
そのとおりであることを知っている。
しかし人はどうして神の前に正しくありえようか。
9:3よし彼と争おうとしても、
千に一つも答えることができない。
9:4彼は心賢く、力強くあられる。
だれが彼にむかい、おのれをかたくなにして、
栄えた者があるか。
9:5彼は、山を移されるが、山は知らない。
彼は怒りをもって、これらをくつがえされる。
9:6彼が、地を震い動かしてその所を離れさせられると、
その柱はゆらぐ。
9:7彼が日に命じられると、日は出ない。
彼はまた星を閉じこめられる。
9:8彼はただひとり天を張り、
海の波を踏まれた。
9:9彼は北斗、オリオン、
プレアデスおよび南の密室を造られた。
9:10彼が大いなる事をされることは測りがたく、
不思議な事をされることは数知れない。
9:11見よ、彼がわたしのかたわらを通られても、
わたしは彼を見ない。
彼は進み行かれるが、わたしは彼を認めない。
9:12見よ、彼が奪い去られるのに、
だれが彼をはばむことができるか。
だれが彼にむかって『あなたは何をするのか』と
言うことができるか。
ラハブを助ける者どもは彼のもとにかがんだ。
9:14どうしてわたしは彼に答え、
言葉を選んで、彼と議論することができよう。
9:15たといわたしは正しくても答えることができない。
わたしを責められる者に
あわれみを請わなければならない。
9:16たといわたしが呼ばわり、
彼がわたしに答えられても、
わたしの声に耳を傾けられたとは信じない。
9:17彼は大風をもってわたしを撃ち砕き、
ゆえなく、わたしに多くの傷を負わせ、
9:18わたしに息をつかせず、
苦い物をもってわたしを満たされる。
9:19力の争いであるならば、彼を見よ、
さばきの事であるならば、
だれが彼を呼び出すことができよう。
9:20たといわたしは正しくても、
わたしの口はわたしを罪ある者とする。
たといわたしは罪がなくても、
彼はわたしを曲った者とする。
9:21わたしは罪がない、しかしわたしは自分を知らない。
わたしは自分の命をいとう。
9:22皆同一である。それゆえ、わたしは言う、
『彼は罪のない者と、悪しき者とを
共に滅ぼされるのだ』と。
9:23災がにわかに人を殺すような事があると、
彼は罪のない者の苦難をあざ笑われる。
9:24世は悪人の手に渡されてある。
彼はその裁判人の顔をおおわれる。
もし彼でなければ、これはだれのしわざか。
飛び去って幸を見ない。
9:26これは走ること葦舟のごとく、
えじきに襲いかかる、わしのようだ。
9:27たといわたしは『わが嘆きを忘れ、
憂い顔をかえて元気よくなろう』と言っても、
9:28わたしはわがもろもろの苦しみを恐れる。
あなたがわたしを罪なき者とされないことを
わたしは知っているからだ。
9:29わたしは罪ある者とされている。
どうして、いたずらに労する必要があるか。
9:30たといわたしは雪で身を洗い、
灰汁で手を清めても、
9:31あなたはわたしを、みぞの中に投げ込まれるので、
わたしの着物も、わたしをいとうようになる。
9:32神はわたしのように人ではないゆえ、
わたしは彼に答えることができない。
われわれは共にさばきに臨むことができない。
9:33われわれの間には、
われわれふたりの上に手を置くべき仲裁者がない。
9:34どうか彼がそのつえをわたしから取り離し、
その怒りをもって、
わたしを恐れさせられないように。
9:35そうすれば、わたしは語って、
彼を恐れることはない。
わたしはみずからそのような者ではないからだ。
第10章
わたしは自分の嘆きを包まず言いあらわし、
わが魂の苦しみによって語ろう。
10:2わたしは神に申そう、
わたしを罪ある者とされないように。
なぜわたしと争われるかを知らせてほしい。
10:3あなたはしえたげをなし、み手のわざを捨て、
悪人の計画を照すことを良しとされるのか。
10:4あなたの持っておられるのは肉の目か、
あなたは人が見るように見られるのか。
10:5あなたの日は人の日のごとく、
あなたの年は人の年のようであるのか。
10:6あなたはなにゆえわたしのとがを尋ね、
わたしの罪を調べられるのか。
10:7あなたはわたしの罪のないことを知っておられる。
またあなたの手から救い出しうる者はない。
10:8あなたの手はわたしをかたどり、わたしを作った。
ところが今あなたはかえって、わたしを滅ぼされる。
10:9どうぞ覚えてください、
あなたは土くれをもってわたしを作られた事を。
ところが、わたしをちりに返そうとされるのか。
10:10あなたはわたしを乳のように注ぎ、
乾酪のように凝り固まらせたではないか。
10:11あなたは肉と皮とをわたしに着せ、
骨と筋とをもってわたしを編み、
10:12命といつくしみとをわたしに授け、
わたしを顧みてわが霊を守られた。
10:13しかしあなたはこれらの事をみ心に秘めおかれた。
この事があなたの心のうちにあった事を
わたしは知っている。
10:14わたしがもし罪を犯せば、
あなたはわたしに目をつけて、
わたしを罪から解き放されない。
10:15わたしがもし悪ければわたしはわざわいだ。
たといわたしが正しくても、
わたしは頭を上げることができない。
わたしは恥に満ち、悩みを見ているからだ。
10:16もし頭をあげれば、
あなたは、ししのようにわたしを追い、
わたしにむかって再びくすしき力をあらわされる。
10:17あなたは証人を入れ替えてわたしを攻め、
わたしにむかってあなたの怒りを増し、
新たに軍勢を出してわたしを攻められる。
わたしは息絶えて目に見られることなく、
10:19胎から墓に運ばれて、
初めからなかった者のようであったなら、
よかったのに。
10:20わたしの命の日はいくばくもないではないか。
どうぞ、しばしわたしを離れて、
少しく慰めを得させられるように。
10:21わたしが行って、帰ることのないその前に、
これを得させられるように。
わたしは暗き地、暗黒の地へ行く。
10:22これは暗き地で、やみにひとしく、
暗黒で秩序なく、光もやみのようだ」。
第11章
11:1そこでナアマびとゾパルは答えて言った、
口の達者な人は義とされるだろうか。
11:3あなたのむなしい言葉は人を沈黙させるだろうか。
あなたがあざけるとき、
人はあなたを恥じさせないだろうか。
11:4あなたは言う、『わたしの教は正しい、
わたしは神の目に潔い』と。
11:5どうぞ神が言葉を出し、
あなたにむかってくちびるを開き、
11:6知恵の秘密をあなたに示されるように。
神はさまざまの知識をもたれるからである。
それであなたは知るがよい、神はあなたの罪よりも
軽くあなたを罰せられることを。
全能者の限界を窮めることができるか。
11:8それは天よりも高い、あなたは何をなしうるか。
それは陰府よりも深い、あなたは何を知りうるか。
11:9その量は地よりも長く、海よりも広い。
11:10彼がもし行きめぐって人を捕え、
さばきに召し集められるとき、
だれが彼をはばむことができよう。
11:11彼は卑しい人間を知っておられるからだ。
彼は不義を見る時、
これに心をとめられぬであろうか。
11:12しかし野ろばの子が人として生れるとき、
愚かな者も悟りを得るであろう。
神に向かって手を伸べるであろう。
11:14もしあなたの手に不義があるなら、それを遠く去れ、
あなたの天幕に悪を住まわせてはならない。
11:15そうすれば、あなたは恥じることなく
顔をあげることができ、
堅く立って、恐れることはない。
11:16あなたは苦しみを忘れ、
あなたのこれを覚えることは、
流れ去った水のようになる。
11:17そしてあなたの命は真昼よりも光り輝き、
たとい暗くても朝のようになる。
11:18あなたは望みがあるゆえに安んじ、
保護されて安らかにいこうことができる。
11:19あなたは伏してやすみ、
あなたを恐れさせるものはない。
多くの者はあなたの好意を求めるであろう。
11:20しかし悪しき者の目は衰える。
彼らは逃げ場を失い、
その望みは息の絶えるにひとしい」。
第12章
12:1そこでヨブは答えて言った、
知恵はあなたがたと共に死ぬであろう。
12:3しかしわたしも、あなたがたと同様に悟りをもつ。
わたしはあなたがたに劣らない。
だれがこのような事を知らないだろうか。
12:4わたしは神に呼ばわって、聞かれた者であるのに、
その友の物笑いとなっている。
正しく全き人は物笑いとなる。
12:5安らかな者の思いには、
不幸な者に対する侮りがあって、
足のすべる者を待っている。
12:6かすめ奪う者の天幕は栄え、
神を怒らす者は安らかである。
自分の手に神を携えている者も同様だ。
それはあなたに教える。
空の鳥に問うてみよ、
それはあなたに告げる。
12:8あるいは地の草や木に問うてみよ、
彼らはあなたに教える。
海の魚もまたあなたに示す。
12:9これらすべてのもののうち、いずれか
主の手がこれをなしたことを知らぬ者があろうか。
12:10すべての生き物の命、
およびすべての人の息は彼の手のうちにある。
12:11口が食物を味わうように、
耳は言葉をわきまえないであろうか。
12:12老いた者には知恵があり、
命の長い者には悟りがある。
12:13知恵と力は神と共にあり、
深慮と悟りも彼のものである。
12:14彼が破壊すれば、再び建てることができない。
彼が人を閉じ込めれば、開き出すことができない。
12:15彼が水を止めれば、それはかれ、
彼が水を出せば、地をくつがえす。
12:16力と深き知恵は彼と共にあり、
惑わされる者も惑わす者も彼のものである。
12:17彼は議士たちを裸にして連れ行き、
さばきびとらを愚かにし、
12:18王たちのきずなを解き、
彼らの腰に腰帯を巻き、
12:19祭司たちを裸にして連れ行き、
力ある者を滅ぼし、
12:20みずから頼む者たちの言葉を奪い、
長老たちの分別を取り去り、
12:21君たちの上に侮りを注ぎ、
強い者たちの帯を解き、
12:22暗やみの中から隠れた事どもをあらわし、
暗黒を光に引き出し、
12:23国々を大きくし、またこれを滅ぼし、
国々を広くし、また捕え行き、
12:24地の民の長たちの悟りを奪い、
彼らを道なき荒野にさまよわせ、
12:25光なき暗やみに手探りさせ、
酔うた者のようによろめかせる。
第13章
これをことごとく見た。
わたしの耳はこれを聞いて悟った。
13:2あなたがたの知っている事は、わたしも知っている。
わたしはあなたがたに劣らない。
13:3しかしわたしは全能者に物を言おう、
わたしは神と論ずることを望む。
13:4あなたがたは偽りをもってうわべを繕う者、
皆、無用の医師だ。
13:5どうか、あなたがたは全く沈黙するように。
これがあなたがたの知恵であろう。
13:6今、わたしの論ずることを聞くがよい。
わたしの口で言い争うことに耳を傾けるがよい。
13:7あなたがたは神のために不義を言おうとするのか。
また彼のために偽りを述べるのか。
13:8あなたがたは彼にひいきしようとするのか。
神のために争おうとするのか。
13:9神があなたがたを調べられるとき、
あなたがたは無事だろうか。
あなたがたは人を欺くように
彼を欺くことができるか。
13:10あなたがたがもし、ひそかにひいきするならば、
彼は必ずあなたがたを責められる。
13:11その威厳はあなたがたを恐れさせないであろうか。
彼をおそれる恐れが
あなたがたに臨まないであろうか。
13:12あなたがたの格言は灰のことわざだ。
あなたがたの盾は土の盾だ。
13:13黙して、わたしにかかわるな、わたしは話そう。
何事でもわたしに来るなら、来るがよい。
13:14わたしはわが肉をわが歯に取り、
わが命をわが手のうちに置く。
13:15見よ、彼はわたしを殺すであろう。
わたしは絶望だ。
しかしなおわたしはわたしの道を
彼の前に守り抜こう。
13:16これこそわたしの救となる。神を信じない者は、
神の前に出ることができないからだ。
13:17あなたがたはよくわたしの言葉を聞き、
わたしの述べる所を耳に入れよ。
13:18見よ、わたしはすでにわたしの立ち場を言い並べた。
わたしは義とされることをみずから知っている。
13:19だれかわたしと言い争う事のできる者があろうか。
もしあるならば、わたしは黙して死ぬであろう。
13:20ただわたしに二つの事を許してください。
そうすれば、わたしはあなたの顔をさけて
隠れることはないでしょう。
13:21あなたの手をわたしから離してください。
あなたの恐るべき事をもって
わたしを恐れさせないでください。
13:22そしてお呼びください、わたしは答えます。
わたしに物を言わせて、
あなたご自身、わたしにお答えください。
13:23わたしのよこしまと、わたしの罪がどれほどあるか。
わたしのとがと罪とをわたしに知らせてください。
13:24なにゆえ、あなたはみ顔をかくし、
わたしをあなたの敵とされるのか。
13:25あなたは吹き回される木の葉をおどし、
干あがったもみがらを追われるのか。
13:26あなたはわたしについて苦き事どもを書きしるし、
わたしに若い時の罪を継がせ、
13:27わたしの足を足かせにはめ、
わたしのすべての道をうかがい、
わたしの足の周囲に限りをつけられる。
13:28このような人は腐れた物のように朽ち果て、
虫に食われた衣服のようにすたれる。
第14章
日が短く、悩みに満ちている。
14:2彼は花のように咲き出て枯れ、
影のように飛び去って、とどまらない。
14:3あなたはこのような者にさえ目を開き、
あなたの前に引き出して、さばかれるであろうか。
14:4だれが汚れたもののうちから清いものを
出すことができようか、ひとりもない。
14:5その日は定められ、
その月の数もあなたと共にあり、
あなたがその限りを定めて、
越えることのできないようにされたのだから、
14:6彼から目をはなし、手をひいてください。
そうすれば彼は雇人のように、
その日を楽しむことができるでしょう。
たとい切られてもまた芽をだし、
その若枝は絶えることがない。
14:8たといその根が地の中に老い、
その幹が土の中に枯れても、
14:9なお水の潤いにあえば芽をふき、
若木のように枝を出す。
14:10しかし人は死ねば消えうせる。
息が絶えれば、どこにおるか。
14:11水が湖から消え、
川がかれて、かわくように、
14:12人は伏して寝、また起きず、
天のつきるまで、目ざめず、
その眠りからさまされない。
14:13どうぞ、わたしを陰府にかくし、
あなたの怒りのやむまで、潜ませ、
わたしのために時を定めて、
わたしを覚えてください。
14:14人がもし死ねば、また生きるでしょうか。
わたしはわが服役の諸日の間、
わが解放の来るまで待つでしょう。
14:15あなたがお呼びになるとき、
わたしは答えるでしょう。
あなたはみ手のわざを顧みられるでしょう。
14:16その時あなたはわたしの歩みを数え、
わたしの罪を見のがされるでしょう。
14:17わたしのとがは袋の中に封じられ、
あなたはわたしの罪を塗りかくされるでしょう。
岩もその所から移される。
14:19水は石をうがち、
大水は地のちりを洗い去る。
このようにあなたは人の望みを断たれる。
14:20あなたはながく彼に勝って、彼を去り行かせ、
彼の顔かたちを変らせて追いやられる。
14:21彼の子らは尊くなっても、彼はそれを知らない、
卑しくなっても、それを悟らない。
14:22ただおのが身に痛みを覚え、
おのれのために嘆くのみである」。
第15章
15:1そこでテマンびとエリパズは答えて言った、
東風をもってその腹を満たすであろうか。
15:3役に立たない談話をもって論じるであろうか。
無益な言葉をもって争うであろうか。
15:4ところがあなたは神を恐れることを捨て、
神の前に祈る事をやめている。
15:5あなたの罪はあなたの口を教え、
あなたは悪賢い人の舌を選び用いる。
15:6あなたの口みずからあなたの罪を定める、
わたしではない。
あなたのくちびるがあなたに逆らって証明する。
山よりも先に生れたのか。
15:8あなたは神の会議にあずかったのか。
あなたは知恵を独占しているのか。
15:9あなたが知るものは
われわれも知るではないか。
あなたが悟るものは
われわれも悟るではないか。
15:10われわれの中にはしらがの人も、
年老いた人もあって、
あなたの父よりも年上だ。
15:11神の慰めおよびあなたに対するやさしい言葉も、
あなたにとって、あまりに小さいというのか。
15:12どうしてあなたの心は狂うのか。
どうしてあなたの目はしばたたくのか。
15:13あなたが神にむかって気をいらだて、
このような言葉をあなたの口から出すのはなぜか。
15:14人はいかなる者か、どうしてこれは清くありえよう。
女から生れた者は、どうして正しくありえよう。
15:15見よ、神はその聖なる者にすら信を置かれない、
もろもろの天も彼の目には清くない。
15:16まして憎むべき汚れた者、
また不義を水のように飲む人においては。
わたしは自分の見た事を述べよう。
15:18これは知者たちがその先祖からうけて、
隠す所なく語り伝えたものである。
15:19彼らにのみこの地は授けられて、
他国人はその中に行き来したことがなかった。
15:20悪しき人は一生の間、もだえ苦しむ。
残酷な人には年の数が定められている。
15:21その耳には恐ろしい音が聞え、
繁栄の時にも滅ぼす者が彼に臨む。
15:22彼は、暗やみから帰りうるとは信ぜず、
つるぎにねらわれる。
15:23彼は食物はどこにあるかと言いつつさまよい、
暗き日が手近に備えられてあるのを知る。
15:24悩みと苦しみとが彼を恐れさせ、
戦いの備えをした王のように彼に打ち勝つ。
15:25これは彼が神に逆らってその手を伸べ、
全能者に逆らって高慢にふるまい、
15:26盾の厚い面をもって強情に、
彼にはせ向かうからだ。
15:27また彼は脂肪をもってその顔をおおい、
その腰には脂肪の肉を集め、
15:28滅ぼされた町々に住み、
人の住まない家、荒塚となる所におるからだ。
15:29彼は富める者とならず、その富はながく続かない、
また地に根を張ることはない。
15:30彼は暗やみからのがれることができない。
炎はその若枝を枯らし、
その花は風に吹き去られる。
15:31彼をしてみずから欺いて、
むなしい事にたよらせてはならない。
その報いはむなしいからだ。
15:32彼の時のこない前にその事がなし遂げられ、
彼の枝は緑とならないであろう。
15:33彼はぶどうの木のように、
その熟さない実をふり落すであろう。
またオリブの木のように、その花を落すであろう。
15:34神を信じない者のやからは子なく、
まいないによる天幕は火で焼き滅ぼされるからだ。
15:35彼らは害悪をはらみ、不義を生み、
その腹は偽りをつくる」。
第16章
16:1そこでヨブは答えて言った、
あなたがたは皆人を慰めようとして、
かえって人を煩わす者だ。
16:3むなしき言葉に、はてしがあろうか。
あなたは何に激して答をするのか。
16:4わたしもあなたがたのように語ることができる。
もしあなたがたがわたしと代ったならば、
わたしは言葉を練って、あなたがたを攻め、
あなたがたに向かって頭を振ることができる。
16:5また口をもって、あなたがたを強くし、
くちびるの慰めをもって、あなたがたの苦しみを和らげることができる。
わたしの苦しみは和らげられない。
たといわたしは忍んでも、
どれほどそれがわたしを去るであろうか。
16:7まことに神は今わたしを疲れさせた。
彼はわたしのやからをことごとく荒した。
16:8彼はわたしを、しわ寄らせた。
これがわたしに対する証拠である。
またわたしのやせ衰えた姿が立って、わたしを攻め、
わたしの顔にむかって証明する。
16:9彼は怒ってわたしをかき裂き、わたしを憎み、
わたしに向かって歯をかみ鳴らした。
わたしの敵は目を鋭くして、わたしを攻める。
16:10人々はわたしに向かって口を張り、
侮ってわたしのほおを打ち、
ともに集まってわたしを攻める。
16:11神はわたしをよこしまな者に渡し、
悪人の手に投げいれられる。
16:12わたしは安らかであったのに、
彼はわたしを切り裂き、
首を捕えて、わたしを打ち砕き、
わたしを立てて的とされた。
16:13その射手はわたしを囲む。
彼は無慈悲にもわたしの腰を射通し、
わたしの肝を地に流れ出させられる。
16:14彼はわたしを打ち破って、破れに破れを加え、
勇士のようにわたしに、はせかかられる。
16:15わたしは荒布を膚に縫いつけ、
わたしの角をちりに伏せた。
16:16わたしの顔は泣いて赤くなり、
わたしのまぶたには深いやみがある。
16:17しかし、わたしの手には暴虐がなく、
わたしの祈は清い。
わたしの叫びに、休む所を得させるな。
16:19見よ、今でもわたしの証人は天にある。
わたしのために保証してくれる者は高い所にある。
16:20わたしの友はわたしをあざける、
しかしわたしの目は神に向かって涙を注ぐ。
16:21どうか彼が人のために神と弁論し、
人とその友との間をさばいてくれるように。
16:22数年過ぎ去れば、
わたしは帰らぬ旅路に行くであろう。
第17章
墓はわたしを待っている。
17:2まことにあざける者どもはわたしのまわりにあり、
わが目は常に彼らの侮りを見る。
17:3どうか、あなた自ら保証となられるように。
ほかにだれがわたしのために
保証となってくれる者があろうか。
17:4あなたは彼らの心を閉じて、
悟ることのないようにされた。
それゆえ、彼らに勝利を得させられるはずはない。
17:5分け前を得るために友を訴えるものは、
その子らの目がつぶれるであろう。
17:6彼はわたしを民の笑い草とされた。
わたしは顔につばきされる者となる。
17:7わが目は憂いによってかすみ、
わがからだはすべて影のようだ。
17:8正しい者はこれに驚き、
罪なき者は神を信ぜぬ者に対して憤る。
17:9それでもなお正しい者はその道を堅く保ち、
潔い手をもつ者はますます力を得る。
17:10しかし、あなたがたは皆再び来るがよい、
わたしはあなたがたのうちに賢い者を見ないのだ。
17:11わが日は過ぎ去り、わが計りごとは敗れ、
わが心の願いも敗れた。
17:12彼らは夜を昼に変える。
彼らは言う、『光が暗やみに近づいている』と。
17:13わたしがもし陰府をわたしの家として望み、
暗やみに寝床をのべ、
17:14穴に向かって『あなたはわたしの父である』と言い、
うじに向かって『あなたはわたしの母、
わたしの姉妹である』と言うならば、
17:15わたしの望みはどこにあるか、
だれがわたしの望みを見ることができようか。
17:16これは下って陰府の関門にいたり、
われわれは共にちりに下るであろうか」。
第18章
18:1そこでシュヒびとビルダデは答えて言った、
あなたはまず悟るがよい、
それからわれわれは論じよう。
18:3なぜ、われわれは獣のように思われるのか。
なぜ、あなたの目に愚かな者と見えるのか。
18:4怒っておのが身を裂く者よ、
あなたのために地は捨てられるだろうか。
岩はその所から移されるだろうか。
その火の炎は光を放たず、
18:6その天幕のうちの光は暗く、
彼の上のともしびは消える。
18:7その力ある歩みはせばめられ、
その計りごとは彼を倒す。
18:8彼は自分の足で網にかかり、
また落し穴の上を歩む。
18:9わなは彼のかかとを捕え、
網わなは彼を捕える。
18:10輪なわは彼を捕えるために地に隠され、
張り網は彼を捕えるために道に設けられる。
18:11恐ろしい事が四方にあって彼を恐れさせ、
その歩みにしたがって彼を追う。
18:12その力は飢え、
災は彼をつまずかすために備わっている。
18:13その皮膚は病によって食いつくされ、
死のういごは彼の手足を食いつくす。
18:14彼はその頼む所の天幕から引き離されて、
恐れの王のもとに追いやられる。
18:15彼に属さない者が彼の天幕に住み、
硫黄が彼のすまいの上にまき散らされる。
18:16下ではその根が枯れ、
上ではその枝が切られる。
18:17彼の形見は地から滅び、
彼の名はちまたに消える。
18:18彼は光からやみに追いやられ、
世の中から追い出される。
18:19彼はその民の中に子もなく、孫もなく、
彼のすみかには、ひとりも生き残る者はない。
18:20西の者は彼の日について驚き、
東の者はおじ恐れる。
18:21まことに、悪しき者のすまいはこのようであり、
神を知らない者の所はこのようである」。
第19章
19:1そこでヨブは答えて言った、
言葉をもってわたしを打ち砕くのか。
19:3あなたがたはすでに十度もわたしをはずかしめ、
わたしを悪くあしらってもなお恥じないのか。
19:4たといわたしが、まことにあやまったとしても、
そのあやまちは、わたし自身にとどまる。
19:5もしあなたがたが、
まことにわたしに向かって高ぶり、
わたしの恥を論じるならば、
19:6『神がわたしをしえたげ、
その網でわたしを囲まれたのだ』と知るべきだ。
19:7見よ、わたしが『暴虐』と叫んでも答えられず、
助けを呼び求めても、さばきはない。
19:8彼はわたしの道にかきをめぐらして、
越えることのできないようにし、
わたしの行く道に暗やみを置かれた。
19:9彼はわたしの栄えをわたしからはぎ取り、
わたしのこうべから冠を奪い、
19:10四方からわたしを取りこわして、うせさせ、
わたしの望みを木のように抜き去り、
19:11わたしに向かって怒りを燃やし、
わたしを敵のひとりのように思われた。
19:12その軍勢がいっせいに来て、
塁を築いて攻め寄せ、
わたしの天幕のまわりに陣を張った。
19:13彼はわたしの兄弟たちを
わたしから遠く離れさせられた。
わたしを知る人々は全くわたしに疎遠になった。
19:14わたしの親類および親しい友はわたしを見捨て、
19:15わたしの家に宿る者はわたしを忘れ、
わたしのはしためらはわたしを他人のように思い、
わたしは彼らの目に他国人となった。
19:16わたしがしもべを呼んでも、彼は答えず、
わたしは口をもって彼に請わなければならない。
19:17わたしの息はわが妻にいとわれ、
わたしは同じ腹の子たちにきらわれる。
19:18わらべたちさえもわたしを侮り、
わたしが起き上がれば、わたしをあざける。
19:19親しい人々は皆わたしをいみきらい、
わたしの愛した人々はわたしにそむいた。
19:20わたしの骨は皮と肉につき、
わたしはわずかに歯の皮をもってのがれた。
19:21わが友よ、わたしをあわれめ、わたしをあわれめ、
神のみ手がわたしを打ったからである。
19:22あなたがたは、なにゆえ神のようにわたしを責め、
わたしの肉をもって満足しないのか。
19:23どうか、わたしの言葉が、書きとめられるように。
どうか、わたしの言葉が、書物にしるされるように。
19:24鉄の筆と鉛とをもって、
ながく岩に刻みつけられるように。
19:25わたしは知る、
わたしをあがなう者は生きておられる、
後の日に彼は必ず地の上に立たれる。
19:26わたしの皮がこのように滅ぼされたのち、
わたしは肉を離れて神を見るであろう。
19:27しかもわたしの味方として見るであろう。
わたしの見る者はこれ以外のものではない。
わたしの心はこれを望んでこがれる。
19:28あなたがたがもし『われわれはどうして
彼を責めようか』と言い、
また『事の根源は彼のうちに見いだされる』
と言うならば、
19:29つるぎを恐れよ、
怒りはつるぎの罰をきたらすからだ。
これによって、あなたがたは、
さばきのあることを知るであろう」。
第20章
20:1そこでナアマびとゾパルは答えて言った、
これがために心中しきりに騒ぎ立つ。
20:3わたしはわたしをはずかしめる非難を聞く、
しかし、わたしの悟りの霊がわたしに答えさせる。
20:4あなたはこの事を知らないのか、
昔から地の上に人の置かれてよりこのかた、
20:5悪しき人の勝ち誇はしばらくであって、
神を信じない者の楽しみは
ただつかのまであることを。
20:6たといその高さが天に達し、
その頭が雲におよんでも、
20:7彼はおのれの糞のように、とこしえに滅び、
彼を見た者は言うであろう、『彼はどこにおるか』と。
20:8彼は夢のように飛び去って、再び見ることはない。
彼は夜の幻のように追い払われるであろう。
20:9彼を見た目はかさねて彼を見ることがなく、
彼のいた所も再び彼を見ることがなかろう。
20:10その子らは貧しい者に恵みを求め、
その手は彼の貨財を償うであろう。
20:11その骨には若い力が満ちている、
しかしそれは彼と共にちりに伏すであろう。
20:12たとい悪は彼の口に甘く、
これを舌の裏にかくし、
20:13これを惜しんで捨てることなく、
口の中に含んでいても、
20:14その食物は彼の腹の中で変り、
彼の内で毒蛇の毒となる。
20:15彼は貨財をのんでも、またそれを吐き出す、
神がそれを彼の腹から押し出されるからだ。
20:16彼は毒蛇の毒を吸い、
まむしの舌は彼を殺すであろう。
20:17彼は蜜と凝乳の流れる川々を見ることができない。
20:18彼はほねおって獲たものを返して、
それを食うことができない。
その商いによって得た利益をもって
楽しむことができない。
20:19彼が貧しい者をしえたげ、これを捨てたからだ。
彼は家を奪い取っても、
それを建てることができない。
20:20彼の欲張りは足ることを知らぬゆえ、
その楽しむ何物をも救うことができないであろう。
20:21彼が残して食べなかった物とては一つもない。
それゆえ、その繁栄はながく続かないであろう。
20:22その力の満ちている時、彼は窮境に陥り、
悩みの手がことごとく彼の上に臨むであろう。
20:23彼がその腹を満たそうとすれば、
神はその激しい怒りを送って、
それを彼の上に降り注ぎ、彼の食物とされる。
20:24彼は鉄の武器を免れても、
青銅の矢は彼を射通すであろう。
20:25彼がこれをその身から引き抜けば、
きらめく矢じりがその肝から出てきて、
恐れが彼の上に臨む。
20:26もろもろの暗黒が彼の宝物のためにたくわえられ、
人が吹き起したものでない火が彼を焼きつくし、
その天幕に残っている者を滅ぼすであろう。
20:27天は彼の罪をあらわし、
地は起って彼を攻めるであろう。
20:28その家の財産は奪い去られ、
神の怒りの日に消えうせるであろう。
20:29これが悪しき人の神から受ける分、
神によって定められた嗣業である」。
第21章
21:1そこでヨブは答えて言った、
これをもって、あなたがたの慰めとするがよい。
21:3まずわたしをゆるして語らせなさい。
わたしが語ったのち、あざけるのもよかろう。
21:4わたしのつぶやきは人に対してであろうか。
わたしはどうして、いらだたないでいられようか。
21:5あなたがたはわたしを見て、驚き、
手を口にあてるがよい。
21:6わたしはこれを思うと恐ろしくなって、
からだがしきりに震えわななく。
21:7なにゆえ悪しき人が生きながらえ、
老齢に達し、かつ力強くなるのか。
21:8その子らは彼らの前に堅く立ち、
その子孫もその目の前に堅く立つ。
21:9その家は安らかで、恐れがなく、
神のつえは彼らの上に臨むことがない。
21:10その雄牛は種を与えて、誤ることなく、
その雌牛は子を産んで、そこなうことがない。
21:11彼らはその小さい者どもを群れのように連れ出し、
その子らは舞い踊る。
21:12彼らは手鼓と琴に合わせて歌い、
笛の音によって楽しみ、
21:13その日をさいわいに過ごし、
安らかに陰府にくだる。
21:14彼らは神に言う、『われわれを離れよ、
われわれはあなたの道を知ることを好まない。
21:15全能者は何者なので、
われわれはこれに仕えねばならないのか。
われわれはこれに祈っても、なんの益があるか』と。
21:16見よ、彼らの繁栄は彼らの手にあるではないか。
悪人の計りごとは、わたしの遠く及ぶ所でない。
21:17悪人のともしびの消されること、
幾たびあるか。
その災の彼らの上に臨むこと、
神がその怒りをもって苦しみを与えられること、
幾たびあるか。
21:18彼らが風の前のわらのようになること、
あらしに吹き去られるもみがらのようになること、
幾たびあるか。
21:19あなたがたは言う、
『神は彼らの罪を積みたくわえて、
その子らに報いられるのだ』と。
どうかそれを彼ら自身に報いて、
彼らにその罪を知らせられるように。
21:20すなわち彼ら自身の目にその滅びを見させ、
全能者の怒りを彼らに飲ませられるように。
21:21その月の数のつきるとき、
彼らはその後の家になんのかかわる所があろうか。
21:22神は天にある者たちをさえ、さばかれるのに、
だれが神に知識を教えることができようか。
21:23ある者は繁栄をきわめ、
全く安らかに、かつおだやかに死に、
21:24そのからだには脂肪が満ち、
その骨の髄は潤っている。
21:25ある者は心を苦しめて死に、
なんの幸をも味わうことがない。
21:26彼らはひとしくちりに伏し、
うじにおおわれる。
わたしを害しようとするたくらみを知る。
21:28あなたがたは言う、『王侯の家はどこにあるか、
悪人の住む天幕はどこにあるか』と。
21:29あなたがたは道行く人々に問わなかったか、
彼らの証言を受け入れないのか。
21:30すなわち、災の日に悪人は免れ、
激しい怒りの日に彼は救い出される。
21:31だれが彼に向かって、
その道を告げ知らせる者があるか、
だれが彼のした事を彼に報いる者があるか。
21:32彼はかかれて墓に行き、
塚の上で見張りされ、
21:33谷の土くれも彼には快く、
すべての人はそのあとに従う。
彼の前に行った者も数えきれない。
21:34それで、あなたがたはどうしてむなしい事をもって、
わたしを慰めようとするのか。
あなたがたの答は偽り以外の何ものでもない」。
第22章
22:1そこでテマンびとエリパズは答えて言った、
賢い人も、ただ自身を益するのみである。
22:3あなたが正しくても、全能者になんの喜びがあろう。
あなたが自分の道を全うしても、
彼になんの利益があろう。
22:4神はあなたが神を恐れることのゆえに、
あなたを責め、あなたをさばかれるであろうか。
22:5あなたの悪は大きいではないか。
あなたの罪は、はてしがない。
22:6あなたはゆえなく兄弟のものを質にとり、
裸な者の着物をはぎ取り、
22:7疲れた者に水を飲ませず、
飢えた者に食物を与えなかった。
22:8力ある人は土地を得、
名ある人はそのうちに住んだ。
22:9あなたは、やもめをむなしく去らせた。
みなしごの腕は折られた。
22:10それゆえ、わなはあなたをめぐり、
恐怖は、にわかにあなたを驚かす。
22:11あなたの光は暗くされ、
あなたは見ることができない。
大水はあなたをおおうであろう。
22:12神は天に高くおられるではないか。
見よ、いと高き星を。いかに高いことよ。
22:13それであなたは言う、『神は何を知っておられるか。
彼は黒雲を通して、さばくことができるのか。
22:14濃い雲が彼をおおい隠すと、
彼は見ることができない。
彼は天の大空を歩まれるのだ』と。
22:15あなたは悪しき人々が踏んだ
いにしえの道を守ろうとするのか。
22:16彼らは時がこないうちに取り去られ、
その基は川のように押し流された。
22:17彼らは神に言った、『われわれを離れてください』と、
また『全能者はわれわれに何をなしえようか』と。
22:18しかし神は彼らの家を良い物で満たされた。
ただし悪人の計りごとは
わたしのくみする所ではない。
22:19正しい者はこれを見て喜び、
罪なき者は彼らをあざ笑って言う、
22:20『まことにわれわれのあだは滅ぼされ、
その残した物は火で焼き滅ぼされた』と。
そうすれば幸福があなたに来るでしょう。
22:22どうか、彼の口から教を受け、
その言葉をあなたの心におさめるように。
22:23あなたがもし全能者に立ち返って、おのれを低くし、
あなたの天幕から不義を除き去り、
22:24こがねをちりの中に置き、
オフルのこがねを谷川の石の中に置き、
22:25全能者があなたのこがねとなり、
あなたの貴重なしろがねとなるならば、
22:26その時、あなたは全能者を喜び、
神に向かって顔をあげることができる。
22:27あなたが彼に祈るならば、彼はあなたに聞かれる。
そしてあなたは自分の誓いを果す。
22:28あなたが事をなそうと定めるならば、
あなたはその事を成就し、
あなたの道には光が輝く。
22:29彼は高ぶる者を低くされるが、
へりくだる者を救われるからだ。
22:30彼は罪のない者を救われる。
あなたはその手の潔いことによって、
救われるであろう」。
第23章
23:1そこでヨブは答えて言った、
彼の手はわたしの嘆きにかかわらず、重い。
23:3どうか、彼を尋ねてどこで会えるかを知り、
そのみ座に至ることができるように。
23:4わたしは彼の前にわたしの訴えをならべ、
口をきわめて論議するであろう。
23:5わたしは、わたしに答えられるみ言葉を知り、
わたしに言われる所を悟ろう。
23:6彼は大いなる力をもって、
わたしと争われるであろうか、
いな、かえってわたしを顧みられるであろう。
23:7かしこでは正しい人は彼と言い争うことができる。
そうすれば、わたしはわたしをさばく者から
永久に救われるであろう。
退いても、彼を認めることができない。
23:9左の方に尋ねても、会うことができない。
右の方に向かっても、見ることができない。
23:10しかし彼はわたしの歩む道を知っておられる。
彼がわたしを試みられるとき、
わたしは金のように出て来るであろう。
23:11わたしの足は彼の歩みに堅く従った。
わたしは彼の道を守って離れなかった。
23:12わたしは彼のくちびるの命令にそむかず、
その口の言葉をわたしの胸にたくわえた。
23:13しかし彼は変ることはない。
だれが彼をひるがえすことができようか。
彼はその心の欲するところを行われるのだ。
23:14彼はわたしのために定めた事をなし遂げられる。
そしてこのような事が多く彼の心にある。
23:15それゆえ、わたしは彼の前におののく。
わたしは考えるとき、彼を恐れる。
23:16神はわたしの心を弱くされた。
全能者はわたしを恐れさせられた。
23:17わたしは、やみによって閉じこめられ、
暗黒がわたしの顔をおおっている。
第24章
定めておかれないのか。
なにゆえ、彼を知る者がその日を見ないのか。
24:2世には地境を移す者、
群れを奪ってそれを飼う者、
24:3みなしごのろばを追いやる者、
やもめの牛を質に取る者、
24:4貧しい者を道から押しのける者がある。
世の弱い者は皆彼らをさけて身をかくす。
24:5見よ、彼らは荒野におる野ろばのように出て働き、
野で獲物を求めて、その子らの食物とする。
24:6彼らは畑でそのまぐさを刈り、
また悪人のぶどう畑で拾い集める。
24:7彼らは着る物がなく、裸で夜を過ごし、
寒さに身をおおうべき物もない。
24:8彼らは山の雨にぬれ、しのぎ場もなく岩にすがる。
24:9(みなしごをその母のふところから奪い、
貧しい者の幼な子を質にとる者がある。)
24:10彼らは着る物がなく、裸で歩き、
飢えつつ麦束を運び、
24:11悪人のオリブ並み木の中で油をしぼり、
酒ぶねを踏んでも、かわきを覚える。
24:12町の中から死のうめきが起り、
傷ついた者の魂が助けを呼び求める。
しかし神は彼らの祈を顧みられない。
24:13光にそむく者たちがある。
彼らは光の道を知らず、光の道にとどまらない。
24:14人を殺す者は暗いうちに起き出て
弱い者と貧しい者を殺し、
夜は盗びととなる。
24:15姦淫する者の目はたそがれを待って、
『だれもわたしを見ていないだろう』と言い、
顔におおう物を当てる。
24:16彼らは暗やみで家をうがち、
昼は閉じこもって光を知らない。
24:17彼らには暗黒は朝である。
彼らは暗黒の恐れを友とするからだ。
『彼らは水のおもてにすみやかに流れ去り、
その受ける分は地でのろわれ、
酒ぶねを踏む者はだれも
彼らのぶどう畑の道に行かない。
24:19ひでりと熱さは雪水を奪い去る、
陰府が罪を犯した者に対するも、これと同様だ。
24:20町の広場は彼らを忘れ、
彼らの名は覚えられることなく、
不義は木の折られるように折られる』と。
やもめをあわれむことをしない。
24:22しかし神はその力をもって、
強い人々を生きながらえさせられる。
彼らは生きる望みのない時にも起きあがる。
24:23神が彼らに安全を与えられるので、
彼らは安らかである。
神の目は彼らの道の上にある。
24:24彼らはしばし高められて、いなくなり、
ぜにあおいのように枯れて消えうせ、
麦の穂先のように切り取られる。
24:25もし、そうでないなら、
だれがわたしにその偽りを証明し、
わが言葉のむなしいことを示しうるだろうか」。
第25章
25:1そこでシュヒびとビルダデは答えて言った、
彼は高き所で平和を施される。
25:3その軍勢は数えることができるか。
何物かその光に浴さないものがあるか。
25:4それで人はどうして神の前に正しくありえようか。
女から生れた者がどうして清くありえようか。
25:5見よ、月さえも輝かず、
星も彼の目には清くない。
25:6うじのような人、
虫のような人の子はなおさらである」。
第26章
26:1そこでヨブは答えて言った、
気力のない腕をどれほど救ったかしれない。
26:3知恵のない者をどれほど教えたかしれない。
悟りをどれほど多く示したかしれない。
26:4あなたはだれの助けによって言葉をだしたのか。
あなたから出たのはだれの霊なのか。
26:5亡霊は水およびその中に住むものの下に震う。
26:6神の前では陰府も裸である。
滅びの穴もおおい隠すものはない。
26:7彼は北の天を空間に張り、
地を何もない所に掛けられる。
26:8彼は水を濃い雲の中に包まれるが、
その下の雲は裂けない。
26:9彼は月のおもてをおおい隠して、
雲をその上にのべ、
26:10水のおもてに円を描いて、
光とやみとの境とされた。
26:11彼が戒めると、天の柱は震い、かつ驚く。
26:12彼はその力をもって海を静め、
その知恵をもってラハブを打ち砕き、
26:13その息をもって天を晴れわたらせ、
その手をもって逃げるへびを突き通される。
26:14見よ、これらはただ彼の道の端にすぎない。
われわれが彼について聞く所は
いかにかすかなささやきであろう。
しかし、その力のとどろきに至っては、
だれが悟ることができるか」。
第27章
27:1ヨブはまた言葉をついで言った、
彼はわたしの義を奪い去られた。
全能者はわたしの魂を悩まされた。
27:3わたしの息がわたしのうちにあり、
神の息がわたしの鼻にある間、
27:4わたしのくちびるは不義を言わない、
わたしの舌は偽りを語らない。
27:5わたしは断じて、あなたがたを正しいとは認めない。
わたしは死ぬまで、潔白を主張してやめない。
27:6わたしは堅くわが義を保って捨てない。
わたしは今まで一日も心に責められた事がない。
わたしに逆らう者は
不義なる者のようになるように。
27:8神が彼を断ち、その魂を抜きとられるとき、
神を信じない者になんの望みがあろう。
27:9災が彼に臨むとき、
神はその叫びを聞かれるであろうか。
27:10彼は全能者を喜ぶであろうか、
常に神を呼ぶであろうか。
全能者と共にあるものを隠すことをしない。
27:12見よ、あなたがたは皆みずからこれを見た、
それなのに、どうしてむなしい者となったのか。
圧制者の全能者から受ける嗣業である。
27:14その子らがふえればつるぎに渡され、
その子孫は食物に飽きることがない。
27:15その生き残った者は疫病で死んで埋められ、
そのやもめらは泣き悲しむことをしない。
27:16たとい彼は銀をちりのように積み、
衣服を土のように備えても、
27:17その備えるものは正しい人がこれを着、
その銀は罪なき者が分かち取るであろう。
27:18彼の建てる家は、くもの巣のようであり、
番人の造る小屋のようである。
27:19彼は富める身で寝ても、再び富むことがなく、
目を開けばその富はない。
27:20恐ろしい事が大水のように彼を襲い、
夜はつむじ風が彼を奪い去る。
27:21東風が彼を揚げると、彼は去り、
彼をその所から吹き払う。
27:22それは彼を投げつけて、あわれむことなく、
彼はその力からのがれようと、もがく。
27:23それは彼に向かって手を鳴らし、
あざけり笑って、その所から出て行かせる。
第28章
精錬するこがねには出どころがある。
28:2くろがねは土から取り、
あかがねは石から溶かして取る。
28:3人は暗やみを破り、
いやはてまでも尋ねきわめて、
暗やみおよび暗黒の中から鉱石を取る。
28:4彼らは人の住む所を離れて縦穴をうがち、
道行く人に忘れられ、
人を離れて身をつりさげ、揺れ動く。
28:5地はそこから食物を出す。
その下は火でくつがえされるようにくつがえる。
28:6その石はサファイヤのある所、
そこにはまた金塊がある。
28:7その道は猛禽も知らず、たかの目もこれを見ず、
28:8猛獣もこれを踏まず、ししもこれを通らなかった。
28:9人は堅い岩に手をくだして、
山を根元からくつがえす。
28:10彼は岩に坑道を掘り、
その目はもろもろの尊い物を見る。
28:11彼は水路をふさいで、漏れないようにし、
隠れた物を光に取り出す。
悟りのある所はどこか。
28:13人はそこに至る道を知らない、
また生ける者の地でそれを獲ることができない。
28:14淵は言う、『それはわたしのうちにない』と。
また海は言う、『わたしのもとにない』と。
28:15精金もこれと換えることはできない。
銀も量ってその価とすることはできない。
28:16オフルの金をもってしても、
その価を量ることはできない。
尊い縞めのうも、サファイヤも同様である。
28:17こがねも、玻璃もこれに並ぶことができない。
また精金の器物もこれと換えることができない。
28:18さんごも水晶も言うに足りない。
知恵を得るのは真珠を得るのにまさる。
28:19エチオピヤのトパズもこれに並ぶことができない。
純金をもってしても、その価を量ることはできない。
28:20それでは知恵はどこから来るか。
悟りのある所はどこか。
28:21これはすべての生き物の目に隠され、
空の鳥にも隠されている。
28:22滅びも死も言う、
『われわれはそのうわさを耳に聞いただけだ』。
28:23神はこれに至る道を悟っておられる、
彼はそのある所を知っておられる。
28:24彼は地の果までもみそなわし、
天が下を見きわめられるからだ。
28:25彼が風に重さを与え、
水をますで量られたとき、
28:26彼が雨のために規定を設け、
雷のひらめきのために道を設けられたとき、
28:27彼は知恵を見て、これをあらわし、
これを確かめ、これをきわめられた。
28:28そして人に言われた、
『見よ、主を恐れることは知恵である、
悪を離れることは悟りである』と」。
第29章
29:1ヨブはまた言葉をついで言った、
神がわたしを守ってくださった日のようで
あったらよいのだが。
29:3あの時には、彼のともしびがわたしの頭の上に輝き、
彼の光によってわたしは暗やみを歩んだ。
29:4わたしの盛んな時のようであったならよいのだが。
あの時には、神の親しみが
わたしの天幕の上にあった。
29:5あの時には、全能者がなおわたしと共にいまし、
わたしの子供たちもわたしの周囲にいた。
29:6あの時、わたしの足跡は乳で洗われ、
岩もわたしのために油の流れを注ぎだした。
29:7あの時には、わたしは町の門に出て行き、
わたしの座を広場に設けた。
29:8若い者はわたしを見てしりぞき、
老いた者は身をおこして立ち、
29:9君たる者も物言うことをやめて、
その口に手を当て、
29:10尊い者も声をおさめて、
その舌を上あごにつけた。
29:11耳に聞いた者はわたしを祝福された者となし、
目に見た者はこれをあかしした。
29:12これは助けを求める貧しい者を救い、
また、みなしごおよび助ける人のない者を
救ったからである。
29:13今にも滅びようとした者の祝福がわたしに来た。
わたしはまたやもめの心をして喜び歌わせた。
29:14わたしは正義を着、正義はわたしをおおった。
わたしの公義は上着のごとく、
また冠のようであった。
29:15わたしは目しいの目となり、
足なえの足となり、
29:16貧しい者の父となり、
知らない人の訴えの理由を調べてやった。
29:17わたしはまた悪しき者のきばを折り、
その歯の間から獲物を引き出した。
29:18その時、わたしは言った、
『わたしは自分の巣の中で死に、
わたしの日は砂のように多くなるであろう。
29:19わたしの根は水のほとりにはびこり、
露は夜もすがらわたしの枝におくであろう。
29:20わたしの栄えはわたしと共に新しく、
わたしの弓はわたしの手にいつも強い』と。
黙して、わたしの教に従った。
29:22わたしが言った後は彼らは再び言わなかった。
わたしの言葉は彼らの上に
雨のように降りそそいだ。
29:23彼らは雨を待つように、わたしを待ち望み、
春の雨を仰ぐように口を開いて仰いだ。
29:24彼らが希望を失った時にも、
わたしは彼らにむかってほほえんだ。
彼らはわたしの顔の光を除くことができなかった。
29:25わたしは彼らのために道を選び、
そのかしらとして座し、
軍中の王のようにしており、
嘆く者を慰める人のようであった。
第30章
かえってわたしをあざ笑う。
彼らの父はわたしが卑しめて、
群れの犬と一緒にさえしなかった者だ。
30:2彼らの手の力からわたしは何を得るであろうか、
彼らはその気力がすでに衰えた人々だ。
30:3彼らは乏しさと激しい飢えとによって、
かわいた荒れ地をかむ。
30:4彼らは、ぜにあおいおよび灌木の葉を摘み、
れだまの根をもって身を暖める。
30:5彼らは人々の中から追いだされ、
盗びとを追うように、人々は彼らを追い呼ばわる。
30:6彼らは急流の谷間に住み、
土の穴または岩の穴におり、
30:7灌木の中にいななき、いらくさの下に押し合う。
30:8彼らは愚かな者の子、また卑しい者の子であって、
国から追いだされた者だ。
彼らの笑い草となった。
30:10彼らはわたしをいとい、遠くわたしをはなれ、
わたしの顔につばきすることも、ためらわない。
30:11神がわたしの綱を解いて、
わたしを卑しめられたので、
彼らもわたしの前に慎みを捨てた。
30:12このともがらはわたしの右に立ち上がり、
わたしを追いのけ、
わたしにむかって滅びの道を築く。
30:13彼らはわたしの道をこわし、わたしの災を促す。
これをさし止める者はない。
30:14彼らは広い破れ口からはいるように進みきたり、
破壊の中をおし寄せる。
30:15恐ろしい事はわたしに臨み、
わたしの誉は風のように吹き払われ、
わたしの繁栄は雲のように消えうせた。
悩みの日はわたしを捕えた。
30:17夜はわたしの骨を激しく悩まし、
わたしをかむ苦しみは、やむことがない。
30:18それは暴力をもって、わたしの着物を捕え、
はだ着のえりのように、わたしをしめつける。
30:19神がわたしを泥の中に投げ入れられたので、
わたしはちり灰のようになった。
30:20わたしがあなたにむかって呼ばわっても、
あなたは答えられない。
わたしが立っていても、あなたは顧みられない。
30:21あなたは変って、わたしに無情な者となり、
み手の力をもってわたしを攻め悩まされる。
30:22あなたはわたしを揚げて風の上に乗せ、
大風のうなり声の中に、もませられる。
30:23わたしは知っている、あなたはわたしを死に帰らせ、
すべての生き物の集まる家に帰らせられることを。
手を伸べないであろうか、
災の中にある者は助けを呼び求めないであろうか。
30:25わたしは苦しい日を送る者のために
泣かなかったか。
わたしの魂は貧しい人のために
悲しまなかったか。
30:26しかしわたしが幸を望んだのに災が来た。
光を待ち望んだのにやみが来た。
30:27わたしのはらわたは沸きかえって、静まらない。
悩みの日がわたしに近づいた。
30:28わたしは日の光によらずに黒くなって歩き、
公会の中に立って助けを呼び求める。
30:29わたしは山犬の兄弟となり、
だちょうの友となった。
30:30わたしの皮膚は黒くなって、はげ落ち、
わたしの骨は熱さによって燃え、
30:31わたしの琴は悲しみの音となり、
わたしの笛は泣く者の声となった。
第31章
契約を結んだ、
どうして、おとめを慕うことができようか。
31:2もしそうすれば上から神の下される分は
どんなであろうか。
高き所から全能者の与えられる嗣業は
どんなであろうか。
31:3不義なる者には災が下らないであろうか。
悪をなす者には災難が臨まないであろうか。
31:4彼はわたしの道をみそなわし、
わたしの歩みをことごとく数えられぬであろうか。
31:5もし、わたしがうそと共に歩み、
わたしの足が偽りにむかって
急いだことがあるなら、
31:6(正しいはかりをもってわたしを量れ、
そうすれば神はわたしの潔白を知られるであろう。)
31:7もしわたしの歩みが、道をはなれ、
わたしの心がわたしの目にしたがって歩み、
わたしの手に汚れがついていたなら、
31:8わたしのまいたのを他の人が食べ、
わたしのために成長するものが、
抜き取られてもかまわない。
31:9もし、わたしの心が、女に迷ったことがあるか、
またわたしが隣り人の門で
待ち伏せしたことがあるなら、
31:10わたしの妻が他の人のためにうすをひき、
他の人が彼女の上に寝てもかまわない。
31:11これは重い罪であって、
さばきびとに罰せられるべき悪事だからである。
31:12これは滅びに至るまでも焼きつくす火であって、
わたしのすべての産業を根こそぎ焼くであろう。
31:13わたしのしもべ、また、はしためが
わたしと言い争ったときに、
わたしがもしその言い分を退けたことがあるなら、
31:14神が立ち上がられるとき、わたしはどうしようか、
神が尋ねられるとき、なんとお答えしようか。
31:15わたしを胎内に造られた者は、
彼をも造られたのではないか。
われわれを腹の内に形造られた者は、
ただひとりではないか。
31:16わたしがもし貧しい者の願いを退け、
やもめの目を衰えさせ、
31:17あるいはわたしひとりで食物を食べて、
みなしごに食べさせなかったことがあるなら、
31:18(わたしは彼の幼い時から父のように彼を育て、
またその母の胎を出たときから彼を導いた。)
31:19もし着物がないために死のうとする者や、
身をおおう物のない貧しい人をわたしが見た時に、
31:20その腰がわたしを祝福せず、
また彼がわたしの羊の毛で
暖まらなかったことがあるなら、
31:21もしわたしを助ける者が門におるのを見て、
みなしごにむかってわたしの手を
振り上げたことがあるなら、
31:22わたしの肩骨が、肩から落ち、
わたしの腕が、つけ根から折れてもかまわない。
31:23わたしは神から出る災を恐れる、
その威光の前には何事もなすことはできない。
31:24わたしがもし金をわが望みとし、
精金をわが頼みと言ったことがあるなら、
31:25わたしがもしわが富の大いなる事と、
わたしの手に多くの物を獲た事とを
喜んだことがあるなら、
31:26わたしがもし日の輝くのを見、
または月の照りわたって動くのを見た時、
31:27心ひそかに迷って、手に口づけしたことがあるなら、
31:28これもまたさばきびとに罰せらるべき悪事だ。
わたしは上なる神を欺いたからである。
31:29わたしがもしわたしを憎む者の滅びるのを喜び、
または災が彼に臨んだとき、
勝ち誇ったことがあるなら、
31:30(わたしはわが口に罪を犯させず、
のろいをもって彼の命を求めたことはなかった。)
31:31もし、わたしの天幕の人々で、
『だれか彼の肉に飽きなかった者があるか』と、
言わなかったことがあるなら、
31:32(他国人はちまたに宿らず、
わたしはわが門を旅びとに開いた。)
31:33わたしがもし人々の前にわたしのとがをおおい、
わたしの悪事を胸の中に隠したことがあるなら、
31:34わたしが大衆を恐れ、宗族の侮りにおぢて、
口を閉じ、門を出なかったことがあるなら、
31:35ああ、わたしに聞いてくれる者があればよいのだが、
(わたしのかきはんがここにある。
どうか、全能者がわたしに答えられるように。)
ああ、わたしの敵の書いた
告訴状があればよいのだが。
31:36わたしは必ずこれを肩に負い、
冠のようにこれをわが身に結び、
31:37わが歩みの数を彼に述べ、
君たる者のようにして、彼に近づくであろう。
31:38もしわが田畑がわたしに向かって呼ばわり、
そのうねみぞが共に泣き叫んだことがあるなら、
31:39もしわたしが金を払わないでその産物を食べ、
その持ち主を死なせたことがあるなら、
31:40小麦の代りに、いばらがはえ、
大麦の代りに雑草がはえてもかまわない」。
ヨブの言葉は終った。
第32章
32:6ブズびとバラケルの子エリフは答えて言った、
それゆえ、わたしははばかって、
わたしの意見を述べることをあえてしなかった。
32:7わたしは思った、『日を重ねた者が語るべきだ、
年を積んだ者が知恵を教えるべきだ』と。
32:8しかし人のうちには霊があり、
全能者の息が人に悟りを与える。
32:9老いた者、必ずしも知恵があるのではなく、
年とった者、必ずしも道理をわきまえるのではない。
32:10ゆえにわたしは言う、『わたしに聞け、
わたしもまたわが意見を述べよう』。
32:11見よ、わたしはあなたがたの言葉に期待し、
その知恵ある言葉に耳を傾け、
あなたがたが言うべき言葉を捜し出すのを
待っていた。
32:12わたしはあなたがたに心をとめたが、
あなたがたのうちにヨブを言いふせる者は
ひとりもなく、
また彼の言葉に答える者はひとりもなかった。
32:13おそらくあなたがたは言うだろう、
『われわれは知恵を見いだした、
彼に勝つことのできるのは神だけで、
人にはできない』と。
32:14彼はその言葉をわたしに向けて言わなかった。
わたしはあなたがたの言葉をもって
彼に答えることはしない。
彼らには、もはや言うべき言葉がない。
32:16彼らは物言わず、
立ちとどまって、もはや答えるところがないので、
わたしはこれ以上待つ必要があろうか。
32:17わたしもまたわたしの分を答え、
わたしの意見を述べよう。
32:18わたしには言葉が満ち、
わたしのうちの霊がわたしに迫るからだ。
32:19見よ、わたしの心は口を開かないぶどう酒のように、
新しいぶどう酒の皮袋のように、
今にも張りさけようとしている。
32:20わたしは語って、気を晴らし、
くちびるを開いて答えよう。
32:21わたしはだれをもかたより見ることなく、
また何人とにもへつらうことをしない。
32:22わたしはへつらうことを知らないからだ。
もしへつらうならば、わたしの造り主は直ちに
わたしを滅ぼされるであろう。
第33章
わたしのすべての言葉に耳を傾けよ。
33:2見よ、わたしは口を開き、口の中の舌は物言う。
33:3わたしの言葉はわが心の正しきを語り、
わたしのくちびるは真実をもってその知識を語る。
33:4神の霊はわたしを造り、
全能者の息はわたしを生かす。
33:5あなたがもしできるなら、わたしに答えよ、
わたしの前に言葉を整えて、立て。
33:6見よ、神に対しては、わたしもあなたと同様であり、
わたしもまた土から取って造られた者だ。
33:7見よ、わたしの威厳はあなたを恐れさせない、
わたしの勢いはあなたを圧しない。
33:8確かに、あなたはわたしの聞くところで言った、
わたしはあなたの言葉の声を聞いた。
33:9あなたは言う、『わたしはいさぎよく、とがはない。
わたしは清く、不義はない。
33:10見よ、彼はわたしを攻める口実を見つけ、
わたしを自分の敵とみなし、
33:11わたしの足をかせにはめ、
わたしのすべての行いに目をとめられる』と。
あなたはこの事において正しくない。
神は人よりも大いなる者だ。
33:13あなたが『彼はわたしの言葉に
少しも答えられない』といって、
彼に向かって言い争うのは、どういうわけであるか。
33:14神は一つの方法によって語られ、
また二つの方法によって語られるのだが、
人はそれを悟らないのだ。
33:15人々が熟睡するとき、または床にまどろむとき、
夢あるいは夜の幻のうちで、
33:16彼は人々の耳を開き、
警告をもって彼らを恐れさせ、
33:17こうして人にその悪しきわざを離れさせ、
高ぶりを人から除き、
33:18その魂を守って、墓に至らせず、
その命を守って、つるぎに滅びないようにされる。
その骨に戦いが絶えることなく、
33:20その命は、食物をいとい、
その食欲は、おいしい食物をきらう。
33:21その肉はやせ落ちて見えず、
その骨は見えなかったものまでもあらわになり、
33:22その魂は墓に近づき、その命は滅ぼす者に近づく。
33:23もしそこに彼のためにひとりの天使があり、
千のうちのひとりであって、仲保となり、
人にその正しい道を示すならば、
33:24神は彼をあわれんで言われる、
『彼を救って、墓に下ることを免れさせよ、
わたしはすでにあがないしろを得た。
33:25彼の肉を幼な子の肉よりもみずみずしくならせ、
彼を若い時の元気に帰らせよ』と。
33:26その時、彼が神に祈るならば、神は彼を顧み、
喜びをもって、み前にいたらせ、
その救を人に告げ知らせられる。
33:27彼は人々の前に歌って言う、
『わたしは罪を犯し、正しい事を曲げた。
しかしわたしに報復がなかった。
33:28彼はわたしの魂をあがなって、
墓に下らせられなかった。
わたしの命は光を見ることができる』と。
ふたたび、みたび人に行い、
33:30その魂を墓から引き返し、
彼に命の光を見させられる。
33:31ヨブよ、耳を傾けてわたしに聞け、
黙せよ、わたしは語ろう。
33:32あなたがもし言うべきことがあるなら、
わたしに答えよ、
語れ、わたしはあなたを正しい者にしようと
望むからだ。
33:33もし語ることがないなら、わたしに聞け、
黙せよ、わたしはあなたに知恵を教えよう」。
第34章
34:1エリフはまた答えて言った、
あなたがた知識ある人々よ、わたしに耳を傾けよ。
34:3口が食物を味わうように、
耳は言葉をわきまえるからだ。
34:4われわれは正しい事を選び、
われわれの間に良い事の
何であるかを明らかにしよう。
34:5ヨブは言った、『わたしは正しい、
神はわたしの公義を奪われた。
34:6わたしは正しいにもかかわらず、偽る者とされた。
わたしにはとががないけれども、
わたしの矢傷はいえない』と。
34:7だれかヨブのような人があろう。
彼はあざけりを水のように飲み、
34:8悪をなす者どもと交わり、悪人と共に歩む。
34:9彼は言った、『人は神と親しんでも、
なんの益もない』と。
神は断じて悪を行うことなく、
全能者は断じて不義を行うことはない。
34:11神は人のわざにしたがってその身に報い、
おのおのの道にしたがって、
その身に振りかからせられる。
34:12まことに神は悪しき事を行われない。
全能者はさばきをまげられない。
34:13だれかこの地を彼にゆだねた者があるか。
だれか全世界を彼に負わせた者があるか。
34:14神がもしその霊をご自分に取りもどし、
その息をご自分に取りあつめられるならば、
34:15すべての肉は共に滅び、
人はちりに帰るであろう。
わたしの言うところに耳を傾けよ。
34:17公義を憎む者は世を治めることができようか。
正しく力ある者を、あなたは非難するであろうか。
34:18王たる者に向かって『よこしまな者』と言い、
つかさたる者に向かって、『悪しき者』と
言うことができるであろうか。
34:19神は君たる者をもかたより見られることなく、
富める者を貧しき者にまさって
顧みられることはない。
彼らは皆み手のわざだからである。
34:20彼らはまたたく間に死に、
民は夜の間に振われて、消えうせ、
力ある者も人手によらずに除かれる。
34:21神の目が人の道の上にあって、
そのすべての歩みを見られるからだ。
34:22悪を行う者には身を隠すべき暗やみもなく、
暗黒もない。
34:23人がさばきのために神の前に出るとき、
神は人のために時を定めておかれない。
34:24彼は力ある者をも調べることなく打ち滅ぼし、
他の人々を立てて、これに替えられる。
34:25このように、神は彼らのわざを知り、
夜の間に彼らをくつがえされるので、
彼らはやがて滅びる。
34:26彼は人々の見る所で、
彼らをその悪のために撃たれる。
34:27これは彼らがそむいて彼に従わず、
その道を全く顧みないからだ。
34:28こうして彼らは貧しき者の叫びを
彼のもとにいたらせ、
悩める者の叫びを彼に聞かせる。
34:29彼が黙っておられるとき、
だれが非難することができようか。
彼が顔を隠されるとき、
だれが彼を見ることができようか。
一国の上にも、一人の上にも同様だ。
34:30これは神を信じない者が世を治めることがなく、
民をわなにかける事のないようにするためである。
『わたしは罪を犯さないのに、懲しめられた。
34:32わたしの見ないものをわたしに教えられたい。
もしわたしが悪い事をしたなら、
重ねてこれをしない』と。
34:33あなたが拒むゆえに、
彼はあなたの好むように報いをされるであろうか。
あなたみずから選ぶがよい、わたしはしない。
あなたの知るところを言いなさい。
34:34悟りある人々はわたしに言うだろう、
わたしに聞くところの知恵ある人は言うだろう、
34:35『ヨブの言うところは知識がなく、
その言葉は悟りがない』と。
34:36どうかヨブが終りまで試みられるように、
彼は悪人のように答えるからである。
34:37彼は自分の罪に、とがを加え、
われわれの中にあって手をうち、
神に逆らって、その言葉をしげくする」。
第35章
35:1エリフはまた答えて言った、
あなたは『神の前に自分は正しい』と言うのか。
35:3あなたは言う、『これはわたしになんの益があるか、
罪を犯したのとくらべて
なんのまさるところがあるか』と。
35:4わたしはあなたおよび、
あなたと共にいるあなたの友人たちに答えよう。
35:5天を仰ぎ見よ、
あなたの上なる高き空を望み見よ。
35:6あなたが罪を犯しても、
彼になんのさしさわりがあるか。
あなたのとがが多くても、彼に何をなし得ようか。
35:7またあなたは正しくても、彼に何を与え得ようか。
彼はあなたの手から何を受けられるであろうか。
35:8あなたの悪はただあなたのような人にかかわり、
あなたの義はただ人の子にかかわるのみだ。
35:9しえたげの多いために叫び、
力ある者の腕のゆえに呼ばわる人々がある。
35:10しかし、ひとりとして言う者はない、
『わが造り主なる神はどこにおられるか、
彼は夜の間に歌を与え、
35:11地の獣よりも多く、われわれを教え、
空の鳥よりも、われわれを賢くされる方である』と。
35:12彼らが叫んでも答えられないのは、
悪しき者の高ぶりによる。
35:13まことに神はむなしい叫びを聞かれない。
また全能者はこれを顧みられない。
35:14あなたが彼を見ないと言う時はなおさらだ。
さばきは神の前にある。
あなたは彼を待つべきである。
35:15今彼が怒りをもって罰せず、
罪とがを深く心にとめられないゆえに
35:16ヨブは口を開いてむなしい事を述べ、
無知の言葉をしげくする」。
第36章
36:1エリフは重ねて言った、
なお神のために言うべき事がある。
36:3わたしは遠くからわが知識を取り、
わが造り主に正義を帰する。
36:4まことにわたしの言葉は偽らない。
知識の全き者があなたと共にいる。
何をも卑しめられない、
その悟りの力は大きい。
36:6彼は悪しき者を生かしておかれない、
苦しむ者のためにさばきを行われる。
36:7彼は正しい者から目を離さず、
位にある王たちと共に、とこしえに、
彼らをすわらせて、尊くされる。
36:8もし彼らが足かせにつながれ、
悩みのなわに捕えられる時は、
36:9彼らの行いと、とがと、
その高ぶったふるまいを彼らに示し、
36:10彼らの耳を開いて、教を聞かせ、
悪を離れて帰ることを命じられる。
36:11もし彼らが聞いて彼に仕えるならば、
彼らはその日を幸福に過ごし、
その年を楽しく送るであろう。
36:12しかし彼らが聞かないならば、つるぎによって滅び、
知識を得ないで死ぬであろう。
神に縛られる時も、助けを呼び求めることをしない。
36:14彼らは年若くして死に、
その命は恥のうちに終る。
彼らの耳を逆境によって開かれる。
36:16神はまたあなたを悩みから、
束縛のない広い所に誘い出された。
そしてあなたの食卓に置かれた物は
すべて肥えた物であった。
36:17しかしあなたは悪人のうくべき
さばきをおのれに満たし、
さばきと公義はあなたを捕えている。
36:18あなたは怒りに誘われて、
あざけりに陥らぬように心せよ。
あがないしろの大いなるがために、おのれを誤るな。
36:19あなたの叫びはあなたを守って、
悩みを免れさせるであろうか、
いかに力をつくしても役に立たない。
36:20人々がその所から断たれる
その夜を慕ってはならない。
36:21慎んで悪に傾いてはならない。
あなたは悩みよりもむしろこれを選んだからだ。
36:22見よ、神はその力をもってあがめられる。
だれか彼のように教える者があるか。
36:23だれか彼のためにその道を定めた者があるか。
だれか『あなたは悪い事をした』と
言いうる者があるか。
36:24神のみわざをほめたたえる事を忘れてはならない。
これは人々の歌いあがめるところである。
36:25すべての人はこれを仰ぎ見る。
人は遠くからこれを見るにすぎない。
36:26見よ、神は大いなる者にいまして、
われわれは彼を知らない。
その年の数も計り知ることができない。
36:27彼は水のしたたりを引きあげ、
その霧をしたたらせて雨とされる。
36:28空はこれを降らせて、人の上に豊かに注ぐ。
36:29だれか雲の広がるわけと、
その幕屋のとどろくわけとを
悟ることができようか。
36:30見よ、彼はその光をおのれのまわりにひろげ、
また海の底をおおわれる。
36:31彼はこれらをもって民をさばき、
食物を豊かに賜い、
36:32いなずまをもってもろ手を包み、
これに命じて敵を打たせられる。
36:33そのとどろきは、
悪にむかって怒りに燃える彼を現す。
第37章
その所からとび離れる。
37:2聞け、神の声のとどろきを、
またその口から出るささやきを。
37:3彼はこれを天が下に放ち、
その光を地のすみずみまで至らせられる。
37:4その後、声とどろき、
彼はそのいかめしい声をもって鳴り渡られる。
その声の聞える時、
彼はいなずまを引きとめられない。
37:5神はその驚くべき声をもって鳴り渡り、
われわれの悟りえない大いなる事を行われる。
37:6彼は雪に向かって『地に降れ』と命じ、
夕立および雨に向かって『強く降れ』と命じられる。
37:7彼はすべての人の手を封じられる。
これはすべての人にみわざを知らせるためである。
37:8その時、獣は穴に入り、そのほらにとどまる。
37:9つむじ風はそのへやから、
寒さは北風から来る。
37:10神のいぶきによって氷が張り、
広々とした水は凍る。
37:11彼は濃い雲に水気を負わせ、
雲はそのいなずまを散らす。
37:12これは彼の導きによってめぐる。
彼の命じるところをことごとく
世界のおもてに行うためである。
37:13神がこれらをこさせるのは、懲しめのため、
あるいはその地のため、
あるいはいつくしみのためである。
立って神のくすしきみわざを考えよ。
37:15あなたは知っているか、
神がいかにこれらに命じて、
その雲の光を輝かされるかを。
37:16あなたは知っているか、雲のつりあいと、
知識の全き者のくすしきみわざを。
37:17南風によって地が穏やかになる時、
あなたの着物が熱くなることを。
37:18あなたは鋳た鏡のように堅い大空を、
彼のように張ることができるか。
37:19われわれが彼に言うべき事をわれわれに教えよ、
われわれは暗くて、言葉をつらねることはできない。
37:20わたしは語ることがあると
彼に告げることができようか、
人は滅ぼされることを望むであろうか。
人々はその光を見ることができない。
37:22北から黄金のような輝きがでてくる。
神には恐るべき威光がある。
37:23全能者は――
われわれはこれを見いだすことができない。
彼は力と公義とにすぐれ、
正義に満ちて、これを曲げることはない。
37:24それゆえ、人々は彼を恐れる。
彼はみずから賢いと思う者を顧みられない」。
第38章
38:1この時、主はつむじ風の中からヨブに答えられた、
神の計りごとを暗くするこの者はだれか。
38:3あなたは腰に帯して、男らしくせよ。
わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
もしあなたが知っているなら言え。
38:5あなたがもし知っているなら、
だれがその度量を定めたか。
だれが測りなわを地の上に張ったか。
38:6その土台は何の上に置かれたか。
その隅の石はだれがすえたか。
38:7かの時には明けの星は相共に歌い、
神の子たちはみな喜び呼ばわった。
だれが戸をもって、これを閉じこめたか。
38:9あの時、わたしは雲をもって衣とし、
黒雲をもってむつきとし、
38:10これがために境を定め、
関および戸を設けて、
38:11言った、『ここまで来てもよい、越えてはならぬ、
おまえの高波はここにとどまるのだ』と。
38:12あなたは生れた日からこのかた朝に命じ、
夜明けにその所を知らせ、
38:13これに地の縁をとらえさせ、
悪人をその上から振り落させたことがあるか。
38:14地は印せられた土のように変り、
衣のようにいろどられる。
38:15悪人はその光を奪われ、
その高くあげた腕は折られる。
淵の底を歩いたことがあるか。
38:17死の門はあなたのために開かれたか。
あなたは暗黒の門を見たことがあるか。
38:18あなたは地の広さを見きわめたか。
もしこれをことごとく知っているならば言え。
暗やみのある所はどこか。
38:20あなたはこれをその境に導くことができるか。
その家路を知っているか。
38:21あなたは知っているだろう、
あなたはかの時すでに生れており、
またあなたの日数も多いのだから。
ひょうの倉を見たことがあるか。
38:23これらは悩みの時のため、いくさと戦いの日のため、
わたしがたくわえて置いたものだ。
38:24光の広がる道はどこか。
東風の地に吹き渡る道はどこか。
38:25だれが大雨のために水路を切り開き、
いかずちの光のために道を開き、
38:26人なき地にも、人なき荒野にも雨を降らせ、
38:27荒れすたれた地をあき足らせ、
これに若草をはえさせるか。
38:28雨に父があるか。
露の玉はだれが生んだか。
38:29氷はだれの胎から出たか。
空の霜はだれが生んだか。
38:30水は固まって石のようになり、淵のおもては凍る。
オリオンの綱を解くことができるか。
38:32あなたは十二宮をその時にしたがって
引き出すことができるか。
北斗とその子星を導くことができるか。
38:33あなたは天の法則を知っているか、
そのおきてを地に施すことができるか。
多くの水にあなたをおおわせることができるか。
38:35あなたはいなずまをつかわして行かせ、
『われわれはここにいる』と、
あなたに言わせることができるか。
38:36雲に知恵を置き、
霧に悟りを与えたのはだれか。
38:37だれが知恵をもって雲を数えることができるか。
だれが天の皮袋を傾けて、
38:38ちりを一つに流れ合わさせ、
土くれを固まらせることができるか。
子じしの食欲を満たすことができるか。
38:40彼らがほら穴に伏し、
林のなかに待ち伏せする時、
あなたはこの事をなすことができるか。
38:41からすの子が神に向かって呼ばわり、
食物がなくて、さまようとき、
からすにえさを与える者はだれか。
第39章
子を産むときを知っているか。
あなたは雌じかが子を産むのを見たことがあるか。
39:2これらの妊娠の月を数えることができるか。
これらが産む時を知っているか。
39:3これらは身をかがめて子を産み、
そのはらみ子を産みいだす。
39:4その子は強くなって、野に育ち、
出て行って、その親のもとに帰らない。
だれが野ろばのつなぎを解いたか。
39:6わたしは荒野をその家として与え、
荒れ地をそのすみかとして与えた。
39:7これは町の騒ぎをいやしめ、
御者の呼ぶ声を聞きいれず、
39:8山を牧場としてはせまわり、
もろもろの青物を尋ね求める。
あなたの飼葉おけのかたわらにとどまるだろうか。
39:10あなたは野牛に手綱をつけて
うねを歩かせることができるか、
これはあなたに従って谷を耕すであろうか。
39:11その力が強いからとて、
あなたはこれに頼むであろうか。
またあなたの仕事をこれに任せるであろうか。
39:12あなたはこれにたよって、あなたの穀物を
打ち場に運び帰らせるであろうか。
しかしこれにはきれいな羽と羽毛があるか。
39:14これはその卵を土の中に捨て置き、
これを砂のなかで暖め、
39:15足でつぶされることも、
野の獣に踏まれることも忘れている。
39:16これはその子に無情であって、
あたかも自分の子でないようにし、
その苦労のむなしくなるをも恐れない。
39:17これは神がこれに知恵を授けず、
悟りを与えなかったゆえである。
39:18これがその身を起して走る時には、
馬をも、その乗り手をもあざける。
力をもってその首を装うことができるか。
39:20あなたはこれをいなごのように、
とばせることができるか。
その鼻あらしの威力は恐ろしい。
39:21これは谷であがき、その力に誇り、
みずから出ていって武器に向かう。
39:22これは恐れをあざ笑って、驚くことなく、
つるぎをさけて退くことがない。
39:23矢筒はその上に鳴り、
やりと投げやりと、あいきらめく。
39:24これはたけりつ、狂いつ、地をひとのみにし、
ラッパの音が鳴り渡っても、立ちどまることがない。
39:25これはラッパの鳴るごとにハアハアと言い、
遠くから戦いをかぎつけ、
隊長の大声およびときの声を聞き知る。
あなたの知恵によるのか、
39:27わしがかけのぼり、その巣を高い所につくるのは、
あなたの命令によるのか。
39:28これは岩の上にすみかを構え、
岩のとがり、または険しい所におり、
39:29そこから獲物をうかがう。
その目の及ぶところは遠い。
39:30そのひなもまた血を吸う。
おおよそ殺された者のある所には、これもそこにいる」。
第40章
40:1主はまたヨブに答えて言われた、
神と論ずる者はこれに答えよ」。
40:3そこで、ヨブは主に答えて言った、
なんとあなたに答えましょうか。
ただ手を口に当てるのみです。
40:5わたしはすでに一度言いました、また言いません、
すでに二度言いました、重ねて申しません」。
40:6主はまたつむじ風の中からヨブに答えられた、
わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ。
40:8あなたはなお、わたしに責任を負わそうとするのか。
あなたはわたしを非とし、
自分を是としようとするのか。
40:9あなたは神のような腕を持っているのか、
神のような声でとどろきわたることができるか。
40:10あなたは威光と尊厳とをもってその身を飾り、
栄光と華麗とをもってその身を装ってみよ。
40:11あなたのあふるる怒りを漏らし、
すべての高ぶる者を見て、これを低くせよ。
40:12すべての高ぶる者を見て、これをかがませ、
また悪人をその所で踏みつけ、
40:13彼らをともにちりの中にうずめ、
その顔を隠れた所に閉じこめよ。
40:14そうすれば、わたしもまた、あなたをほめて、
あなたの右の手は
あなたを救うことができるとしよう。
これはあなたと同様にわたしが造ったもので、
牛のように草を食う。
40:16見よ、その力は腰にあり、
その勢いは腹の筋にある。
40:17これはその尾を香柏のように動かし、
そのももの筋は互にからみ合う。
40:18その骨は青銅の管のようで、
その肋骨は鉄の棒のようだ。
40:19これは神のわざの第一のものであって、
これを造った者がこれにつるぎを授けた。
40:20山もこれがために食物をいだし、
もろもろの野の獣もそこに遊ぶ。
40:21これは酸棗の木の下に伏し、
葦の茂み、または沼に隠れている。
40:22酸棗の木はその陰でこれをおおい、
川の柳はこれをめぐり囲む。
40:23見よ、たとい川が荒れても、これは驚かない。
ヨルダンがその口に注ぎかかっても、
これはあわてない。
40:24だれが、かぎでこれを捕えることができるか。
だれが、わなでその鼻を貫くことができるか。
第41章
わにをつり出すことができるか。
糸でその舌を押えることができるか。
41:2あなたは葦のなわをその鼻に通すことができるか。
つり針でそのあごを突き通すことができるか。
41:3これはしきりに、あなたに願い求めるであろうか。
柔らかな言葉をあなたに語るであろうか。
41:4これはあなたと契約を結ぶであろうか。
あなたはこれを取って、ながくあなたのしもべと
することができるであろうか。
41:5あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、
またあなたのおとめたちのために、
これをつないでおくことができるであろうか。
41:6商人の仲間はこれを商品として、
小売商人の間に分けるであろうか。
41:7あなたは、もりでその皮を満たし、
やすでその頭を突き通すことができるか。
41:8あなたの手をこれの上に置け、
あなたは戦いを思い出して、
再びこれをしないであろう。
41:9見よ、その望みはむなしくなり、
これを見てすら倒れる。
41:10あえてこれを激する勇気のある者はひとりもない。
それで、だれがわたしの前に立つことができるか。
41:11だれが先にわたしに与えたので、
わたしはこれに報いるのか。
天が下にあるものは、ことごとくわたしのものだ。
その美しい構造について
黙っていることはできない。
41:13だれがその上着をはぐことができるか。
だれがその二重のよろいの間に
はいることができるか。
41:14だれがその顔の戸を開くことができるか。
そのまわりの歯は恐ろしい。
41:15その背は盾の列でできていて、
その堅く閉じたさまは密封したように、
41:16相互に密接して、
風もその間に、はいることができず、
41:17互に相連なり、
固く着いて離すことができない。
41:18これが、くしゃみすれば光を発し、
その目はあけぼののまぶたに似ている。
41:19その口からは、たいまつが燃えいで、
火花をいだす。
41:20その鼻の穴からは煙が出てきて、
さながら煮え立つなべの水煙のごとく、
燃える葦の煙のようだ。
41:21その息は炭火をおこし、
その口からは炎が出る。
41:22その首には力が宿っていて、
恐ろしさが、その前に踊っている。
41:23その肉片は密接に相連なり、
固く身に着いて動かすことができない。
41:24その心臓は石のように堅く、
うすの下石のように堅い。
41:25その身を起すときは勇士も恐れ、
その衝撃によってあわて惑う。
41:26つるぎがこれを撃っても、きかない、
やりも、矢も、もりも用をなさない。
41:27これは鉄を見ること、わらのように、
青銅を見ること朽ち木のようである。
41:28弓矢もこれを逃がすことができない。
石投げの石もこれには、わらくずとなる。
41:29こん棒もわらくずのようにみなされ、
投げやりの響きを、これはあざ笑う。
41:30その下腹は鋭いかわらのかけらのようで、
麦こき板のようにその身を泥の上に伸ばす。
41:31これは淵をかなえのように沸きかえらせ、
海を香油のなべのようにする。
41:32これは自分のあとに光る道を残し、
淵をしらがのように思わせる。
41:33地の上にはこれと並ぶものなく、
これは恐れのない者に造られた。
41:34これはすべての高き者をさげすみ、
すべての誇り高ぶる者の王である」。
第42章
42:1そこでヨブは主に答えて言った、
あなたはすべての事をなすことができ、
またいかなるおぼしめしでも、
あなたにできないことはないことを。
42:3『無知をもって神の計りごとをおおう
この者はだれか』。
それゆえ、わたしはみずから悟らない事を言い、
みずから知らない、測り難い事を述べました。
42:4『聞け、わたしは語ろう、
わたしはあなたに尋ねる、わたしに答えよ』。
42:5わたしはあなたの事を耳で聞いていましたが、
今はわたしの目であなたを拝見いたします。
42:6それでわたしはみずから恨み、
ちり灰の中で悔います」。
42:7主はこれらの言葉をヨブに語られて後、テマンびとエリパズに言われた、
ディスカッション
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